返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

塩を載せた船(1)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示:塩を載せた船小川未明 赤(あか)ん坊(ぼう)をおぶった、男(おとこ)の乞食(こじき)が町(まち)へはいってきました。その男(おとこ)
(单词翻译:双击或拖选)

塩を載せた船

小川未明

 


 赤(あか)ん坊(ぼう)をおぶった、男(おとこ)の乞食(こじき)が町(まち)へはいってきました。その男(おとこ)は、まだそんなに年(とし)をとったというほどではありませんでした。
 男(おとこ)の乞食(こじき)は、りっぱな構(かま)えをした家(うち)の前(まえ)へきますと、立(た)ち止(ど)まって、考(かんが)え込(こ)みました。それから、おそるおそる門(もん)の中(なか)へ入(はい)ってゆきました。
「どうか、なにかやってくださいまし。」と、声(こえ)をふるわせて頼(たの)みました。
 しかし、家(うち)の中(なか)では、その小(ちい)さい声(こえ)が聞(き)こえなかったものか、返事(へんじ)がありませんでした。
 乞食(こじき)は、つぎには、もっと大(おお)きな声(こえ)を出(だ)していいました。
「なにか、この哀(あわ)れな子供(こども)にやってくださいまし。」といいました。すると、家(うち)の中(なか)から、声(こえ)ばかりで、だれも、顔(かお)を出(だ)さずに、
「なにも、やるようなものはない!」と、しかるように答(こた)えました。
 その日(ひ)は、どういうものか、乞食(こじき)は、何家(どこ)へいきましても、同(おな)じようなことをいって断(ことわ)られました。
「こんなに、りっぱな、大(おお)きな家(うち)に住(す)んでいながら、くれるようなものがないとは、不思議(ふしぎ)なことだ。」と、乞食(こじき)は、つくづく思(おも)わずにはいられませんでした。
 脊中(せなか)におぶさっている赤(あか)ん坊(ぼう)が、腹(はら)が減(へ)ったので泣(な)き出(だ)しました。乞食(こじき)は、どうしたらいいか、ほんとうに困(こま)ってしまいました。
 太陽(たいよう)は、やがて西(にし)に傾(かたむ)きかかっています。その日(ひ)の光(ひかり)をながめて、ぼんやりと思案(しあん)にふけっていますと、太陽(たいよう)は、にこやかな円(まる)い顔(かお)をして、
「いつまでも、こんな人情(にんじょう)のない町(まち)にいたのではしかたがない。早(はや)く、日(ひ)の暮(く)れないうちに、ほかの町(まち)へいったほうがいい。」と、諭(さと)しているように思(おも)われました。
 男(おとこ)の乞食(こじき)は、自分(じぶん)たちに、不人情(ふにんじょう)であった町(まち)をうらめしそうに、幾(いく)たびも見(み)かえりながら、疲(つか)れた足(あし)をひきずって、とぼとぼと、また遠(とお)い道(みち)を歩(ある)いて、ほかの町(まち)をさしていったのであります。
 それから三日(みっか)ばかりたちました。ある町(まち)をあるきまわっていますときに、乞食(こじき)は、三日(みっか)ばかり前(まえ)に自分(じぶん)がたってきた町(まち)が、すっかり海嘯(つなみ)のためにさらわれてしまった、というようなうわさを聞(き)きました。
 乞食(こじき)は、夢(ゆめ)のような気(き)がしました。そして、あの町(まち)はどうなったろうと、りっぱな構(かま)えをした、いろいろな形(かたち)をしていた家(うち)などを、目(め)に思(おも)い浮(う)かべたのであります。
「人間(にんげん)というものは、不幸(ふこう)にあわなければ、人情(にんじょう)というものを悟(さと)るものでない。」と、彼(かれ)は、いつか聞(き)いた言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)しました。
「そうだ。あの不(ふ)しんせつであった町(まち)の人々(ひとびと)も、きっと思(おも)いあたったろう。いまごろはどんなにやさしい人(ひと)たちになっているかしれない。きっと、手(て)がなくて弱(よわ)っているものもあろう。自分(じぶん)のようなものにも、される仕事(しごと)がないとはかぎらない。どれ、ひとつ、その変(か)わった町(まち)へもどってみようか。」と思(おも)いました。
 そして、彼(かれ)は、いつも、自分(じぶん)の胸(むね)に思(おも)ったことは、はたしていいかどうであるかたずねてみるように、太陽(たいよう)を仰(あお)いだのであります。
 太陽(たいよう)は、あいかわらず、にこにことしていました。
「おまえが、そう思(おも)うならいってみるがいい。」といっているようでありました。
 乞食(こじき)は、赤(あか)ん坊(ぼう)をおぶって、いつかたった町(まち)へもどってゆきました。海辺(うみべ)には、白(しろ)い、海鳥(うみどり)が空(そら)を舞(ま)っていました。日(ひ)の光(ひかり)は、彼(かれ)のゆく道(みち)を暖(あたた)かに照(て)らしていました。
 まだ、日(ひ)がまったく沈(しず)みきらないうちに、乞食(こじき)は、その町(まち)のあったところに着(つ)きました。きてみると、びっくりしました。一軒(けん)として満足(まんぞく)な家(うち)が建(た)っていないばかりか、たいていは、波(なみ)にさらわれてしまったとみえて、一面(めん)荒(あ)れ果(は)てた野原(のはら)に変(か)わっていたのです。
 人(ひと)たちは、どうなったものか、影(かげ)さえ見(み)えませんでした。ただ、ところどころに木立(こだち)がそびえていて、その枝(えだ)に、髪(かみ)の毛(け)のからんだようにいろいろなものが引(ひ)っかかっている、ものすごい、みすぼらしい有(あ)り様(さま)が見(み)られるばかりでした。
「まあ、こんなになってしまったのか?」と、彼(かれ)は、その荒(あ)れ果(は)てた野原(のはら)の中(なか)に立(た)って、足(あし)もとに散(ち)らばった材木(ざいもく)や、ものの壊(こわ)れたのや、大(おお)きな家(うち)が建(た)っていた跡(あと)らしい、礎(いしずえ)などを見(み)まわしながら、いろいろの思(おも)いにふけったのです。
 彼(かれ)は、あまりのはげしい変(か)わり方(かた)と、あわただしいできごとのために、なにを思(おも)うともなく、しばらくは、ただぼんやりとしていました。
 そのうちに、青(あお)ざめた月(つき)が空(そら)に上(のぼ)りました。そして、この荒(あ)れはてた景色(けしき)と、ぼんやりと考(かんが)え込(こ)んでいる哀(あわ)れな乞食(こじき)とを照(て)らしたのです。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: