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秋のお約束

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:秋のお約束小川未明 まあちゃんが、「寒(さむ)い、寒(さむ)い。」といっていましたときに、お母(かあ)さんは、子供(こども)たち
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秋のお約束

小川未明

 


 まあちゃんが、「寒(さむ)い、寒(さむ)い。」といっていましたときに、お母(かあ)さんは、子供(こども)たちのきものをぬいながら、
「もう、あちらのけやきの木(き)の枝(えだ)がいろづいたから、じきにあたたかくなりますよ。」と、おっしゃいました。
 まあちゃんは、お母(かあ)さんにつれられて幼稚園(ようちえん)へまいります途中(とちゅう)、ふと頭(あたま)の上(うえ)をあおぎ見(み)ますと、うす緑色(みどりいろ)のやわらかなこまかな葉(は)が、いっぱいけやきの木(き)の枝(えだ)から出(で)て、おもしろそうに笑(わら)っていました。
「お母(かあ)さん、あんなに葉(は)が出(で)た。」と、いつかお母(かあ)さんのいわれたことを思(おも)いだしたのです。
「ほんとうに、かわいらしい葉(は)だこと。」と、お母(かあ)さんはおっしゃいましたが、いつか、まあちゃんに、
「もう、あちらのけやきの木(き)の枝(えだ)がいろづいたから、じきにあたたかくなりますよ。」といわれたことは忘(わす)れられてしまったように、まあちゃんには感(かん)じられました。
 ある日(ひ)、金魚売(きんぎょう)りが、あついので、この大(おお)きな、けやきの木(き)のかげに荷(に)をおろして休(やす)んでいました。まあちゃんは、ひとり幼稚園(ようちえん)からの帰(かえ)りに、じっと立(た)ちどまって、金魚(きんぎょ)があさい水(みず)に泳(およ)いでいるのをながめたのです。
 また、夏(なつ)のあつい日(ひ)のこと、兄(にい)さんの正(まさ)ちゃんのおともをして、せみをとりにあるいたとき、兄(にい)さんからかごを持(も)たされて、この木(き)の下(した)に立(た)ったことがあります。
「小(ちい)さな葉(は)が、こんなに大(おお)きくなった。」と、まあちゃんは頭(あたま)の中(なか)で考(かんが)えました。
 三輪車(りんしゃ)をもっているのに、まあちゃんは、二輪車(りんしゃ)をほしがって、お母(かあ)さんを困(こま)らせました。
「秋(あき)になったら買(か)ってあげましょうね。」と、お母(かあ)さんはおっしゃいました。
「秋(あき)って、いつなの?」と、まあちゃんは足(あし)をぴちぴちさせて、畳(たたみ)を打(う)ちながら聞(き)きました。お母(かあ)さんは仕事(しごと)をなさりながら、
「秋(あき)といいますと、あのけやきの木(き)の葉(は)が落(お)ちるころなんです。」といわれました。
 まあちゃんは、はやくその秋(あき)になってくれればいいと思(おも)いました。いま、風(かぜ)の吹(ふ)くたびにいろいろの木(き)の葉(は)が、小鳥(ことり)の立(た)つように飛(と)んでちりました。
 いつしか、けやきの木(き)も、すっかり坊主(ぼうず)となってしまいました。
 まあちゃんは、幼椎園(ようちえん)からのかえりに、青(あお)い空(そら)にそびえた高(たか)いけやきの木(き)を見(み)あげて、こまかいとがった枝(えだ)に鳴(な)る風(かぜ)の音(おと)をさびしくききました。
「おうちへ帰(かえ)ったら、きょうはどんなおやつかしらん?」と、そんなことを空想(くうそう)しました。しかし、お母(かあ)さんとお約束(やくそく)をした二輪車(りんしゃ)のことはとっくに忘(わす)れてしまっていました。

 

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