三百六十度 新緑だ
魂まで
あかるくなる
川面には
空を行く鳥の影が
小さく映って揺れている
一羽の鳥に
一つの影があり
それを見ている
私の影がある
近づき 離れ また重なる
呼応する二つの影に
何の違いがあろう
いや
私自身から飛び立った鳥かもしれないのだ
鳥よ
真っすぐに眼は風を捉えたか
震える羽は空を鳴らしたか
おまえも私も
大いなるものの必然の糸に引かれて
動いているということに
もう 気づいているのか
空が光り
野が光り
川が光り
こんな五月を呼吸すると
生きていることが
懐かしい
「きょう」の影も また
同じ影なのだと ふと思う
鳥が
去って行った
私の心は
柔らかく伸びをして
残った影を
見ている