岩手(いわて) (岩手県)
二度と悪さをしないと神様に誓った鬼の手形
東北地方の太平洋側に位置する岩手県には、こんな言い伝えがある。
その昔、盛岡市三ツ割の東顕寺に、注し連め縄なわが張られた三つの大石があった。この石は、岩手山が噴火した際に飛んできたものといわれ、「三ツ石様」と呼ばれて人々の信仰を集め、大切にされていた。
その頃、羅ら刹せつ鬼きという鬼が集落に出てきては、集落の人や旅人たちに悪事をはたらくので、人々は困っていた。
そこで人々が、「どうか鬼をこらしめてください」と三ツ石様に願をかけたところ、たちまち三ツ石の神様が羅刹鬼をこの三つの大石にガッチリと縛り付けてしまった。
すると、羅刹鬼は降参し、「もう二度とこの里には姿を見せない」と誓った。しかし、それは鬼のこと、そう簡単に信用はできないと、三ツ石の神様は「それならば証拠を見せろ」と言った。すると羅刹鬼は、この三ツ石にドスンと自分の手形を付け、南昌山のかなたに逃げ去ったという。
そこで、このあたりの土地は、「岩に手形」ということで、「岩手」と呼ばれるようになったようだ。

