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もののいえないもの(1)

时间: 2022-08-08    进入日语论坛
核心提示:もののいえないもの小川未明敏としちゃんは、なんだかしんぱいそうな顔かおつきをして、だまっています。「どうしたの?」と、姉
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もののいえないもの

小川未明


としちゃんは、なんだかしんぱいそうなかおつきをして、だまっています。
「どうしたの?」と、ねえさんがきいてもだまっています。
「おかしいわ。いつも元気げんきなのに、けんかをしてきたんでしょう。」
「ばか。だれがけんかなんかするものか。」
「じゃ、どうしたの?」
「なんでもないのだよ。」
としちゃんは、あちらへいってしまいました。そしてまた、かんがえていたのです。それには原因げんいんがあったのです。わけといって、ただおともだちのとくちゃんが、今日きょうかわりにいっててきたことをはなしただけですが。
今日きょうぼくりにいったら、一ぴきおおきなへびがいなごをのんでいるのをたんだよ。へびって、にくらしいやつだね。だから、いしをなげてやった。」
「そうしたら、どうしたい?」
「どこかへはいって、えなくなってしまったよ。」
はなしというのは、ただこれだけです。けれど、としちゃんにはそのはなしがなんでもなくなかったのは、つい二日ふつかまえのことでした。ながいあいだかわいがっていたきりぎりすを、そのんぼのほうがしてやったからです。なぜ、そんなにかわいがっていたきりぎりすをがしたかというのに。
ちょうどあに太郎たろうさんが、おにわくさをとっていましたが、うちへあがってくると、
「くもというむしは、りこうなものですね。平生へいぜいは、おくびょうですぐげるくせに、子供こどもっているとなかなかげないでなかにじっとして、子供こどもをまもっていますよ。かわいそうだから、そのくさをぬかずにおきました。」と、はなしました。
「きっと、くものおかあさんでしょう。くもにも母性愛ぼせいあいというものがあるのでしょうね。」と、おかあさんがおっしゃいました。
そのとき、としちゃんは、のきしたにかかっているかごのなかの、きりぎりすをあげていましたが、
「きりぎりすにもおかあさんはあるの?」と、ききました。
「それは、あるわよ。としちゃん、がしておやりよ。」と、ねえさんがいいました。
「かわいそうだから、ぼく、いやだ。」
「かわいそうだから、がしてやるのよ。」
あめがふったり、かぜいたりするじゃないか。」
「それはしかたがないわ、やぶのなかんでいるのだもの。それよりか、こんなせまいかごのなかれておくほうが、よっぽどかわいそうだわ。」
ねえさんととしちゃんとは、そんなことをいいあっていました。
「もっとおおきなかごにれてやればいいんだ。」と、にいさんがいいました。
「だんだんきゅうりがなくなるから、それよりがしてやったほうがいいでしょう。」と、おかあさんがおっしゃいました。
としちゃんは、くものはなしからきゅう自分じぶんのきりぎりすが問題もんだいになったのが、わからないような、理由りゆうがないようながしましたが、かんがえているうちにだんだん、こうしてきりぎりすをかごのなかれておくことは、よくないようにおもわれたのです。
がしてやったら、おかあさんにあえる?」
「それは、わからないけれど、きっとよろこぶにちがいありません。」
とうとう、としちゃんは、かわいがっていたきりぎりすを、明日あすがしてやることにしました。あくる日曜日にちようびだったので、ねえさんと二人ふたりでとおくのんぼへっていって、ひとらえられないような、またちかくにきゅうりのはたけのあるようなところへはなしてやることにきめました。
「そうものがわかると、としちゃんはいいです。」
「ほんとうにいいよ。」
「いいだわね。」
そのとき、としちゃんは、おかあさんにもねえさんにもほめられました。こんなことは、めったにありません。しかし、あまりうれしくはなかったのです。
いよいよあくるとなって、きりぎりすをがしてやりました。ところは、とくちゃんがへびをたというちかくのくさやぶでした。さいしょ、かごのなかからきりぎりすをしてやると、よろこんでとんでいくとおもいのほか、じっとしてくさうえにとまってうごきませんでした。
よわっているんだね。」と、としちゃんはかわいそうになりました。
「いいえ、はじめてひろいところへて、びっくりしているのだわ。」と、ねえさんは、そのおどろいたようなきりぎりすをながめていました。
そのうちに、きりぎりすはながいひげをうごかして、くさのしげったなかへはいっていきました。そのさびしそうなようすが、としちゃんのにいつまでものこっていました。
「やはり、おうちにおいたほうがよかったかな。」とおもっていたところへ、とくちゃんが今日きょう、へびのはなしをしたからです。
なるほど、へびというようなおそろしいものが、やぶのなかんでいることにがつかなかったと、としちゃんは後悔こうかいをしました。しかし、そんなことをいまさらおかあさんやねえさんにいってもしかたがないとおもったので、自分じぶんひとりでがしてやったきりぎりすのことをおもしていたのでした。
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