水をやる
乾いた土が潤って
呼吸のかたちが見えてくる
朝から夕べ
夕べから夜明け
青いトマトは
休むことなく
時間を織ってゆく
はっきりとした意志で
身体をつくり
たおやかに
自分を染めてゆく
たくさんの実が
いっせいに熟すことはなく
それぞれの
時計で
育ってゆく
隣と肌が触れ合うような
実のつきかたなのに
静かだ
ひとつひとつが
自分を忘れていない
そういう静けさを如雨露の先で聴いている
時には人ではないものを
招いているらしく
つややかな皮に
毛のようなものが残っている
誰に食べてもらおうとか
旬の美しさを褒めてもらおうとか
そういう野心が
あるのかないのか
こんなに簡単なことなんだ
トマトは
トマトの時間を生きている