返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

どこかに生きながら(1)

时间: 2022-11-28    进入日语论坛
核心提示:どこかに生きながら小川未明子こねこは、彼かれが生うまれる前まえの、母ははねこの生活せいかつを知しることはできなかったけれ
(单词翻译:双击或拖选)
 

どこかに生きながら

小川未明


子こねこは、彼かれが生うまれる前まえの、母ははねこの生活せいかつを知しることはできなかったけれど、物心ものごころがつくと宿やどなしの身みであって、方々ほうぼうを追おわれ、人間にんげんからいじめつづけられたのでした。母ははねこは、子供こどもをある家いえの破やぶれた物置ものおきのすみへ産うみ落おとしました。ここで幾日いくにちか過すごすうちに、子こねこは、やっと目めが見みえるようになりました。そして、母親ははおやの帰かえりがおそいと、空あき箱ばこの中なかから、明あかるみのある方ほうを向むいて、しきりとなくのでした。もし母ははねこが、その声こえをききつけようものなら、急いそいで走はしってきました。そして、箱はこへ飛とび込こむや否いなや、子供こどもに乳房ちぶさをふくませたのであります。
しかし、ここも安住あんじゅうの場所ばしょでなかったのは、とつぜん物置ものおきへきた主人しゅじんが見みつけて、大おおいに怒いかり、
「いつ、こんなところへ、巣すを造つくったか。さあ、早はやく出でてうせろ!」と、ほうきで、たたき出だそうと、追おいたてたからでした。あわれな母ははねこは、あわてながら、かわいい子供こどもをくわえて、逃にげ出だすより途みちがなかったのです。空あき地ちをぬけ、林はやしのある方ほうへと、いきました。
そこには、小ちいさな祠ほこらがあって、その縁えんの下したなら、安全あんぜんと思おもったのでしょう。けれどそこは湿気しっけにみち、いたるところ、くもの巣すが、かかっていました。それだけでなく、野良犬のらいぬの隠かくれ場所ばしょでもあるのを気きづくと、また、そこを一刻こくも早はやく去さるのをちゅうちょしませんでした。母ははねこは、べつに心当こころあたりもなかったから、子供こどもを口くちにぶらさげたままふたたび町まちの方ほうへ引ひっ返かえしたのです。
秋あきも末すえのころで、町まちの中なかは、いたって静しずかでした。その日ひは、風かぜもなく、青あおい空そらから、太陽たいようが、あたたかに、家々いえいえの屋根やねを照てらしていました。母ははねこは、窓まどの開あいた、ふとんを干ほしてある、二階家かいやが目めにつくと、大胆だいたんにも塀へいをよじのぼりました。いまは、どんな冒険ぼうけんをしても、子こねこのために、いい場所ばしょを探さがし出ださなければならぬと思おもったのです。さいわい人ひとがいなかったので、すぐ座敷ざしきへつれてきました。自分じぶんも、かたわらへながながと臥ねて、乳ちちをのませました。これが、いつまでもつづくものなら、母子おやこのねこは、たしかに幸福こうふくだったでしょう。普通ふつうの飼かいねこなら、ぜいたくでもなんでもないのだが、二匹ひきには、許ゆるされぬ望のぞみでありました。わずかばかりの安息あんそくが、恐おそろしいむくいで、仕返しかえしされねばならなかったのです。はしご段だんを上のぼってきた、おかみさんが、大騒おおさわぎをして、なぐる棒ぼうを取とりにいきました。おかみさんは、宿やどなしねこに入はいり込こまれてはたいへんだ。こんなことが、二度どとないように、こらしめるとでも思おもったのでしょう。しかし、彼女かのじょのもどったときは、二匹ひきのねこの姿すがたは、もう見みえませんでした。
重かさなり合あうように、建たち並ならぶ家々いえいえの屋根やねは、さながら波濤はとうのごとくでした。地ちの上うえですむことのできないものは、ここが唯ゆい一の場所ばしょであったかしれません。二匹ひきのねこは、もう降おりようとしませんでした。ときどき、おびやかすように、ものすごい木枯こがらしが、吹ふかなければ、なおよかったのです。
「おまえは、どこへいってもいけないよ。じっとして、私わたしの帰かえるのを待まっておいで。」
母ははねこは、こう子こねこにさとしたのでした。高たかい家いえにはさまれて、目立めだたない平家ひらやは、比較的ひかくてき風かぜもあたらなければ、日ひが射さすと、ブリキ屋根やねから陽炎かげろうの立たちそうな日ひもありました。子こねこが、一人歩ひとりあるきさえしなかったら、ここは、どこよりもいいところだったにちがいありません。しかし、いくたびとなく追おわれ、いじめられつづけて、そのたびに母ははねこが、命いのちをかけて守まもってくれたのを知しっているので、子こねこは、いいつけにそむくことはなかったのです。
母ははねこは、後あとに残のこした子こねこのことを心配しんぱいしながら、方々ほうぼうのごみ箱ばこや、勝手かってもとをあさったのでした。その苦労くろうは、けっして、すこしのことでなかった。いかに気きが急せいても、なにか見みつからなければ、空むなしくは、帰かえれなかったのでした。
そのうち、塀へいをかき上のぼる、するどいつめ音おとがすると、子こねこは、母ははねこが帰かえったのを知しり、つづけさまにないて、ひさしの下したから顔かおを出だすのでした。
そのとき、母親ははおやのやせた姿すがたが、西日にしびを受うけて、屋根やねへ灰色はいいろの長ながい影かげをひきました。毛けのつやもなく、脾腹ひばらのあたりは骨立ほねだっていました。彼女かのじょは、子供こどもの無事ぶじだったのを喜よろこび、持もってきた餌えさを与あたえました。そして、みずからの空腹くうふくを忘わすれたほど目めを細ほそくして、子供こどもの食たべるのを見みて満足まんぞくしたのでした。
冬ふゆの晩ばんには、寒さむい、身みを刺さすような北風きたかぜが、用捨ようしゃなく、屋根やねの上うえを吹ふきまくりました。母ははねこは、子供こどもを壁かべのすみへ押おしやるようにして、自分じぶんのからだで、風かぜをさえぎるだけでなく、ぬくみであたためてやったのでした。そのため、子こねこは、安やすらかに眠ねむることができました。それは、子こねこの生涯しょうがいにとっても、またどんなに感銘かんめいの深ふかいことだったかしれません。
朝あさ、太陽たいようが上のぼると、母ははねこは、また出でかけました。霜しもが真まっ白しろに、雪ゆきのごとく、屋根やねへ降おりていました。その結晶けっしょうが、ちかちかと、目めをさしたのです。子こねこは、身みぶるいしました。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: