英ブリストル(Bristol)にある西イングランド大学(University of the West of England)の研究によると、通勤時間が長くなるにつれて仕事や自由時間の満足度が減少し、緊張感が増幅されてメンタルヘルスにも悪影響が出るのだという。
研究を率いた同大のキロン・チャタジー(Kiron Chatterjee)准教授は、「長時間の通勤時間には、主観的幸福感に対するマイナス作用があり、それはとりわけ自由時間の損失によって生じることが、今回の発見によって示された」と語る。
研究によると、税引き前の給与が毎月平均1800ポンド(約27万円)、年収にして2万1600ポンド(約324万円)の人にとって、片道10分の通勤時間延長は、月収が340ポンド(約5万1000円)減少することに等しいという。
英イングランド(England)での1日の平均通勤時間は、48分から1時間に上昇しており、また7人に1人は、往復の通勤時間に2時間以上を費やしている。
バスでの長時間通勤については、仕事に対する満足度が最も下がることと関係している。一方で、徒歩通勤は満足度を高め、自転車通勤も、従業員らの健康意識を向上させるとされた。
通勤時間が長くなるほど仕事への満足度により大きな影響が出ると答えたのは、男性よりも女性の方が多かった。
このことについて論文は「家庭や家族に対する責任がより大きいことと関連していると考えられる。徒歩や自転車での通勤は女性にとって、こうしたことに対応するための肯定的な選択肢だ」と述べている。
長時間通勤は、仕事や自由時間への満足度に影響を及ぼすが、生活全般では、満足度が下がることはなかった。チャタジー氏はその理由について、「(労働者は)長時間通勤を雇用や住居、家族などの状況改善に関連する正当な理由として受け入れており、これらの要素が生活全般の満足度の上昇に寄与しているため」とした。
また「長時間通勤を支払うべき対価として受け入れることは、それが不可避で、社会規範とみなされた場合に限る」としている。
若年労働者や低所得層の人々では、長時間通勤による影響がそれほど大きくなかった。この傾向については「これらのグループが、長時間通勤を避けることができないものとして受け入れている」ためではないかと述べた。
「労働者らの仕事に対する満足度は、通勤時間の削減や在宅勤務、徒歩や自転車通勤などの機会が得られた場合に向上する。これは、雇用主に対する重要なメッセージだ。こうした通勤機会は、従業員の幸福感や職場への定着率、ひいては事業コストの削減にも寄与するだろう」とチャタジー氏は指摘している。