奇妙山(きみようさん)(長野県長野市・須坂市)
長野盆地東方に同名の山が二つある
長野県内には、同じ漢字表記の「奇き妙みよう山さん」と「奇き妙みよう山ざん」がある。
「きみょうさん」のほうは長野市にあり、長野電鉄松まつ代しろ駅の東四キロに位置する標高一〇九九メートルの山。尼あま厳かざり山やまとともに長野盆地中央部に向かって半島状に突出する姿が印象的である。ここは、一九六五(昭和四十)年に発生した松代群発地震の震源地の一つともいわれる。
一方の「きみょうざん」は須坂市にあり、長野電鉄須坂駅の南東一二キロのところに位置する。四あず阿まや火山の一峰で、カルデラの北側の外輪山をなしている。
この山には、江戸時代に、国定忠治が上こう野ずけから信濃へ逃げる際、大笹の関を避けてこの山を越えたという言い伝えがある。
この二つの山は、その読み方こそ違うものの、どちらも「奇妙」の由来に関しては同じようで、仏教の用語である「奇妙」、つまり、並外れていることや優れていることを意味している。
「奇妙」というと、現代では「変わっていること」や「不思議なこと」といった、あまりよくない意味に使われるが、これらの山の場合はそうではない。並外れた美しさや、優れていることを伝えたかったのではないだろうか。
堂々とした山の様子が、ほかの山よりも抜きん出ていたという意味あいが、この名前にあるからだ。
いずれにせよ、同県内、しかも同じ長野盆地の東方に同じ名前の山があるというのも、それこそまさに〝奇妙〟なことであろう。