東京都内で「ヘルパンギーナ」の患者数が都の警報基準を超え、流行している。ヘルパンギーナは子どもがかかりやすい夏場の感染症で、これに「手足口病」と「プール熱(咽頭<いんとう>結膜熱)」を合わせて「3大夏風邪」とも呼ばれる。ヘルパンギーナは、「たかが夏風邪」と思っていると重篤な合併症を起こしてしまう恐れもある。世田谷子どもクリニック(東京都世田谷区)院長の副田(そえだ)敦裕医師にそれぞれの病気の特徴と対処法を聞いた。
◇予防接種も特効薬もない
ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱とも0~5歳の乳幼児に多い病気で、例年7~8月に流行のピークを迎える。ウイルス性の感染症で、いずれも予防接種も特効薬もない。かかってしまったら対症療法が基本になる。
ヘルパンギーナは38~39度の熱が出て、喉の奥に小さな水疱ができる。手足口病と症状が似ているが、ヘルパンギーナの場合は、高熱が出るのと水疱が口の中に限られるのが特徴だ。高熱による熱性けいれんや、まれに重い後遺症を残す髄膜炎や心筋炎を起こすことがあるので注意したい。
手足口病は名前の通り、手足や口の中などに2~3ミリの水疱(すいほう)ができる。発熱した場合でも38度以下の微熱にとどまる場合が多い。まれに髄膜炎や脳炎を引き起こすことがあるので、ぐったりしていたり、頭痛や嘔吐(おうと)、高熱などが出たりした場合には注意が必要だ。
咽頭結膜熱も高熱を伴う。三つの病気の中で最も高い傾向にあり、39~40度になることもある。他には喉の痛み▽目の充血▽目やにが多い▽まぶしがる▽涙が出る--などの症状がある。一般に「プール熱」と呼ばれるように、プールの水を介して目の結膜からも感染する。
◇解熱剤の使用は子どもの様子を見て判断
対処法として副田医師は「こまめに水分を与えることが大切」と強調。どの病気も喉の水疱や痛みなどで飲食しにくくなる。スポーツ飲料や、軟らかくて飲み込みやすいゼリー、プリン、ヨーグルトなどを与えるといいという。
一般的に38.5度を超えたら解熱剤を使った方がいいと思われているが、一概には言えないという。副田医師は「解熱剤は見かけ上の熱を下げるだけで、病気が治るわけではない。小さい子どもは熱が下がると安静にできなくなる。また、熱が上がったり下がったりすると疲れる場合もある」と指摘する。ただ、高熱で水分も取れないような状況だったら一時的に解熱剤を使って熱を下げ、水分補給してあげるといいという。
◇予防は手洗いが基本
感染予防のためには、手洗いが基本。病原体が付いたおもちゃや手すり、ドアノブなどを触り、その手で目や口、鼻などに触れることで感染してしまうためだ。
いずれの病気も、頻度は少ないが大人もかかる。ヘルパンギーナや手足口病は、症状が治まっても便から数週間~1カ月程度にわたってウイルスが排出されるため、おむつ替えは気をつけて行うことが大切だ。家庭内で感染を広げないためには、使用するタオルを別にすることも重要だ。特にアデノウイルスは感染力が強く、子どもの目の周りなどを拭いたタオルで顔を拭くと、感染する恐れがある。目やにや唾液などが付いたタオルは別に洗濯した方がなお良いという。
妊婦は抵抗力が低下していて重症化しやすいので、特に注意が必要だ。出産直前にエンテロウイルスに感染すると新生児に感染し、最悪の場合、死亡する場合もある。生後2週間以内に感染した新生児が最も重症化しやすいという。
「学校保健安全法」によると、ヘルパンギーナと手足口病は全身の状態が安定していれば登園?登校が可能で、原則として出席停止の措置はない。一方、咽頭結膜熱は「主な症状が消失した後2日を経過するまで出席停止」とされている。
新出単語
【ヘルパンギーナ】疱疹性咽颊炎
【ドアノブ】门拉手
【アデノウイルス】腺病毒
【エンテロウイルス】肠病毒