幼稚園・小学校・中学校・高校・大学と生まれてから一度も実家を離れたことがありませんでした。そのため、初めての一人暮らしは不安が多く、初めは何度も実家に帰っていました。
私の父は、私が野球をしていた6年もの間、参加していた地域の野球チームのコーチを務めてくれたので、休日でもよく話をしていました。しかし、高校や大学ではお互いに距離が掴めずに会話は多くありませんでした。
一人暮らしを始めて、何度も実家に帰っても父とはあまり会話が多くありませんでした。御飯を食べる時はあまり話さず、食べ終わったらすぐにテレビを見に行く父とはあまり多く会話ができません。
そんなもどかしい距離感を感じながら、どうにか前みたいに楽しく話ができないかと考えていたところ、
「コーラ買っといたぞ」と、何気ない様子で父が言いました。
その時は、ありがとうとお礼を言って喜んでコーラを飲んでしました。
次に帰った時も廊下ですれ違いざまに
「コーラ買っといたぞ」と、言ってくれました。
そして、また別の時も
「コーラ買っといたぞ」と、ぶっきらぼうに言ってくれました。
父の「コーラ買っといたぞ」は何度も何度も実家に帰る度に続きました。私が好きなコーラを、父はいつ帰ってきてもいいように買ってきていたのです。
父もコーラが好きですが、私が帰ってくるまで開けずに冷蔵庫で冷やしていたのです。元々、父はすごく感情表現が苦手なのですが、「いつでも帰ってこい」と背中で語っているように感じました。
野球のコーチを辞めてから寡黙になった父ですが、
「コーラ買っといたぞ」の一言が、今では楽しい会話のきっかけになっています。