だんろのそばでは、可愛い奥さんのアイリーが、夫のカールの為にヒツジの毛で暖かなかけぶとんをこしらえていました。
「もうすぐ、カールの誕生日ね。プレゼントに世界一きれいで暖かなかけぶとんを作ってあげるわ」
やがて、かけぶとんが出来上がりました。
それを見て、近所のおかみさんたちはほめました。
「まあ、何てきれいなふとんなんでしょう。こんなすてきなふとんをプレゼントしてもらえるなんて、カールはフィンランド一の幸せ者だわ」
それを聞いて、カールも大得意です。
「そうさ。おれはフィンランド一の幸せ者さ。何しろ奥さんはきれいでやさしいし、ふとん作りの名人だしね」
しかし、そんな幸せなカールにも、一つの悩みがありました。
それは、奥さんのアイリーが、大変なあわてん坊だという事です。
さて、カールの誕生日の夜がやってきました。
その日はいつもより寒かったので、カールはアイリーが作ってくれたふとんをかけて休みました。
「アイリー、おやすみ。今夜はこのふとんのおかげで、ゆっくり休む事が出来るよ」
アイリーは、そんなカールの幸せそうな顔を見てうれしくなりました。
「一生懸命に作ったかいがあったわ。カール、いい夢をたくさん見てね」
さて、カールが新しいふとんをかけて、それを耳のあたりまで引き上げると、カールの二本の足が、ニョッキリとふとんからはみ出してしまったのです。
よく朝、カールはアイリーに言いました。
「アイリー。
あのかけぶとんだけど、ぼくが耳のそばまでかぶって寝ると、足がはみ出してしまうんだ。
上の方は十分なんだが、下の方が足りなくてね。
悪いけど、直してくれるかい?」
「あら、大変。
えーと、上の方は十分なのね。
それなら、いい考えがあるわ。
十分な上の方を切って、下の足りない部分に継ぎ足せばいいわ」
アイリーはさっそくハサミでかけぶとんの上の方をジョキジョキと切り落とし、それを下の方につなげました。
「さあ、これでもう大丈夫よ」
「ありがとう。やさしいアイリー」
夫のカールは幸せな気分でべットに入り、かけぶとんをかけました。
しかし、ふとんを耳のところまで引き上げると、やっぱり足が出てしまいます。
「おや? また足が出るぞ。どうなっているんだ?」
あくる朝、カールは残念そうに言いました。
「アイリー、やっぱり駄目だったよ。上の方は十分なんだけど、下の方が足りなくてね」
「いいわ。まかせておいて」
アイリーはふとんの上の方をたくさん切り落とし、それを下の方につなげてみました。
しかしやっぱり、ふとんを耳の方まで引き上げると、足が出てしまいます。
それからも毎日、アイリーはふとんの上の方を切っては下の方につなぎましたが、何度繰り返しても結果は同じでした。
さて、いつになったら、かけぶとんは完成するのでしょうね。