万年雪を頂いた岷山山脈の主峰になる雪宝鼎山の下方、標高3145~3578mのところに黄色の石灰華が3.6㎞に渡り流れ落ちている。この様子が、まるで黄色い龍が果てしなく続く草原から飛んできたように見えることから、「黄龍」と名づけられた。石灰華の層の上にある彩池は3400余りに達し、それぞれ水深や光線、見る角度などの条件の違いによって微妙に色合いが異なり、神秘的な美しさを見せる。この色彩鮮やかな彩池と合わせ、石灰岩から成る棚田のような池が連なり、しぶきが飛び散り、煌びやかな奇観を作り上げ、「人間瑶池(この世の仙境)」とも言われ、世界で最も壮観な石灰華奇観になっている。また、峡谷の間にある3400個以上の天然の彩池は、棚田のようで、大きいものは軽く5000aを超え、小さいものは、たらいや茶碗やコップのように小さく見える。池の淵はまるで黄玉で出来ているかのように非常に精巧で美しく透き通っている。華やかで、色とりどりの池の水は、様々に変化し、澄み渡り見るものをすがすがしい気分にさせる。
地理的には、青蔵高原東部の端と四川盆地西部の山間部のつなぎ目にあたり、培江、眠江、嘉陵江という三大江の分水嶺である。北亜熱帯湿潤区と青蔵高原―川四湿潤区の境界気候帯に属しており、植生は中国東部湿潤森林区から青蔵寒冷高原亜高山帯針葉林草原低木区の過渡帯に属する。動物の類種も南と北の混在した区域になる。このように位置的に過渡状態にあるので、自然環境が複雑で、未解決の謎も少なくない。
また、ここには世界でも稀に見る石灰華景観がある。黄龍の石灰華景観は種類が豊富で、自然の石灰華博物館とも言える。石灰華段丘は長さ3600mも連綿と続き、1つ1つは最も長いもので1300m、最も幅広いものは、170mのものもあり、世界的に見ても極めて珍しい景観である。
さらに、中国最東部の氷河遺跡が残されている。標高3000m以上の黄龍地域には、第四紀氷河遺跡が幅広く残されており、中でも岷山山脈の主峰、雪宝鼎山には、種類が豊富で、分布が密集した遺跡がある。また、この地域には幅広い山が林立し、5000m以上の山も7つある。そのうち、宝雪鼎(5588m)、雪欄山(5440m)、門洞峰(5058m)の3つの山は、現代氷河を育んでいる。
1992年12月にユネスコの世界遺産に登録された。世界遺産委員会は「黄龍風景区は、数多くの雪を頂いた峰と中国最東部の氷河からできた渓谷である。ここには、高山の景観だけでなく、様々な森林生態系、壮大な石灰岩構造、滝や温泉があり、更にパンダや四川省の疣鼻金糸猴を含む多くの絶滅危機種の動物たちの貴重な生息地でもある。」と評価している。