返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

塩を載せた船(2)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示: そのとき、月(つき)が、うなだれている乞食(こじき)の耳(みみ)もとにささやいたのであります。「大(おお)きな海嘯(つなみ)で、
(单词翻译:双击或拖选)

 そのとき、月(つき)が、うなだれている乞食(こじき)の耳(みみ)もとにささやいたのであります。
「大(おお)きな海嘯(つなみ)で、みんな沖(おき)へ持(も)っていかれてしまった。しかし、まだすこしは残(のこ)っていよう。おまえが、いつかなにかくださいと頼(たの)んだとき、なにもやるようなものはないといったが、まあ、あすこをごらん、あんなに光(ひか)っているものがある。あれはダイヤモンドだ。ぜいたくな女(おんな)の指(ゆび)にはめた、指輪(ゆびわ)についていたのだ。まあ、あすこをごらん、あんなにぴかぴか光(ひか)っているものがある。あれは、強欲(ごうよく)なじいさんが大事(だいじ)にしまっておいた黄金(こがね)の塊(かたまり)だ。しかし、もうみんなその人(ひと)たちは、どこへかいってしまった。おそらく永久(えいきゅう)に帰(かえ)ってくることがあるまい。また、その人(ひと)たちを捜(さが)したとて、永久(えいきゅう)に捜(さが)しあてることができまい。あの宝(たから)は、みんな腐(くさ)ってしまうか、地(ち)の中(なか)にしぜんにうずもれてしまうのだ。おまえはあの宝(たから)で、もう一度(ど)、りっぱな町(まち)をこのところに建(た)てる考(かんが)えはないか。そうすれば、私(わたし)は今夜(こんや)、宝(たから)の残(のこ)っているところを教(おし)えてやろう……。」
青(あお)ざめた月(つき)は、太陽(たいよう)のように、けっして、にこやかな顔(かお)はしていなかったけれど、まじめになって、乞食(こじき)にいいました。
「私(わたし)みたいなものに、そんなことができようか?」と、乞食(こじき)はうなだれて思案(しあん)をしました。
「なに、いっしょうけんめいになってやれば、できないということはないはずだ。おまえにできなかったときは、おまえの子供(こども)の時代(じだい)にできるにちがいない。おまえは赤(あか)ん坊(ぼう)をおぶっているではないか。」と、月(つき)は、はっきりとさえた声(こえ)でいいました。
乞食(こじき)は、ついにやってみる気(き)をおこしました。
「どうか、お月(つき)さま、私(わたし)に宝(たから)の落(お)ちているところを教(おし)えてください。」と、月(つき)を見上(みあ)げて願(ねが)いました。
月(つき)の光線(こうせん)は、身軽(みがる)にどんな狭(せま)いところへもくぐり込(こ)みました。またどんなものの上(うえ)へもはいまわりました。こうして乞食(こじき)は、月(つき)の助(たす)けによって、たくさんの宝物(たからもの)を拾(ひろ)い集(あつ)めることができました。
夜(よ)が明(あ)けると、太陽(たいよう)が彼(かれ)を励(はげ)ましました。乞食(こじき)は、境遇(きょうぐう)で貧乏(びんぼう)をしましたけれど、りこうで正直(しょうじき)な人間(にんげん)でありましたから、四方(ほう)から、あらゆる方面(ほうめん)の知識(ちしき)があり、勤勉(きんべん)に働(はたら)く人(ひと)たちを呼(よ)び集(あつ)めて、町(まち)を新(あたら)しく造(つく)りはじめたのであります。
数年(すうねん)の後(のち)には、その町(まち)はりっぱにできあがりました。そして、煙突(えんとつ)からは、黒(くろ)い煙(けむり)が流(なが)れていました。工場(こうじょう)や、製造場(せいぞうじょう)などが、いくつも建(た)てられました。しかし、だれも、この美(うつく)しい町(まち)が乞食(こじき)の手(て)によって造(つく)られたということを、おそらく知(し)るものがなかったでありましょう。
昔(むかし)の赤(あか)ん坊(ぼう)は、大(おお)きくなって、いまでは、いい若者(わかもの)となりました。父親(ちちおや)は、財産(ざいさん)を残(のこ)して亡(な)くなりました。その後(あと)で、若者(わかもの)は、父親(ちちおや)の仕事(しごと)をついで、よく働(はたら)いていました。
ある日(ひ)のこと、若者(わかもの)は夢(ゆめ)を見(み)ました。
なんでも、あまりにぎやかでない、はじめて通(とお)るような町(まち)を歩(ある)いてゆきました。すると、あちらに白(しろ)い桃(もも)の花(はな)だか、すももの花(はな)だか、白(しろ)くこんもりと浮(う)き出(で)たように咲(さ)いていました。彼(かれ)は、その花(はな)を目(め)あてに歩(ある)いていますと、その木(き)の下(した)に、小(ちい)さな理髪店(りはつてん)がありました。主人(しゅじん)というのは、顔(かお)つきの四角(かく)な人(ひと)でして、がみがみと小僧(こぞう)をしかっていました。小僧(こぞう)は汚(よご)れた白(しろ)い上着(うわぎ)を着(き)て働(はたら)いていました。顔色(かおいろ)が青(あお)くて、体(からだ)がやせて目(め)ばかり大(おお)きく飛(と)び出(で)ていました。
「おまえは、どこから雇(やと)われてきたのか?」と、若者(わかもの)はたずねますと、小僧(こぞう)は、大(おお)きな目(め)に、いっぱい涙(なみだ)をためて、
「私(わたし)には、お父(とう)さんがありません。お母(かあ)さんもありません。ただ一人(ひとり)の妹(いもうと)がありましたが、いまは、どこにいるか知(し)らないのです。」と答(こた)えた。
目(め)がさめると、それは夢(ゆめ)でありました。けれど若者(わかもの)は、小僧(こぞう)の顔(かお)が、目(め)についていてどうしても離(はな)れませんでした。
「私(わたし)には、弟(おとうと)も、妹(いもうと)もないはずだ。」
彼(かれ)は、終日(しゅうじつ)、昨夜(ゆうべ)の夢(ゆめ)を思(おも)い出(だ)して考(かんが)え込(こ)んでいました。
二、三日(にち)すると、彼(かれ)は、また、不思議(ふしぎ)な夢(ゆめ)を見(み)ました。
ある工場(こうじょう)で、まだ十三、四の少女(しょうじょ)が、下(した)を向(む)いて糸(いと)を採(と)っていました。すると、いつか夢(ゆめ)で見(み)たことのある理髪店(りはつてん)の主人(しゅじん)よりは、もっと、恐(おそ)ろしい顔(かお)つきをして、黒(くろ)い洋服(ようふく)を着(き)た、脊(せ)の高(たか)い男(おとこ)が、ふいに少女(しょうじょ)をむちでなぐりました。
「なにを、ぐずぐずしているのか!」
少女(しょうじょ)は震(ふる)えあがりました。そして、真(ま)っ赤(か)な顔(かお)をして、泣(な)きながら、せっせと糸(いと)を採(と)っていました。
目(め)がさめると、これもやはり夢(ゆめ)でありました。若者(わかもの)は、どういうものか、この少女(しょうじょ)の顔(かお)もこのときから忘(わす)れることができませんでした。
「俺(おれ)は、どうしてこんな夢(ゆめ)を見(み)るのだろう。もっと愉快(ゆかい)な夢(ゆめ)を、なぜ見(み)ることができないのか。おもしろい、愉快(ゆかい)な夢(ゆめ)は、みんなほかの人(ひと)が見(み)つくしてしまったというわけでもあるまいが。」と、彼(かれ)は思(おも)いました。
この世(よ)の中(なか)におもしろい、楽(たの)しい夢(ゆめ)がなくなってしまった時分(じぶん)には、どこからか船(ふね)に乗(の)せていろいろな夢(ゆめ)をもってきて、港(みなと)に着(つ)いてから、人(ひと)の知(し)らぬ間(ま)にまき散(ち)らすのだと、いつかこの町(まち)に入(はい)ってきた巫女(みこ)がいったということでした。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: