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少年の日二景(2)

时间: 2022-11-07    进入日语论坛
核心提示:伸のびるもの良りょうちゃんは、いま中学ちゅうがくの一年生ねんせいです。ある日ひ学校がっこうから帰かえると、お母かあさんに
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伸のびるもの


良りょうちゃんは、いま中学ちゅうがくの一年生ねんせいです。ある日ひ学校がっこうから帰かえると、お母かあさんに向むかって、
「きょう山田やまだにあったよ。」といいました。
「どうしていらっしゃるの。」
「昼間ひるまは、会社かいしゃの給仕きゅうじをして、夜よる学校がっこうへいっているといっていた。」
「感心かんしんですね。」
お母かあさんは、過すぎ去さった日ひのことを思おもい出だしていられました。それはまだ良りょうちゃんが、小学しょうがく二年生ねんせいごろのことであります。事変前じへんまえで、町まちには、お菓子かしもいろいろあれば、卵たまごなどもたくさんありました。
遠足えんそくの日ひがきまって、いよいよその前まえの晩ばんになると、おそらく他ほかの子供こどももそうであったように、良りょうちゃんは大騒おおさわぎです。
「お母かあさん、明日あすのお弁当べんとうは、おすしにしてね。」
「ええ、してあげますよ。それとなにを持もっていきますか。」と、お母かあさんは、さも楽たのしそうにしている良りょうちゃんに向むかって、お問といになりました。
「ゆであずきいけない?」
「そんなものを持もっていく人ひとはないでしょう。」
「じゃ、チョコレートとキャラメルとビスケットね。」
「そんなに持もっていくのですか。」
「みんな僕ぼく、食たべるんだよ。」
「果物くだものはいいのですか。」
「なつみかんとりんご。」
「良りょうちゃん、遠足えんそくは、食たべにいくところではありませんよ。」
「お母かあさん、早はやく買かいにいきましょう。」と、良りょうちゃんは催促さいそくしました。
「お仕事しごとがすんだら、つれていってあげます。」
新緑しんりょくの色いろは、だんだん濃こくなって、どこの丘おかにも赤あかいつつじの花はなが盛さかりでした。また林はやしには、小鳥ことりが鳴ないていました。良りょうちゃんたちの遠足えんそくは、そうした丘おかがあり、林はやしがあり、流ながれがあり、池いけがある、そして電車でんしゃに乗のっていける、公園こうえんであったのです。
良りょうちゃんは、まだ、まったく暮くれきらぬ外そとへ出でて遊あそんでいました。夜よるの空そらには、金色きんいろの星ほしが輝かがやいていました。良りょうちゃんは、往来おうらいの上うえに立たって、じっとその星ほしの光ひかりをながめていました。
「あの星ほしは、明日あした僕ぼくたちのいく、公園こうえんの森もりや林はやしの[#「林はやしの」はママ]照てらしているのだろう。」
そう思おもうと、その星ほしがなつかしく、また公園こうえんの森もりや林はやしを[#「林はやしを」はママ]あるところは、たいへん遠とおいところのような、またおもしろい場所ばしょのような気きがして、なんとなく胸むねがおどるのでありました。
「お母かあさん、早はやくいかないの。」と、良りょうちゃんは、お家うちの中なかをのぞいて、いいました。
「ええ、もうすぐですよ。」
お母かあさんは、やっと夕ゆうご飯はんの後片付あとかたづけが終おわって、良りょうちゃんをつれて、市場いちばへいかれました。
そこには、同おなじ年としごろの子供こどもたちが、やはり明日あしたの遠足えんそくに持もっていくものを買かっているのでありましょう、お母かあさんにつれられてきたもの、また、お姉ねえさんにつれられてきたもの、幾人いくにんとなくおりました。
「さあ、好すきなものをお買かいなさい。」と、お菓子屋かしやの店先みせさきで、どこかのお母かあさんが、やさしく子供こどもにいっていられるのもあります。
「あの子こ、良りょうちゃんのお友ともだちでない。」
「僕ぼく、知しらないよ。きっと、ほかの組くみだろう。」
良りょうちゃんは、りんごも二つといえば、みかんも二つといって、お母かあさんをおどろかせました。
家いえへ帰かえってから、お菓子かしや、果物くだものをランドセルにつめるとき、そばで見みていたお姉ねえさんが、
「良りょうちゃん、そんなに持もっていってどうするの? 良りょうちゃんは食くいしんぼうといって笑わらわれてよ。」といわれました。
学校がっこうで、良りょうちゃんのかたわらに、紙かみや、鉛筆えんぴつを先生せんせいからもらっている子供こどもがいました。その子このお父とうさんは、病気びょうきで臥ねており、母親ははおやは、小ちいさな妹いもうとをつれて、毎日まいにち車くるまを引ひきながら、くずを買かいに、出でかけているときいていました。
それで、遠足えんそくのときには、良りょうちゃんは、二人分ふたりぶんのお菓子かしと果物くだものを持もっていこうと思おもったのでした。
そのことが、良りょうちゃんの口くちから、お母かあさんや、お姉ねえさんにわかると、
「はじめからいえば、お母かあさんは、なんともいわなかったのですよ。」と、お母かあさんは、いわれました。
「僕ぼく、そんな友ともだちのこと、いいたくなかったんだもの。」
「なんというお子こさん。」と、お姉ねえさんが、きかれました。
「山田やまだって、いい子こなんだよ。」と、良りょうちゃんは、答こたえました。
二人ふたりは、その後あと学校がっこうで、仲なかのいいお友ともだちとなったが、そのときのことが、いまお母かあさんにも、良りょうちゃんにも思おもい出だされたのです。そして、なお残念ざんねんに思おもわれたのは、あの遠足えんそくの日ひに山田やまだがついにこなかったことでありました。
 
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