未知のインクの匂いに刺激されて
白紙のままの未来が振り向く
昨日までの鮮明な記憶と
不透明な明日という予感の間に
今日という無防備な時が
存在する
時空のしじまを滑り落ちる
一滴の雫を掬いとる
手の平でころがしながら
今日という日に
仕立て上げる
この手から
こぼれ落ちたものたちは
群れて集まり
別の人の明日となる
時間は
過去から未来へ向って
ひたすら流れていくものか
それは時として
私と
私ではない別の人の間を
ゆらぎながら
行きつ戻りつする
私の前に開けるはずの明日が
一瞬の風の悪戯に
かき消される偶然
私の前には
無言の未来が
横たわっている