京劇のくま取りとは、役者が顔面に特殊な絵の具で彩色し、キャラクターの性格、人柄、運命を表すことを指す。一般的に、赤のくま取りは忠勇な正義者、黒は中性で勇ましく智恵のある人、緑は同じく中性だが民間の英雄の現れで、黄色と白は凶悪で悪賢い悪役を表す。金と銀は神秘の現れで、神や妖精をそれぞれ現す。
京劇の役柄
京劇の役柄は、大きく「生」「旦」「浄」「丑」という四つに別けられる。
老生 小生 老旦
青衣 武旦 文丑
また、それぞれ以下のように細かく分かれる。
「生」:「老生」(中年男性、もしくは帝王、貴族など)、「小生」(青年男子)。
「旦」:「青衣」(中年女性、普通は貴族の夫人やお嬢さん)、「武旦」(立ち回りのできる女性)、「花旦」(若い女性。召使などの女性)。
「浄」:各種のくま取りの役柄をさし、性格、人柄もしくは容貌の変わった男性。
「末」:「老生」の類に入るが、年齢が一段と上にあり、考え方があやふや、寂れた老人の役で、化粧時に、鼻柱に小さな白粉をつける。
「丑」:浪人、もしくは機敏でユーモアに富んだ民間の義士を指す。
京劇の歴史
「東方のオペラ」といわれる京劇は、生粋な中国文化の一つで、北京で生まれたことからその名が付いた。
京劇には200年余りの歴史がある。その由来はいくつかの古来の地方劇に遡り、中でも、とりわけ、18世紀に流行っていた中国南方の地方劇「徽班」の影響が大きい。1790年、最初の徽班が上京し、皇帝の生誕祝賀公演に参加した後、いくつもの徽班が相次いで上京した。徽班は流動性が強く、他の芝居の演目や表現方法を吸収するのに長けていた。当時から北京には数多くの地方劇が集まっていたため、上京した徽班は、他の地方劇を積極的に取り入れ、その芸術性が著しく向上された。その後、19世紀末~20世紀始め、数十年をかけて京劇が形成され、中国最大の演劇文化となった。
京劇の演目はたいへん豊富で、役者の人数もかくのごとく、劇団の数や観衆の数などのいずれも中国で一番の影響力を持つ。
京劇は「唱」(歌い)、「念」(読み上げ)、「做」(演技)、「打」(立ち回り)、「舞」(踊り)を一体に、決まった型を通して物語を展開し、人物を描写する総合的演劇芸術である。京劇の役柄は主に生(男性)、旦(女性)、浄(男性)、丑(男性も女性も兼ねる)の四つに大別される。このほか、脇役の役柄もある。
くま取りは京劇の中で最も特色のある芸術である。役柄の忠誠心と不忠、美しさと醜さ、善良と邪悪、貴さと卑しさは、いずれもくま取りにより表現することができる。例えば、赤は忠誠心の強い人、紫は智者、剛毅な人、黒は正直で、尊い人格を持つ人、白は忠誠心に欠け、残酷な人、青は気が強く、勇ましい人、黄色は凶暴な人、金と銀は主として神、仏、幽霊、妖精に使われ、金の顔面と体でその虚無感を表す。