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西洋だこと六角だこ

时间: 2022-11-17    进入日语论坛
核心提示:西洋だこと六角だこ小川未明 年郎(としろう)くんは、自分(じぶん)の造(つく)った西洋(せいよう)だこを持(も)って、原(はら)っぱ
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西洋だこと六角だこ

小川未明


 年郎(としろう)くんは、自分(じぶん)の造(つく)った西洋(せいよう)だこを持(も)って、原(はら)っぱへ上(あ)げにいきました。
 原(はら)っぱには、木(き)がなかったから、日(ひ)がよく当(あ)たって、そのうえ、邪魔(じゃま)になるものもないので、すこしの風(かぜ)でもたこはよく上(あ)がりました。
 きよ子(こ)さんに、たこを持(も)っていてもらって、年郎(としろう)くんは、
「いいよ。」と、あちらから合図(あいず)をして、放(はな)してもらうのです。風(かぜ)があると、たこはおもしろいように、ぐんぐんと空(そら)へ上(あ)がるのでした。広(ひろ)い原(はら)っぱには、おおぜいの子供(こども)たちがきて同(おな)じように、いろいろの絵(え)だこや、字(じ)だこを上(あ)げていました。
「僕(ぼく)のが、一番(ばん)だこだよ。」と、威張(いば)っているものもあれば、それに負(ま)けまいと思(おも)って、糸(いと)をどんどん繰(く)り出(くだ)しているものもありました。
 年郎(としろう)くんは、どうも自分(じぶん)の造(つく)った西洋(せいよう)だこが、調子(ちょうし)が悪(わる)かったのです。尾(お)を長(なが)く長(なが)くしなければ、すぐにくるくるまわって落(お)ちてしまうし、あまり尾(お)を長(なが)くすると、重(おも)くて、なかなか上(うえ)へはあがらないのでした。
「だめよ、年郎(としろう)さん、こんなに尾(お)を長(なが)くしては。」と、とうとうきよ子(こ)さんは、しびれを切(き)らして、いいました。
 年郎(としろう)くんは、うらめしそうに空(そら)を仰(あお)いで、ほかのたこがよく上(あ)がっているのをぼんやりとながめたのです。
「あ、あの六角(かく)だこは、僕(ぼく)のによく似(に)ているなあ。」と、遠(とお)くの方(ほう)で、知(し)らない子(こ)が上(あ)げているたこを見(み)つめていいました。
「どのたこ?」と、きよ子(こ)さんも、年郎(としろう)くんが、ながめている空(そら)の方(ほう)を見(み)たのです。なるほど、年郎(としろう)くんの大事(だいじ)にしていた六角(かく)だこが上(あ)がっています。真(ま)ん中(なか)にどろがついているのや、尾(お)に赤(あか)いひもと白(しろ)いひもがついているのや、すべてに見覚(みおぼ)えがありました。
「どうしたんでしょうね。」と、きよ子(こ)さんは、目(め)をみはりました。
「飛(と)んでいった僕(ぼく)のたこを拾(ひろ)ったのだと思(おも)うよ。」と、年郎(としろう)くんは、自分(じぶん)の上(あ)がらない西洋(せいよう)だこのことなど忘(わす)れてしまって、ただ熱心(ねっしん)によく上(あ)がっている六角(かく)だこを見(み)つめていました。そして、このあいだ、糸(いと)が切(き)れて、飛(と)んでいったたこは、とうとう追(お)いつかれなくて、町(まち)の方(ほう)へ落(お)ちてしまったのを思(おも)い出(だ)していました。
「なんだか年郎(としろう)さんのたこらしいわね。」と、きよ子(こ)さんが、いいました。
「きっと、僕(ぼく)のたこだよ、あの子(こ)、拾(ひろ)ったのだ。」
「年郎(としろう)さん、きいてごらんなさい。」
「だって、ちがうと悪(わる)いな。」と、年郎(としろう)くんは、考(かんが)えていたのです。
「尾(お)もよく似(に)ているわ。」
 こう、きよ子(こ)さんがいったので、年郎(としろう)くんは、ついに、その子供(こども)のそばへいって聞(き)いてみる気(き)が心(こころ)の中(なか)に起(お)こったのでした。
 年郎(としろう)くんときよ子(こ)さんは、六角(かく)だこを上(あ)げている子供(こども)のところへきました。そして、年郎(としろう)くんは、
「このたこ、どこかで拾(ひろ)ったのでない?」と、その子供(こども)にききました。
 たこを上(あ)げていた子供(こども)は、わざと年郎(としろう)くんの顔(かお)を見(み)ないようにして、上(うえ)の方(ほう)を向(む)いてたこを見(み)ながら、
「このたこは、お父(とう)さんに買(か)ってもらったのだ。」と、いって、答(こた)えました。
 そういわれると、年郎(としろう)くんは、
「僕(ぼく)のたこによく似(に)ているけれどなあ。」と独(ひと)り言(ごと)をいうばかりで、どうすることもできなかったのでした。
「きっと、あの子(こ)、うそをいっているのよ。」と、きよ子(こ)さんは、こちらへくるといいました。
「僕(ぼく)と同(おな)じたこを町(まち)で買(か)ったんだろう。」と、年郎(としろう)くんは、答(こた)えたのです。
 この付近(ふきん)では、この原(はら)っぱへきてたこを上(あ)げるよりほかにいい場所(ばしょ)が、ありませんでした。だから町(まち)の子供(こども)も、そうでない子供(こども)も、みんなここへきてたこを上(あ)げたのであります。しかし、このことがあってから、あの町(まち)の子(こ)はどうしてかこの原(はら)っぱへ姿(すがた)を見(み)せなかったのでした。
 年郎(としろう)くんが、お母(かあ)さんから、新(あたら)しいたこを買(か)ってもらって、原(はら)っぱで、いつもたこを持(も)ってくれるきよ子(こ)さんと、そのたこを上(あ)げて遊(あそ)んでいると、いつかの子(こ)が、だいぶ破(やぶ)れた六角(かく)だこを持(も)って、年郎(としろう)くんのそばへやってきて、
「ごめんね、僕(ぼく)はうそをいったのだ。このたこは飛(と)んできたのを拾(ひろ)ったのだから、君(きみ)にお返(かえ)しする。」と、あやまって、頭(あたま)を下(さ)げました。
「やはり、僕(ぼく)のだったんだな。」
 やさしい年郎(としろう)くんは、こうしてあやまられると、怒(おこ)ることができませんでした。
「いいよ、僕(ぼく)は、新(あたら)しいのを買(か)ったから、このたこは、君(きみ)にあげるよ。」と、いって、そのたこを町(まち)の子供(こども)に与(あた)えたのです。町(まち)の子供(こども)は、きまりわるそうにして、そのたこをもらってゆきました。
 それから、またその町(まち)の子(こ)は、毎日(まいにち)のようにこの原(はら)っぱへきて、六角(かく)だこを上(あ)げるようになりました。年郎(としろう)くんの新(あたら)しい龍(りゅう)の字(じ)のたこは、たびたび一番(ばん)だことなって、大空(おおぞら)からみんなのたこを見下(みおろ)ろしましたが、前(まえ)にたびたび一番(ばん)だことなった六角(かく)だこは、どうしたのか、このごろは下(した)の方(ほう)でぐるぐるとまわって、よく高(たか)くは上(あ)がりませんでした。
「あの子(こ)、たこを上(あ)げるのは下手(へた)ね。」と、きよ子(こ)さんが、いいました。
「あのたこは、癖(くせ)があって、むずかしいんだよ。僕(ぼく)が、教(おし)えてやろうよ。」
 年郎(としろう)くんは、自分(じぶん)のよく上(あ)がっているたこを、きよ子(こ)さんに持(も)たせておいて、
「君(きみ)、糸目(いとめ)を上(うえ)にしなければだめだ。」と、いいながら、町(まち)の子(こ)の方(ほう)へ飛(と)んでゆきました。

 

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