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とびよ鳴け(1)

时间: 2022-11-28    进入日语论坛
核心提示:とびよ鳴け小川未明自転車屋じてんしゃやの店みせに、古自転車ふるじてんしゃが、幾台いくだいも並ならべられてありました。タイ
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とびよ鳴け

小川未明


自転車屋じてんしゃやの店みせに、古自転車ふるじてんしゃが、幾台いくだいも並ならべられてありました。タイヤは汚よごれて、車輪しゃりんがさびていました。一つ、一つに値段ねだんがついていました。わりあいに安やすかったのは、もうこの先さき長ながくは、使用しようされないからでしょう。
原はらっぱで遊あそんでいた、辰たつ一は、なにを思おもい出だしたか、駆かけ出だして、自転車屋じてんしゃやの前まえへきました。そして、並ならんでいる古ふるい車くるまの中なかの、一つにじっと目めをとめていました。
「ああ、まだある。どうか、この月つきの末すえまで売うれないでいてくれ。」と、心こころで、いったのであります。
彼かれは、やっと安心あんしんして、原はらっぱへ引ひき返かえしてきました。友ともだちと鬼おにごっこをしたり、ボールを投なげたりして、しばらく遊あそんだのです。しかし、いつまでも遊あそんでいることはできなかった。夕刊ゆうかんを配達はいたつしなければならぬからです。
その自転車じてんしゃには、染そめ物屋ものやの徳蔵とくぞうさんが乗のっていたのでした。
「あいているときは、使つかいな。」と、やさしい徳蔵とくぞうさんは、よく辰たつ一にいいました。辰たつ一は、借かりて、この原はらっぱを走はしりまわったことがあります。また、遠とおくまで乗のって遊あそびにいったこともありました。あるときは、学校がっこうから帰かえって、ぼんやり往来おうらいに立たっていると、うしろでふいにチリン、チリンという音おとがするので、驚おどろいて振ふり向むくと、徳蔵とくぞうさんが、自転車じてんしゃに乗のって止とまっていました。
「うしろへ乗のらないか。」
辰たつ一は、喜よろこんで、徳蔵とくぞうさんの背中なかにつかまって、荷掛にかけに腰こしをかけ、足あしをぶらんと下さげました。
「足あしを気きをつけな。」
さびしい田舎道いなかみちの方ほうまで、自転車じてんしゃを走はしらせて、二人ふたりは、散歩さんぽしました。徳蔵とくぞうさんは、辰たつ一にとって、実じつの兄にいさんのような気きがしました。
去年きょねんの暮くれ、徳蔵とくぞうさんに、召集令しょうしゅうれいが下くだりました。辰たつ一は、空そらが曇くもって、風かぜの吹ふく日ひに、旗はたを振ふりながら、氏神うじがみさまへ送おくっていったことを忘わすれることができません。
「万歳ばんざい! 万歳ばんざい!」と叫さけびながら、どうか、めでたく凱旋がいせんしてきてください。そのときは、また
こうして迎むかえに出でるからと、ひとりでいったのでした。
徳蔵とくぞうさんが、戦死せんしされたという知しらせがとどいたのは、ほたるの出ではじめる夏なつのころでした。そして、それがじつに悲壮ひそうなものであったことは、このほど帰還きかんした兵士へいしの口くちからくわしく伝つたえられたのであります。その兵隊へいたいさんは、同おなじ部隊ぶたいで、徳歳とくぞうさんのことをよく知しっていました。
出征しゅっせいの際さいは、○○駅えきから、徳蔵とくぞうさんは、出発しゅっぱつしたのです。兵隊へいたいさんを乗のせた汽車きしゃが通とおると、国防婦人こくぼうふじんの制服せいふくを着きた女おんなたちは、線路せんろのそばに並ならんで、旗はたを振ふりました。後おくれた女おんなの人ひとは、旗はたを振ふりながら、田圃道たんぼみちを走はしってきました。また、工場こうじょうの窓まどからは青あおい服ふくの職工しょっこうさんや白しろいエプロンの女工じょこうさんたちが、顔かおを出だして、ハンカチを振ふるもの、手てを挙あげるもの、遠とおくからこちらまでひびくように、
「万歳ばんざい! 万歳ばんざい!」と、叫さけんでいました。汽車きしゃの窓まどから、兵隊へいたいさんたちも、これに応こたえていました。中なかには山奥やまおくの村むらからきたものもありました。徳蔵とくぞうさんのそばにいた兵士へいしは、はじめて、海うみを見みて、
「大おおきな河かわだなあ。」と、いって、驚おどろいたそうです。
「海うみだ、河かわではないよ。太平洋たいへいようなんだ。」
徳蔵とくぞうさんは、教おしえました。
「あっ、これが海うみで、太平洋たいへいようか。」と、その兵士へいしは、目めをまるくして、青あおい波なみを見みていました。そのときが、口くちのききはじめで、徳蔵とくぞうさんと、この兵士へいしとは、その後ごたがいになんでも話はなすように親したしくなりました。徳蔵とくぞうさんは、細長ほそながい顔かおをしていましたが、その兵士へいしは、角張かくばった顔かおつきをしていました。そして、その兵士へいしには、年老としとった母親ははおやがあって、家いえを出でるとき、母親ははおやは、つえをつきながら、停車場ていしゃばまで見送みおくって、
「家いえのことは、心配しんぱいしなくていいから、お国くにへよくご奉公ほうこうするだぞ。」と、いったそうです。兵士へいしは、母親ははおやのいったことを思おもい出だして、ときどき、涙なみだぐんでいました。
海うみを渡わたる船ふねの中なかで、兵士へいしは、
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