新古今和歌集巻第一
春歌上
春立つ心をよみ侍りける
1 み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春は来にけり
摂政太政大臣
【通釈】
新古今和歌集巻第一
春歌上
1 吉野は山も霞んで、白雪の降った古里の地にも春はやって来たのだなあ。本歌「春立つといふばかりにやみ吉野の山も霞みて今朝は見ゆらむ」(拾遺・春・壬生忠岑)。○み吉野 大和国の歌枕、吉野。現在の奈良県吉野郡吉野町。「み」は美称の接頭語。○山も 里だけではなく、山もの意。○ふりにし里 「白雪の降り」に「古り」を掛ける。上代、吉野の宮滝に吉野離宮があり、天皇も行幸した。▽建久六年(一一九五)春以降同年十一月の政変以前に詠まれたと推定される。「治承題百首」での詠。「雪深き岩のかけ道跡絶ゆる吉野の里も春は来にけり」(千載・春上・待賢門院堀河)は先行歌。後京極殿御自歌合にも選ばれ、判者藤原俊成は忠岑の本歌の第四句を取ったことを賞する。三百六十番歌合にも載る。定家十体では麗様の例歌とする。