遺伝子操作した免疫細胞でがんを攻撃する新たな免疫療法を使い、血液がんの一種を治療することに、大阪大の保仙直毅准教授(呼吸器・免疫内科学)らのチームがマウスで成功した。7日、米医学誌ネイチャー・メディシンに発表する。2019年度に治験を始める計画という。
新たな免疫療法は「キメラ抗原受容体T(CAR―T〈カーティー〉)細胞療法」と呼ばれる。(1)免疫細胞であるT細胞を体外に取り出し(2)がんの目印を認識して結合、活性化するように遺伝子操作(3)体に戻すと、がん細胞を攻撃して死滅させる――という仕組みだ。他に治療手段がない急性リンパ性白血病の患者の7割が長期にわたって生き延び、今年8月に米国で治療薬が承認され、注目されている。
チームは別の血液がん「多発性骨髄腫」で、細胞の接着に関わるたんぱく質「インテグリンβ7」ががん細胞で活性化することを突き止め、その活性化した形にのみ結合し、正常な細胞にはくっつかない物質を見つけた。
そして、インテグリンβ7を目印にして、がんとくっつくように遺伝子操作したT細胞を骨髄腫のマウス16匹に注射したところ、12匹は60日間生き延びた。注射しなかった16匹は全て40日以内に死んでしまった。
多発性骨髄腫は新薬で効果が出ているが、再発して薬が効かなくなることが多い。保仙さんは「医師主導治験を19年度にスタートさせることが目標だ」と話している。