最近仕事で遅く帰る日が続き、買い物にも行けずに、夕飯を食べずに済ませていること。その生活を続けていたら、周りに「やつれた」と言われたこと。自分ではさらっと言ったつもりだったのに、その次の日には、ひとり暮らしをしている私の家に大量の食品が現れた。部屋を見渡してみると、食品以外にも色々と増えている。
こんなことをしてくれるのは母しかいない。私がいない間に、母が届けにきてくれたのだ。母はとにかく世話好きで、お節介なひと。自分のことよりも、誰かのために何かをしてあげようとするひとである。しかも特徴的なのは、とにかく何でも量が多いことだ。
実家で暮らしているときは、そんな母のことを少しやりすぎだと思っていた。口出しをせずに放っておいてくれるくらいが良い。「なぜこんなに買ってくるのだろう」「足りないと思ったら、好きなだけ自分で買うのだから構わないでほしい」と感じていた。
けれども一人暮らしをしてから、そんな考えが変わった。たまに実家に帰ると、4人家族とは思えない量の料理が並ぶ。テスト前の妹の勉強机の上には、栄養ドリンクがこれまた3ダース。父の書斎のペン立てには、黄色の蛍光ペンが10本以上(父は蛍光ペンといったら黄色しか使わない)。必要以上に用意されているものたちが家のなかに溢れている。
今度の8月に、一人暮らしをして初めての母の誕生日がある。「何か欲しいものある?」と聞いてみても、きっといつもと同じで「何もいらない」と返ってくるに違いない。自分のものには興味がない。母はそういうひとなのだ。
そんな母の誕生日、母の好きなちらし寿司を作ってあげようと思う。もちろん私も、母の真似をして食べきれないくらいたっぷりと。いつもは照れくさくて言えない「ありがとう」の気持ちをたっぷり込めて。