私は不安になった。
そして何度も何度も呼び続けた。
ついには開けてくれという思いを込めてドアを力一杯叩きだした。
手が痛くなっても、私は続けた・・・
涙が目からあふれ出した。
母さんはどこかへ行ってしまったんだ!
ボクを残して・・・・
もう戻ってこない。
そんな気がした。
悲しくって情けなくって仕方がなかった。
もっといい子でいればヨカッタ!
そう後悔した。
そこへ母が帰って来た。
泣いている私を見てビックリした様子だった。
母はただ回覧板を届けに行っていただけだったのだ。
母は私を抱きかかえて家の中へ入った。
何度もごめんごめんと繰り返した。
今から考えたら他愛もない話だ。
だが何故あの時あんなに絶望的な気持ちになったのだろう。
その時の気持ちは今となってはもう分からない。
ただ言えるのは小さい子どもにとってそれくらい母親の存在というものは大きなものだということだ。
あの頃の私にとってきっと母はすべてだったのだ。