そこでまず私は、はじめのうち何回かは普段考えてもみなかったことをちょっとたち止まって考えてみようということをする。「人間とサルの根本的な違いは何か」とか、「どうして神はゴキブリという動物をも創造したのか」とか、「人間は弱い動物なのか、強い動物なのか」などの問題を投げかけてみる。学生は一瞬戸惑うが、やがて思いの感想を始める。こちらは黙って好き勝手なことを言わせておくのだ。
また、クラスを2つに分けてディベート(辩论)をしたりもする。終了後、「どうしてうちのチームは今日押され気味だったのか」とか「次回はもっとうまくやるぞ」などと、説得力のある意見を言いたいという「やる気」が少し見えてきたらしめたものだ。
その後、論理的な文章を書くテクニック、そして、論文の体裁(ていさい)を整えるための作法の学習に入る。「書く」という作業(さぎょう)を通じて、社会を観察したり分析したりながら、知識に裏付けられた考え方、論じ方、表現のしかたを少しでも伸ばしてくれたら、と願っている。
「問い」この先生はなぜ、普段考えても見なかったような問題を投げかけるのか。
1 問題意識を持って身の回りのことを考えさせたいから
2 クラスを活発化させたいから
3 書くだけでなく話す力も伸ばしたいから
4 まずはやさしいテーマで書かせるほうがいいから
「問い」学生たちは一瞬戸惑うことは何か
1 普段考えても見なかった問題を立ち止まって考えさせる
2 難しい問題を投げかけられる
3 問題そのものに対して理解できないから
4 人間は弱い動物なのか、強い動物なのかという問題を論じる
「問い」この文章を通じて筆者は最も言いたいことはどれか
1 日本語文章作法という授業を受ける必要がある
2 日本語文章作法の「書く」という作業を通じて考えて、論じ方、表現の仕方などをアップできる
3 日本語文章作法の「考える」という作業を通じて普段考えてもみなかったことを考えられる
4 日本語文章を書くテクニックをうまく使いこなせる
私は大学で「日本語文章作法」という講座を受け持っている。外国人留学生の必修科目である。内容は、いわゆる小論文の書き方。日本語でどのように説得力のある文章を書くかを学習のメインテーマとしている。小論文を書くためには、問題意識をもって広く身の回りを観察し、自分なりの意見をもつ習慣を身に付けることが必要である。その意見を読み手に納得してもらうために、具体的で客観的な論拠が要求される。