私が日本語教師になったころ、世の中ははまだ日本語ブームにはなっていなかった。日本語学習者は日本的な物(漫画やアニメではない)にあこがれた少数の人や仕事上やむを得ず学んでいた人がほとんどだった。教師の公的資格もいらなかった。
その後、日本経済が隆盛を極めると、日本式経営を学びたいアジアの国々の人々が押し寄せ、日本語ブームが起きた。日本語学校が次々に創られ、教師が大幅に不足した。学校や教師のレベルも決して高くなかった。その上日本語を学びたいというより経済的に豊かな日本で働きたい人々が大勢いた。その後日本経済が落ち目になるに従って日本語学習者も減ってきた。
そして今、再び日本語ブームが起きている。日本経済は相変わらず低迷しているのに。新しい学習者は日本の漫画やアニメに啓発された若者たちが中心だ。子供の頃「キャプテン翼」のアニメを見てサッカー選手にあこがれたと話す有名選手も大勢いる。ポケモンは世界を席巻した。宮崎駿監督のアニメも大変な人気だ。
先日もフランスからオタクツアーが中野の漫画書店を訪れていた。漫画は「manga」として世界に広まっている。漫画やアニメから日本に興味を持って日本語を学ぶ若者が増えているのだ。
今後日本アニメや漫画がいつまでも世界をリードできるかわからない。日本語ブームがいつまで続くかもわからない。また低迷する時代を迎えるかもしれない。しかし私は少しでも楽しく日本語を学べるような工夫を続けたいと思う。