日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 馳星周 » 正文

不夜城(09)

时间: 2018-05-31    进入日语论坛
核心提示:9〈カリビアン〉を出ると、目を血走らせた元成貴のチンピラたちがいやでも目についた。手を出すなといい含められているのだろう
(单词翻译:双击或拖选)
 9
 
 
〈カリビアン〉を出ると、目を血走らせた元成貴のチンピラたちがいやでも目についた。手を出すなといい含められているのだろう、おれを見ると顔を強張らせるが、こんなやつにかまっている場合じゃないとでもいうように血走った目を左右に走らせ、どこへともなく歩いていくやつが多かった。
 風林会館脇の通りに出、大久保病院の跡地に建ったビルに入った。健康プラザ・ハイジアという顔が真っ赤になりそうな名前のビルだ。中にスポーツクラブがあって、おれはそこに毎月なにがしかの金を払っている。富春の出現で混乱していたおれの頭は、さっきの元成貴からの電話ですっかり怖気《おじけ》づいていた。こういうときには身体を目一杯こき使って、頭の中を真っ白にするのがいい。
 ロッカーから水着を取りだして着替えると、プールに向かった。おれは泳げない。肩までつかる深さのプールに入って、両手で水をかき分けながらひたすら歩くのだ。このスポーツクラブに通いはじめたころは他の利用客の笑い声が気になったが、視線を水中の足もとに固定させ、一心に歩いているとすべての雑念が頭から消え失せてしまう。
 一時間ほど歩きつづけると、空腹を感じはじめた。シャワーを浴び、バスローブに着替えてリラクゼイション・ルームでオレンジ・ジュースとハム・サンドをぱくついた。それで、ようやくものを考えることができるようになった。
 まずは〈薬屋〉だ。元成貴とあうことを、楊偉民に伝えておかなければならない。おれになにかがあった場合、手を下したのは元成貴だということを富春に伝えてくれるぐらいのことは、いくら業突くばりなあの爺さんだってやってくれるだろう。
 ロッカールームで着替え、エレベータに乗ろうとしたところで、脇にある公衆電話に気づいた。おれの知るかぎり、このスポーツクラブに北京語を理解する人間はいない。おれは受話器を取り、カードをスリットに押し込んだ。
「はい?」
 黄秀紅《ホヮンシウホン》の濡れたような上海語が電話に出た。
「健一だ。いま、ひとりかい?」
 北京語でいった。
「ええ。こんな時間に、いったいなに?」
 ふたたび受話器から聞こえてきたのは非の打ちどころのない北京語だった。口調の端に警戒の色がうかがえた。
「昨夜は元成貴と一緒だった?」
 おれは明るく訊《たず》ねた。こういうときのために、秀紅の店の女たちには特別に安くブツをおろしているのだ。せいぜい利用させてもらわないと割にあわない。
「あなたにどういう関係があるの?」
「元成貴に昼飯を食おうって誘われてるんだ」
 喉の奥で、ああ、という声が漏れるのが聞こえた。
「呉富春のことね。あの人、ずいぶんカッカしてたわよ。逃げた方がいいんじゃない」
「おれもそうしたいんだけどね、歌舞伎町以外で食っていける自信がないんだ」
 秀紅は少女のようにけらけらと喉を震わせて笑った。彼女のそんな笑い声を聞くのは初めてだった。おれたちはいつだって薄ぐらい店の中で顔をあわせている。
「おれのこと、なにかいってたかい?」
「呉富春の居場所を絶対に吐かせてやるって……そうね、楊偉民には話をつけてあるから多少痛めつけても大丈夫だっていってたような気がするわ」
「くそ!!」
 電話の側にあったゴミ箱。思いきり蹴りつけた。ゴミ箱は派手な音を立てて床に転がった。ちょうどエレベータから出てきた中年男が悪魔に出くわしたとでもいいたげな顔でおれを見、慌ててエレベータのドアを閉めた。
 楊偉民のやりそうなことだ。恐らく、おれが殺されることはない、と踏んだのだろう。おれを生贄《いけにえ》に差しだして、元成貴に貸しを作っておく腹づもりなのだ。
「だいじょうぶ?」
 秀紅がいった。おれを気遣っているのではなく、ゴミ箱のたてた音に驚いたような声。
「あ……ああ」
 おれは煙草を取りだし、火をつけて煙を深く吸いこんだ。
「逃げなさい、健一。元成貴を怒らせて、楊偉民にまでそっぽを向かれたら、歌舞伎町にあなたのいる場所はないわよ」
「富春とおれとはもう無関係なんだ」
 自分でも声が上ずっているのがわかった。それでも、いわずにいられなかった。
「あんたから元成貴に説明してやってくれ」
「元成貴は信じないわよ、そんなこと」
 突き放すような声だった。冷ややかなその声は、おれにいくぷん冷静さを取り戻させてくれた。
「そうだな……自分でなんとかするさ」
「殺されはしないと思うけど。怪我が治ったら、店に来てちょうだい。わたしのおごりで飲ませてあげるわ」
 電話が切れた。おれは静かに受話器を戻し、秀紅の言葉に思考を巡らせた。最悪の展開。だが、どこかに道はあるはずだ。細い、蜘蛛《くも》の糸のように頼りない道だとしても。おれはいつだってそんな道を見つけては生き延びてきた。今度だってなんとかなるはずだ。
 おれは煙草を踏み潰し、エレベータの下降ボタンを押した。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%