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どこで笛吹く(4)

时间: 2022-11-28    进入日语论坛
核心提示:四光治こうじは家うちへ帰かえると絵えの具ぐ箱ばこを取とり出だして、自分じぶんもいっしょうけんめいになって木きや空そらや、
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四


光治こうじは家うちへ帰かえると絵えの具ぐ箱ばこを取とり出だして、自分じぶんもいっしょうけんめいになって木きや空そらや、鳥とりなどを描かいてみましたけれど、どうしてもあの少年しょうねんの描かいたような美うつくしい、いきいきとした色いろも、姿すがたも出でなかったのであります。光治こうじは、まったくこれは、絵えの具ぐや筆ふでがよくないからだと思おもいました。そしてあの少年しょうねんの持もっていたような絵えの具ぐや筆ふでがあったら、自分じぶんにもきっと、あのようにいきいきと描かけるのであろうと思おもいました。彼かれはどこへいったら、あれと同おなじい絵えの具ぐや、筆ふでを売うっているだろうかと、そればかり思おもっていたのでありました。
ある日ひ、光治こうじは森もりの奥おくにある大おおきな池いけのほとりへいって笛ふえを吹ふこうと思おもってきかかりますと、先日こないだの少年しょうねんがまた池いけのほとりで絵えを描かいていました。少年しょうねんは光治こうじを見みると、やはり懐なつかしそうに微笑ほほえみました。光治こうじも打うち解とけて少年しょうねんのそばに寄よって絵えを見みますと、青々あおあおとした水みずの色いろや、その水みずの上うえに映うつっている木立こだちの影かげなどが、どうしてこうよく色いろが出でているかと驚おどろかれるほど美うつくしく写うつされていたのであります。光治こうじはもはや笛ふえを吹ふくことなど忘わすれてしまって、ただ自分じぶんも、このように上手じょうずに絵えを描かきたいものだ。それにしても、この少年しょうねんの持もっているこんな絵えの具ぐと筆ふでとがほしいものだと思おもいましたから、
「君きみ、この笛ふえをあげるから、僕ぼくにその絵えの具ぐ箱ばこも筆ふでもみんなくれないかね。」
と、光治こうじは熱心ねっしんに少年しょうねんの顔かおを見みていいました。すると少年しょうねんは、意外いがいにも快こころよく承諾しょうだくをして、
「ああ僕ぼくにその笛ふえをくれるなら、君きみにみなあげよう。」
といって、絵えの具ぐ箱ばこも、筆ふでもみんな光治こうじにくれたのであります。
光治こうじは喜よろこんで家うちへ帰かえりました。そして、すぐに紙かみを出だして、花はなや草くさを描かいてみましたが、やはりすこしもいい色いろが出でなくて、まったく少年しょうねんの描かいたのとは別物べつものであって、まずく汚きたなく自分じぶんながら見みられないものでありました。光治こうじは、まもなく自分じぶんの心こころをなぐさめた唯ゆい一の笛ふえをなくしてしまったことを後悔こうかいいたしました。
ある日ひの晩方ばんがた、彼かれはさびしく思おもいながら田舎路いなかみちを歩あるいていますと、不思議ふしぎなことには、このまえじいさんにあったと同おなじところで、またあちらから箱はこをしょってとぼとぼと夕日ゆうひの光ひかりを浴あびながら歩あるいてくるじいさんに出であいました。じいさんは光治こうじの顔かおを見みると、忘わすれずにいたものとみえて、にこにこ笑わらいながら、近寄ちかよってきまして、
「坊ぼうはさだめし笛ふえが上手じょうずに吹ふけるようになったろう、さあ、あの笛ふえを私わたしにお返かえしなさい。そのかわり、もっとおもしろい、いろいろな音色ねいろの出でるいい笛ふえをおまえにあげるから。」
と、優やさしくいいました。光治こうじはこれを聞きくと、なんとももうしわけのないことをしたと思おもいました。けれど、どうすることもできませんでした。彼かれはついに、一部ぶ始終しじゅうのことをじいさんに打うち明あけて、どうか許ゆるしてくださいともうしました。
すると、じいさんの優やさしい顔かおは急きゅうにむずかしそうな顔かおつきに変かわって、
「なんでも人ひとまねをしようとすると、そういう損そんをするもんだ。おまえの力ちからを、おまえは知しらんけりゃならん。そして、人間にんげんというものは、なんでもできるもんじゃない。自分じぶんが他ひとより勝すぐれた働はたらきがあったら、ますますそれを発達はったつさせるのだ。私わたしは、おまえにもっといい笛ふえをやろうと思おもって持もってきたが、あの笛ふえを私わたしに返かえさなけりゃこの笛ふえは渡わたされない。あの笛ふえは、またほかにやる子供こどもがあるのだから、早はやくあの笛ふえをおまえが取とりもどしてくれば、そのときはこの笛ふえを渡わたしてやる。」
といって、じいさんはいってしまいました。
それから光治こうじは、笛ふえをあの少年しょうねんから取とりもどそうと思おもって毎日まいにち森もりにゆき、山やまへ入はいって少年しょうねんの姿すがたを探さがしました。
おりおりいい音色ねいろが遠とおくの方ほうで聞きこえることがありましたけれど、どこで吹ふく笛ふえだろう。ついぞふたたび、その少年しょうねんの姿すがたを見みることができなかったのであります。
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