「どうして泣いているのじゃ?」
「兄と取り替えっこした釣り針を失くしちゃったんです。釣り針を返せと言われて、たくさん釣り針を作って返そうとしたんですけど、受け取ってもらえませんでした。もとの釣り針じゃないとダメだと言われて、泣いているんです…」
「じゃあ良い案があるぞ」
シオツチノオジはすぐに竹を隙間なく編んだ小舟を作り、彼を乗せるとこう言ったのです。
「舟を押すから、流れに任せて進みなさい。頃合いの良い潮の流れがあるはずじゃ。そんで潮の行くままに行けば、魚のウロコみたいにキラキラの御殿に着くからの。それがワタツミ(綿津見神)の御殿じゃ。
御殿の門まで行けば、そばの泉に神聖な桂の木がある。お前はその木の上に座っておれ。ワタツミの娘が見つけて上手く取りはからってくれるだろう」
山幸彦が言われれたとおりにすると、シオツチノオジの言ったその通りに御殿がありました。山幸彦はすぐに桂の木に登って座りました。