恐山(おそれざん) (青森県むつ市)
イタコで有名な霊山だが、その語源は「恐ろしい山」ではない!?
青森県の下北半島にある「恐山」といえば、「イタコ」でも有名な霊山である。そのネーミングと場所の雰囲気はピッタリで、地獄をイメージした血の池や三さん途ずの川、極楽浜などがつくられていることもあって、じつに不気味な雰囲気をかもし出している。
ところで、この山の名前は、当然「恐ろしい山」という意味なのだろうと思ってその由来を調べてみると、じつはそうでもないらしい。
恐山の別名は「宇う曾そ利り山」という。この「ウソリ」という言葉はアイヌ語が起源で、火の意味をもつ「アソ、ウソ、オソ」という言葉からきている。恐山も火山なので、この意味から「オソレ」と付けられたのではないかという説が有力だ。
ほかにも、同じアイヌ語で「くぼんだところ」を意味する「ウショロ」が、直径四キロもあるカルデラをあらわしているのではないか、また、陸奥湾に面していることから「湾内の村」を意味する「ウショロ・コータン」が語源なのではないかという説もあるようだ。
いずれにしても、漢字をあてたときには「恐ろしい」という意味をイメージするが、実際の語源とされる「ウソリ」「ウショロ」には、まったく「恐ろしい」という意味はない。
そもそもの開山は、八六二(貞じよう観がん四)年、天台宗の慈じ覚かく大だい師し円えん仁にんが唐で修行中に、夢枕に立った高僧に「汝、国に帰り、東方行程三十余日の所に至れば霊山あり。地蔵尊一体を刻し、その地に仏道をひろめよ」とお告げを受けたことによるのだという。