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すずめ(1)

时间: 2022-11-17    进入日语论坛
核心提示:すずめ小川未明 冬(ふゆ)の日(ひ)は、昼過(ひるす)ぎになると、急(きゅう)に光(ひかり)がうすくなるのでした。枯(か)れ残(のこ)
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 すずめ

小川未明

 


 冬(ふゆ)の日(ひ)は、昼過(ひるす)ぎになると、急(きゅう)に光(ひかり)がうすくなるのでした。枯(か)れ残(のこ)ったすすきの葉(は)が黄色(きいろ)くなって、こんもりと田(た)の中(なか)に一所(ひとところ)茂(しげ)っていました。そこは低地(ていち)で、野菜(やさい)を作(つく)ることができないので、そうなっているのかもしれません。往来(おうらい)からだいぶ離(はな)れていましたが、道(みち)の方(ほう)が高(たか)いので、よくそのあたりの景色(けしき)は見下(みお)ろされるのでした。晩方(ばんがた)になると、すずめたちは、群(む)れをなして、森(もり)の中(なか)の巣(す)へ帰(かえ)っていくのでしょう。チュン、チュン、鳴(な)き交(か)わしながら、空(そら)を飛(と)んでいきました。彼(かれ)らが、ちょうど、そのすすきのやぶの上(うえ)へさしかかろうとすると、ぱっとして、驚(おどろ)いたように、急(きゅう)に群(む)れが乱(みだ)れたのです。なぜなら、下(した)のすすきの中(なか)で、声(こえ)をかぎりに自分(じぶん)たちを呼(よ)ぶ友(とも)の声(こえ)をきいたからでした。
「どうしよう、だれか呼(よ)んでいるじゃないか。」と、先頭(せんとう)に立(た)って、飛(と)んでいた一羽(わ)が、仲間(なかま)を見(み)まわしていいました。
「いいえ、いってしまおう。」といったものもあります。
「きっと、餌(えさ)があるから、降(お)りろというのだ。」というものもありました。
 すると、中(なか)には、
「いや、そうじゃない。どうかしたんだ、助(たす)けてくれといっているのだ。」と、いったものもあります。
 こうして意見(いけん)がまちまちであったので、彼(かれ)らは、そのまま先(さき)へ飛(と)んでいくこともできずに、すすきの生(は)えている上(うえ)の空(そら)を、二、三べんもぐるぐるまわって、話(はな)し合(あ)っていましたが、こんなことに、かかりあっていてはろくなことがないと考(かんが)える連中(れんじゅう)は、
「じゃ、僕(ぼく)たちは、先(さき)へいくから。」といって、その群(む)れは二つに別(わか)れてしまいました。
「まあ、ああいって呼(よ)んでいるのだ、いってみよう。」と、残(のこ)った群(む)れは、それから注意深(ちゅういぶか)く下(した)のようすを探(さぐ)りながら、ぐるぐると空(そら)をまわってだんだん下(した)へ降(お)りてきました。そのうちに勇敢(ゆうかん)な一羽(わ)は、勢(いきお)いよく、つういと、その声(こえ)のする方(ほう)へ走(はし)っていきました。つづいて、二羽(わ)、三羽(ば)と、後(あと)についてやぶの中(なか)へ降(お)りたのです。
 このとき、どこからか、さっと雲(くも)のような灰色(はいいろ)の影(かげ)が、眼前(がんぜん)をさえぎったかと思(おも)うと、たちまち網(あみ)が頭(あたま)からかかってしまいました。
「あっ、やられた!」と、思(おも)ったときは、もう遅(おそ)かったのです。網(あみ)の中(なか)に入(はい)ったすずめたちは、隠(かく)れ場所(ばしょ)から出(で)てきた大男(おおおとこ)の手(て)にかかって、殺(ころ)されてしまったのです。
「いま、五羽(わ)かかったね。」と、いう声(こえ)が、往来(おうらい)の方(ほう)から、きこえてきました。
 男(おとこ)は、また最初(さいしょ)のように、かすみ網(あみ)をひろげて、落(お)としの口(くち)を開(あ)けました。そして、自分(じぶん)はあちらのやぶの中(なか)に隠(かく)れて、おとりのすずめを鳴(な)かすように糸(いと)を引(ひ)きました。こうして、鳴(な)くことに馴(な)らされたすずめは、しきりに声(こえ)をたてて鳴(な)きました。
 また、前(まえ)のように、どこからか、新(あたら)しくすずめの群(む)れが飛(と)んできました。
「おい、どこかで、呼(よ)んでいるものがあるじゃないか。」
「どこだろう。」
「あのくさむらのようだ、早(はや)くいってみよう。」
 しかしながら、彼(かれ)らは、注意(ちゅうい)を怠(おこた)りませんでした。そして、彼(かれ)らの中(なか)でも、ほかへ気(き)を取(と)られずに、まっすぐにいくものもあったが、どうしても先(さき)へいきかねて、声(こえ)のする方(ほう)へ引(ひ)き寄(よ)せられるものもありました。やはり、一、二へんすすきの上(うえ)の空(そら)をまわってようすをうかがっていたが、男(おとこ)が隠(かく)れているのに気(き)づかなかったと見(み)えて、六羽(わ)ばかり、一度(ど)にさっとすすきの中(なか)へ降(お)りました。
 男(おとこ)は、あわてたのです。大急(おおいそ)ぎで、網(あみ)の口(くち)を閉(と)じにかかったが、すすきの葉(は)にじゃまされて、手(て)ぎわよくできず、ちょっとまごまごするうちに、二羽(わ)、三羽(ば)、下(した)をくぐって逃(に)げ出(だ)してしまいました。しかし、三羽(ば)ばかりは、ついに捕(と)らえられてしまいました。
「あいつ、また三羽(ば)捕(と)ったよ。」と、往来(おうらい)で見(み)ているものが、いいました。
「ばかなすずめだな、さっさと飛(と)んでいけばいいに。」と、いったものもあります。
 このとき、男(おとこ)は、どんな人(ひと)たちが、見(み)ているのかと、支度(したく)をすませてから、道(みち)の上(うえ)をながめました。
 そこには、会社員(かいしゃいん)らしい人(ひと)がいました。小僧(こぞう)さんがいました。また、郵便配達(ゆうびんはいたつ)がいました。それらの人(ひと)たちは、いずれも自転車(じてんしゃ)を止(と)めて、わざわざ降(お)りて、すずめをとるのを見(み)ているのです。
「どうだ。うまいものだろう。」と、男(おとこ)は、網(あみ)を張(は)るたびに、かならず獲物(えもの)がかかるのを、心(こころ)の中(なか)で自慢(じまん)していました。

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