莫言は小学5年生の時、文化大革命で中退し農村で10年にわたって働いた。主に高粱、綿花の作付けをしたり、牛を放牧したり、草を刈ったりしていた。文化大革命の間、読む本がない時には『新華字典』までも読み、新しい文字を覚えるのを好んだ。その後、莫言の母親は隣家から範文瀾の『中国通史簡編』を買いとり、莫言はこの1セットの本で文化大革命の歳月を過ごした。しかもこの1セットの本を背負って故郷を離れ、外の世界へと出た。現在でも莫言は『中国通史簡編』が最も影響を与えた本だったと語っている。
本名は管謨業。1955年2月17日生まれ。原籍は山東高密にある。ノーベル文学賞を受賞した初めての中国籍作家である。莫言は1980年代に農村を題材とした一連の作品でその名が知られるようになった。作品は「郷土への懐かしさ、郷土への恨み」といった複雑な情感に満ち溢れていて、「ルーツを尋ねる文学」の作家とされている。小説『赤い高粱』は1980年代の中国文壇において一里塚となった作品で、およそ20言語で翻訳されている。2011年、2009年の作品『蛙鳴(あめい)』で茅盾文学賞を受賞した。2012年、「幻覚的なリアリズムによって民話、歴史、現代を融合させた」としてノーベル文学賞を受賞した。