経ヶ峰(きようヶがみね) (三重県津市)
山の頂上に眠る、長野家の家臣が埋めた「大般若経」
三重県津市にある「経ヶ峰」には、いまなお数々の伝説が残っているという。とくに有名なのは、名前の由来ともなっている「般はん若にや経きよう」の話。
かつては安あ濃のうヶ岳と呼ばれていたこの山の山頂には、長野家の家臣であった近藤左金吾という男が埋めた、「大般若経百巻」が眠っているという。このありがたいお経が眠っている山ということで、それ以来、経ヶ峰と呼ばれているのだ。
この山にはいくつかの登山道があるが、仲之郷から登った場合、比ひ佐さ豆ず知ち菅すが原わら神社や草くさ生わ城址、そして高野山創立以前は弘こう法ぼう大だい師し空くう海かいが帰き依えしていた常じよう明みよう寺がある。
また、経ヶ峰口から登っていくと、古くから、霊れい験げんあらたかな地蔵尊として地元の人々の信仰が深い、枇び杷わヶ谷地蔵が見えてくる。
この地蔵尊は、高さ二メートル、幅一・五メートルほどの大岩に刻まれたもので、いまから千百五十年ほど昔、空海がこの地を訪れたときに彫ったものだという伝説がある。