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第六卷 第三話 じゃがたま 2

时间: 2024-03-05    进入日语论坛
核心提示:  2  京都の寒さはよりいっそう厳しさを増していた。何より風が強い。  二週間前と同じ場所でタクシーを降りた桐野は、マ
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  京都の寒さはよりいっそう厳しさを増していた。何より風が強い。
  二週間前と同じ場所でタクシーを降りた桐野は、マフラーを顎まであげて、白い吐息を風に舞わせた。
  えんじ色のジャケットにライトグレーのチノパン、ダウンコートはシルバーカラーと、前回より明るめのコーディネートにしたのは、妙との再会を想定してのことである。
  桐野の心境は複雑だった。
  亡くした妻への恋慕から、食を捜すことに至ったのだが、まさかそれが妙との再会につながろうなど、微み塵じんも予想していなかった。
  桐野の胸のうちは、少しずつ美根子から妙へと重心が移っていっていた。
  そもそもが贖しょく罪ざいの意味合いが色濃かった食捜しである。苦労を掛けた妻は美食に辿たどり着くことなくこの世を去ってしまった。自分だけが脚光を浴び、美食漬けの日々を過ごしている。
  妻は決して人を恨むような性格ではなかったが、それでもやはり後ろめたさはいつもつきまとう。
  貧乏暮らしのころには考えられなかった美食を口にする度に、美根子にも食べさせてやりたかったと思うのは、うそ偽りない事実だ。しかしながら、免罪符を手に入れようとして食を捜すことにしたのもたしかだ。
  家で食べるご飯のなかで、〈じゃがたま〉が一番のご馳走だったころは、はたしてしあわせだったのか。それをたしかめるのが一番の目的だったかもしれない。美根子はどうだったのか。そして自分は。その答えはおそらくこれから出るのだろう。
  「おこしやすぅ、ようこそ」
  『鴨川食堂』の引き戸を開けると、こいしが明るい声で桐野を迎えた。
  「よう来てくれはりましたな。電話でもお話ししましたけど、違うてるかもしれまへん。
  そのときは堪忍しとぅくれやっしゃ」
  厨房から出てきた流が和帽子を取って頭を下げた。
  「とんでもない。無理を承知でお願いしたのですから」コートを脱いで桐野がコート掛けに掛けた。
  「すぐにご用意します」
  緊張した面持ちで流が厨房に駆け込んでいった。
  「妙さんからお聞きしましたけど、あの日はえらい盛り上がってはったみたいですね」席に着いた桐野に、こいしが茶を出した。
  「年とし甲が斐いもなく、という表現が正しいのだろうね。学生時代に戻って、ふたりともえらくはしゃいでしまって。もう、これから先どれだけ生きられるか分からんのだから、ときにはこんな時間があってもいいかなと」「ええんと違います? 妙さんもお顔つやつやで、若返ってはりましたよ。お飲みもんはどうしはります?」
  「今日はお酒のほうは遠慮しておくよ。ちゃんと味わわないといけないからね」桐野がジャケットのボタンをはずした。
  「急須も置いときますよって」
  テーブルに急須と湯ゆ吞のみを置いて、こいしが下がっていった。
  正直なところ、さほど期待はしていなかった。
  美根子の手料理のレシピなど残っているはずもなく、自慢できるような料理でもなかったから、誰かに伝えていたとも思えない。福島はもちろんのこと、地方でも似たような料理に出会ったことはまったくなかった。一度だけ料理番組で、同じ名前の〈じゃがたま〉という料理が紹介されていたが、肉じゃがの肉抜きのような料理で、美根子が作っていたものとは似て非なるものだった。
  厨房から漂ってくる匂いにハッとした。あのときと同じなのだ。明らかにいつもとは違う匂いに鼻をひくつかせ、またその日が来たのだと思い知ることになる。美根子ひとりのパートの収入などたかが知れている。〈じゃがたま〉を食べるときは、何かしらの仕事をしようかと、いつも美根子に申し出ては断られていた。大作家になる人がみっともない真ま似ねはしてはいけない。いつも同じ言葉だった。
  「お待たせしましたな。たぶん白ご飯と一緒に食べてはったやろと思いますんで、先にお持ちしました」
  砥と部べ焼の飯めし茶ぢゃ碗わんにこんもりと盛られ、湯気が上がる白飯を、流が桐野の前に置いた。
  「たしかにそうだったな。晩酌などする余裕もなかったから、必ずメシと一緒だった」桐野が飯茶碗を手に取って、白飯の匂いを嗅いだ。
  おそらくは米の質が違うのだろう。こんなにいい米ではなかった。桐野はそう言いたい気持ちを抑え込んだ。
  「さあ、どうでっしゃろ。お捜しになってたんと同じ料理やと思いますんやが、違うてたら正直に言うてくださいや」
  流が桐野の前に置いたのは、立たち杭くい焼の厚ぼったい丸皿だった。
  「見た目はまったく同じです。そうそう、こんな感じでした。匂いもそっくりだ」皿に覆いかぶさるようにして、桐野が料理をじっと見つめている。
  「問題はソースですねん。この小さい瓶に入っとるのが、わしのお奨めっちゅうか、ほんまの味に近いもんですけど、奥さんが使つこうてはったんは、おそらくこっちの大手メーカーのもんやと思います。両方置いときますさかいに、食べ比べてみてください」「分かりました。うちでは卓上瓶に入ってましたから、どんなソースを使っていたのか知らないのですが、食べてみれば分かるかもしれません」「これだけをじっくり味おうてもらいたいと思うて、あえて汁もんは用意しとりまへん。
  どうぞごゆっくり召しあがってください」
  丸盆を小脇に抱えて、流が下がっていった。
  ほんのりと湯気を上げている皿には、端っこに少し焦げ色が付いたタマネギが敷かれ、その上には五ミリほどの厚さに切られたジャガイモが無造作に並んでいる。そしてそれをまとめるように、薄焼き玉子が黄色く広がっている。
  ふたつのソースを前にして一瞬迷った桐野だが、手にしたのは大手メーカーのものだった。
  皿の上からソースを掛けまわし、すぐさま口に運んだ。
  かすかに甘いタマネギと、外はカリッと中はほっくりとしたジャガイモにソースが染みこんで、白飯に載せて食べると、当時の記憶がまざまざとよみがえってくる。
  家計費が乏しくなってきたことを知らせる料理だったが、それがあたかも行事食であるかのように、神妙な気持ちで食べていたのはなぜだったのだろう。収入が乏しいことを女房から責めたてられても仕方がないところだが、まるでそんなふうには感じなかった。
  さほど量もおおくなかったから、ジャガイモにソースをつけ、それを白飯に塗って食べた記憶がある。白米は美根子の実家から送ってきていたようだったが、実家もけっして裕福ではなかったから、銘柄米でもなく、いくらか糠ぬか臭さが残る米だった。たっぷり食えるだけでもありがたいから、文句を言うことなどなかった。
  売れない作家の甲か斐い性しょうのなさを実感しながらも、いつもこの〈じゃがたま〉に励まされていた。
  ──お代わりはいかがされますか?──
  どこかから美根子の声が聞こえてきたような気がした。
  残り少なくなった〈じゃがたま〉をおかずにして、二膳目を食べるときは、ソースを白飯に掛けたものだ。
  ──よかったらわたしの分もどうぞ。もうお腹なかいっぱいですから──そう言って、美根子は自分の皿に残る〈じゃがたま〉を白飯の上に載せるのが常だった。
  糟そう糠こうの妻という言葉が頭に浮かんだ。それは美根子そのものだという思いから、自分の作品では禁句としてきた。言葉だけでなく、そういう人物像そのものを避けてきたのは、私小説になってしまうことを恐れるあまりのことだ。
  美根子は桐野が人気作家になることを確信していたのだろうか。それともあきらめの境地だったのだろうか。
  今では量より質になってしまい、お代わりをするには至らないが、〈じゃがたま〉とはこんなに旨いものだったのか。貧しい食生活から美食を重ねる今になっても、類いまれなご馳走に思えてしまうのは、懐かしさというスパイスが効いているせいなのか。あるいは美根子への思いが素食を美食に変える魔法なのだろうか。
  「どないです。お捜しになってた料理はこれで合おうてましたかいな」丸盆を手にして、流が桐野の傍らに立った。
  「合うどころか、美根子が作ってくれた〈じゃがたま〉そのものです。どんなマジックを使って捜しだされたのかお聞かせください」
  「その前にお代わりはどないですか? つまみながら話を聞いてもろたほうがええかなと思いますんやが」
  流が空になった皿に目を遣った。
  「それがいいですな。少しでけっこうです」
  「ソースも一種類しかお使いになっとらんみたいやさかい、味見だけでもしてください」空の皿を下げて、流が小皿に載せた〈じゃがたま〉をテーブルに置いた。
  「少しでも安いものをと心がけていたようですから、きっと美根子が使っていたソースは大手メーカーの量産品だっただろうと思いましたが、やはりそうだったようです」「わしもそう思うてご用意しておきました。食べ慣れた味が一番ですさかいにな。けど、まぁ、ちょっとこっちも掛けて食べてみてください」「そんなにおっしゃるのなら」
  桐野が小さな瓶に入ったソースを〈じゃがたま〉に掛けて口に運んだ。
  「どないです?」
  流は桐野の口元をじっと見ている。
  「これはまた、どう表現すればいいのか。風味がころっと変わりますな」桐野がしげしげと〈じゃがたま〉を見つめた。
  「ソースによって、こないに味が変わるということを、ちょっと頭に入れといてください。先生の向かいに座らせてもろてもよろしいかいな」「どうぞどうぞ。じっくりとお話を聞かせてください」「ほな遠慮のう座らせてもろて。なんや緊張しますわ。憧れの作家先生と向かい合うて話させてもらうやなんて」
  言いながら、流がタブレットのスイッチを入れた。
  「どうぞお気楽に」
  座りなおして、桐野が頰をゆるめた。
  「最初は雲をつかむような話やと思うたんですが、奥さんがご自分で創作なさった料理やない、というとこからスタートしました」
  「どうして女房の創作ではないと?」
  「ジャガイモとタマネギと玉子という、単純極まりない取り合わせですわな。もしも素人が創作するんなら、調理法やら味付けに、いろんな工夫を凝らすんやないかと思うたんですわ。なんぼ家計が切迫しとっても、こんなシンプルな料理をいきなり出したら、主人に怒られるんやないか、食べてもらえんのやないかと思うはずです。現にこいしがそう言うとりました。自分やったら怖うてよう出さん、と。けど奥さんの美根子はんは、そない大胆な人やったようには思えん」
  「たしかに。そう言われればそうですな」
  桐野が身体を乗りだした。
  「わしでもそうです。どこぞで食うたことがなかったら、こんなん思いつきまへん。仮に思いついたとしても、人にはよう出しまへんわ。つまり美根子はんは、どこかの店でこういう料理を食べてはった。そう確信して捜しはじめたんですわ」「非常に論理的です。わたしはそんなことを思いつかなかった。極めて情緒的な人間ですからな」
  桐野が苦笑した。
  「先生がおっしゃっていたように、美根子はんの故郷の福島には、それらしき料理は見つかりまへんでした。となると、大学生活を送ってはった京都しかない。そう決めこんで捜しましたんやが、だいぶ前に新聞で読んだ先生のインタビュー記事が、ええヒントになりました」
  「わたしのインタビューですか。ずいぶんあちこちでしゃべりましたから、どれがヒントになったのか見当もつきません」
  「今は先生、えらい便利な時代になりましてな。アーカイブっちゅうもんやと、古い記事も読めますんや。これですわ。受賞された直後の記事です。ここに書いてますやろ。あの小説のクライマックス、薩摩病院のくだりは、奥さんの美根子はんからお聞きになった逸話がきっかけになったて」
  流がタブレットの画面を桐野に向けた。
  「これなら覚えてますよ。経済新聞の編集員さんから頼まれましてね。たしか賞をいただいて最初のインタビュー記事じゃなかったかな」桐野が画面をスワイプした。
  「このなかで先生は、奥さんに助けられたて言うてはる。鳥と羽ば伏ふし見みの戦いで、薩摩藩士にようけのケガ人が出た。薩摩藩とゆかりがあった『相しょう国こく寺じ』の塔たつ頭ちゅう『養よう源げん院いん』は薩摩病院と呼ばれるほど、お医者はんが集まって治療をした。あの話が小説に厚みを増すのに役立った。そう言うてはります。あのエピソードの舞台は、同志社のすぐ近くや。ひょっとしたら、奥さんは同志社の学生はんやったんやないかと思うて、調べさせてもろたら、やっぱりそうやった。同女で英文学を勉強してはったんですな。となると奥さんは烏丸今いま出で川がわ近辺に馴染みがあったはずや。そこまで辿れたらあとは捜してはった料理に一直線ですわ。ただし〈じゃがたま〉やのうて〈いもねぎ〉ですけどな」
  流が店の写真を画面に映し出した。
  「〈いもねぎ〉? これが?」
  写真を見て桐野が眉をひそめた。
  「これは烏丸今出川近くにあった『わびすけ茶房』という店の名物料理で〈いもねぎ〉て言いますねん。ジャガイモとタマネギを〈じゃがたま〉と言うか〈いもねぎ〉と言うかの違いですわな。おそらく奥さんの美根子はんはこれをヒントにして〈じゃがたま〉を思いつかはったんやと思います。お店の〈いもねぎ〉はミンチも載っとるし、味も付いとる。
  何より玉子をたっぷり使うてますさかい、見た目が黄色い。見た目も味も違うさかい、同じ名前を使うのは遠慮なさったんでしょう。けど基本的には〈いもねぎ〉と同じような作り方です。ミンチを使わんと、玉子も少なめ、味付けも軽ぅ塩しただけです。言うてみたら〈いもねぎ〉の簡易版っちゅうとこですわ」何枚かの写真をタブレットに映しだしながら流が説明を加えた。
  「五、六年前に『相国寺』に取材に行ったのだが、こんな店には気付かなかったな」「百年ほども続いとった店ですけど、二〇一一年の六月に店じまいしはりましたんや」「京都のお店の名物料理だったのか。道理で旨いはずだ」桐野が薄く笑った。
  「京都の店の料理やさかい旨い、っちゅうのは、ちょっと違うと思います。現にこの店の口コミは、閉店して何年も経った今でもグルメサイトにようけ残っとりますけど、さんざんな書かれようですわ。こんなもん料理のうちに入らん、やとか、なんの工夫もない、やとか。美味しいて書いとる口コミはほとんどありまへん。けど、きっと美根子はんは美味しいと思わはった。それを覚えてはって、アレンジして再現しはった。家計に負担の掛からん金額でできるご馳走やと。せやさかいこれは、やっぱり美根子はんの創作料理ですわ」
  「ほかにもいくつか得意料理があったみたいだが、なぜかわたしの記憶に残っているのはこの〈じゃがたま〉でね。それがどうにも不思議だったのだが、少しだけ分かったような気がする」
  桐野が〈じゃがたま〉を口にした。
  「誰がどう言おうと、自分が旨いと思うたもんは旨い。小説も一緒ですわなぁ。自分がおもしろいと思うた小説は、どんな書評が出とっても読む」「そう言えば受賞するまでは、わたしの作品に対するレビューはひどかったな。できるだけ気にしないようにしていたのだが、落ち込むこともよくあったよ」「わしも試作を重ねとるうちに、この〈じゃがたま〉が好物になりましてな。わしなりにこれによう合うソースを捜してみましたんや。それがこの『ヒロタソース』っちゅうやつで、京都の街なかで作っとるんですわ。掛けるソースによって、ころっと味が変わるっちゅうのも〈じゃがたま〉のええとこやと思います。小説もそうやと思いますわ。おんなじ幕末もんでも先生の作品はひと味違う。門外漢がえらそうなこと言うみたいでっけど、受賞しはった作品から、味付けが変わってきたように思います。いろんなソースを使い分けてはるみたいな気がしますねん」
  「そうですか。たしかにそうかもしれませんな。特に女房を亡くしてからは、そのあたりを意識するようになりました」
  桐野が宙に目を遊ばせている。
  「長いあいだ一緒に暮らすっちゅうのは、えらいことですねんな。もの言わいでももの言うし、気持ちてなもん、お互いにお見通しやし。そんな連れ合いがおらんようになって、寂しがっとるだけでは申しわけが立たん。ふたり分気張らんと。毎日わしはそう思うて生きとります」
  「おっしゃるとおりです。女房に恥じない生き方をしないと、といつも思っております」気を引き締めるかのように、桐野が両方の頰を平手でたたいた。
  「次の作品も愉たのしみにしとります」
  「ありがとうございます。次は別のソースを掛けてみます」桐野が明るい笑顔を見せた。
  「レシピてなたいそうなもんやおへんけど、簡単に作り方を書いときました。あんまり料理せんかたでも、これやったら作れると思います」流がクリアファイルを桐野に渡した。
  「うちでも作れましたさかい、先生でも作れると思います」厨房から出てきて、こいしが桐野のコートを取った。
  「先生でも、てな失礼なこと言うたらあかんがな」「あ、すんません」
  こいしがあわてて口をふさいだ。
  「大変お世話になりました。前回いただいたお料理の代金と併せてお支払いを」「うちは特に金額を決めてませんねん。お気持ちに見み合おうた分だけ、こちらの口座に振り込んでください」
  こいしがメモ用紙を手渡した。
  「承知しました。帰りましたらすぐに」
  桐野がジャケットのポケットにメモをしまった。
  「寒おすさかいどうぞお気を付けて。雪でも降りそうな空ですわ」敷居をまたいだ桐野を送りに出てきて、流が冬空をあおいだ。
  「胸があたたかくなりましたので大丈夫です」桐野は胸に手を当てて、ふたりに笑顔を向けた。
  「ご安全に」
  正面通を歩きだした桐野の背中に流が声を掛けると、桐野は振り向いて会釈した。
  薄日が差したかと思えば、白いものがちらちらと空から落ちてくる。冬らしい空気のなかを桐野がゆっくりと歩いてゆく。
  「そうそう。妙によろしくお伝えください。どうぞお元気で、と」振り向いて、桐野が大きな声をあげた。
  「承知しました。必ずお伝えします」
  流が両手をメガホンにした。
  「そうか。会わんと帰らはるんや」
  こいしが桐野の背中に目を細めた。
  「別のソースを使うのは小説のなかだけでええ」流が店の引き戸を開けた。
  「なんでわざわざ『ヒロタソース』を出したんやろて思うてたんやけど、そういう意味やったんか」
  こいしが腑ふに落ちたような顔を流に向けた。
  「そない難しいこと考えたわけやない」
  流が仏壇の前に座って線香に火を点つけた。
  「お父ちゃんはいろんなソースが好きやさかい、気ぃ付けんとあかんな。うちがちゃんと見張ってるさかい心配せんでええよ」
  流の隣に座って、こいしが手を合わせた。
  「心配なんかしとるかいな。わしのことを一番よう知っとるのは掬子や。わしの好きなソースもな」
  掬子の写真を真っすぐに見つめて、流が寂しげに笑った。
 
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