二
最初この小鳥の色は黒かった。ちょうど雀のような形でそれよりも黒かった。この小鳥を見た人は、誰でも、
「黒い鳥。」といった。
この黒い鳥を私が貰ったのは、寒い冬の日であった。しかも
「ああ、もう
私は黒い柱に
「出て見よう、家に居たってつまらん。」
こう思い決めると、
道は雪に
私は暫らく
「
……と考えながら、下を向いて歩いて来ると、突然猟師の息子の
「おい吉太、この雪に何処へ行く。」と聞いた。
吉太は藁帽子を片手で少し上げて、眼の好く見えるようにして私を見た。気味の悪いような、また何処か
「何か捕れましたかえ。」といった。
「いや、撃つのを止めて帰るのだ。」
「お前は何処へ行く?」
と私は聞いた。
「町へ行くだ。」と彼は、私の銃の
「
といって、懐から、さも大事そうに、壊れ物でも取出すように握り出した。それは
「黒い鳥だな、……何という鳥だ。」と聞いた。
吉太はさも大事そうに、自分の心臓でも
「
と、余り珍らしい鳥なものでこういった。けれど私はこの鳥を見た時、好い気持がしなかった。何んだか再び眼から印象の消えない物を見せられたような気がして、急に心持が暗くなるのを覚えた。しかし、この儘、この鳥を
「
「何故?」
町へ
「高く
「貴君に
「お前が欲しいもんてや、何んだ。」
「欲しいものをおくんなさるか?」と、吉太の声は
「何だ? やれるものならやる……。」と私は怪しみながらいう。
吉太は黒い鳥を
「早く言え、やるから。」と、
「
といった。
私には、急にその皿が想い出せなかった。
「
「花の形をしているのです。」
と、いって泣いた。
私は吉太の泣くのを始めて見た。斯様
「じゃ探して置く、明日の朝来い。」
と、二人は別れた。