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ノーウッドの土建屋(8)_ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: 前にも書いたように、二階には空いた寝室が三つ並んだ広い廊下があった。ホームズはこの廊下の端まで皆を引き連れて行った。巡
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 前にも書いたように、二階には空いた寝室が三つ並んだ広い廊下があった。ホームズは

この廊下の端まで皆を引き連れて行った。巡査たちはニヤニヤしている。レストレイドは

顔に不審と期待と嘲笑 ちょうしょう を交錯 こうさく させながら、ホームズを見つめている。ホームズ

は、手品を演ずる手品師よろしく皆の前に立った。

「レストレイド君、どなたか巡査の方に、水をバケツに二杯ばかり汲んで来て頂いて下さ

い。わらは壁から離してこの辺の床の上に置いて下さい。さて、どうやら用意はできまし

た」

 レストレイドの顔が、かっと赤くなってきた。

「われわれをからかうつもりですか、シャーロックホームズさん。何かご存じなら、こ

んな馬鹿な真似はやめて、言ってしまったらどうです」

「レストレイド君、これにはねえ、ちゃんと素敵な理由があるんですよ。先ほどは君に旗

色が良くって、少しばかり僕をからかったでしょうが。だから今度は君が僕の派手にもっ

たいぶるのを辛抱する番です。ワトスン君、その窓をあけて、それからマッチでわら束に

火をつけてくれたまえ」

 言われた通りにすると、もくもくと上る煙が風に吹かれて、廊下を渦巻きなから流れて

いき、わら束はパチパチとはぜながら燃え上がった。

「さあ、レストレイド君、証人を見つけて差し上げられるかどうか、ちょっとやってみま

しょう。皆さんで、『火事だ』と叫んで頂けませんか。いいですか、一、二、の三……」

「火事だあッ!」一同がわめいた。

「どうもありがとう。じゃ、もう一度やって下さい」

「火事だあッ!」

「もう一度だけ、すみませんがね、みんなで」

「火事だあッ!」叫び声はノーウッドの中にとどろきわたったに違いない。

 この声が消えるか消えぬうちに、驚くべきことが起こった。廊下の向うの端の、一枚の

壁と見えたところに、ドアがサッと開いたのだ。そして、まるで兎が穴から飛び出すよう

に、小柄な、しなびた男がおどり出てきたのだ。

「やったぞ」ホームズが静かに言った。

「ワトスン君、わらに水を一杯かけてくれたまえ。それでいいだろう。レストレイド君、

失踪中の重要証人ジョーナスオウルデイカー氏を紹介いたします」

 警部は事の意外に呆然として闖入者 ちんにゅうしゃ を見つめるばかり。男のほうは急に廊下の明

るみに出たので目をパチパチさせながら、皆と、いぶるわらとを見くらべるばかりだっ

た。いやらしい顔だった……ずる賢い、よこしまな、悪意にみちた顔、薄灰色のうろんな

眼、そして白い眉毛。

「どうしたんだ、おい!」レストレイドがとうとう口を開いた。「いままでお前は何をし

ていたんだ、ええ?」

 オウルデイカーは、真赤に怒った警部の憤然たる顔にあって尻ごみしながら、窮屈に

笑った。

「人に害はしませんよ」

「害はしない? 手をかえ品をかえて無実の青年を絞首台に追いやったじゃないか。この

方がいなければ、お前は成功しなかったとも限らんぞ」

 哀れな男は、しくしくやりはじめた。

「ほんの冗談のつもりでやったんです、本当です」

「へへえ、冗談ですかい。冗談でも、お前のほうで笑うわけにはいかないぞ。下へ連れて

行って、見張っていてくれたまえ」

 老人が巡査に引っ立てられて行くと、「ホームズさん、部下の手前があったもんですか

ら。しかし、ワトスンさんの前ですが、これはホームズさんのお手柄の中でも、最も明敏

なる例だと認めてはばかりません。無実の人間の生命をお救いになって、重大な醜聞 しゅうぶん

を未然に防止して下さいました。私は部内の評判をおとすところでした」

 ホームズはほほえみながら、レストレイドの肩を叩いた。

「レストレイド君、おとすどころか、名声がぐんと増しますよ。あの書きかけの報告書

を、ほんの二、三か所訂正すれば、みんなレストレイド警部の腕を鈍らせるのがどんなに

むずかしいことか、わかるようになるでしょう」

「では、またお名前を出したくないとおっしゃるんですね」

「そうですよ。僕には仕事そのものが報酬です。いつかはこの熱心な記録作家が、原稿用

紙をひろげるのを許すことになるでしょうが、それまで僕の名声は、お預けです。……

ね、ワトスン君。ところであの鼠 ねずみ はどんなところに隠れていたのか、見てみよう」

 廊下のはずれから六フィートばかりのところに、木舞 こまい としっくいでできた仕切り壁が

あって、目につかぬように巧みにドアが切ってあった。中は、ひさしのすきまから光が

入ってくる。家具が二つ三つに、食物の貯えと水が置いてあり、本や新聞もたくさんあっ

た。

「土建屋の強みだね」出て来ながらホームズが言った。「誰にも秘密を明かさずに自分の

隠れ場所をこしらえることができた……無論あの家政婦は別だがね。レストレイド君、早

いところあの女も獲物に加えておきなさい」

「お言葉に従います。しかしまた、どうしてここがおわかりでしたか」

「僕はあの男が必ず家の中に隠れていると決めてかかったんです。この廊下の長さを計っ

ていたら、下の廊下と比べて六フィートばかり短いのに気がつきました。もう居場所はわ

かったようなものです。で、あの男は火事の声を聞いて落ち着いていられる神経の持ち主

じゃあるまいと思いましてね。むろん、入って行ってつかまえてもよかったんですけれど

も、自分で出て来させたほうが面白かろうと思って。それに、レストレイド君、朝のうち

は、君もちょっとしたお芝居で僕をからかったじゃないですか」

「いやあ、ではこれでおあいこというところですな。でも、一体どういうわけで、彼が家

の中にいることがおわかりだったんです」

「指紋ですよ。君はあれを決定的だと言いましたね。ところが、全然別の意味で決定的

だったんですよ。昨日僕が調べたときには、たしかに無かった。僕は、ご承知でもあろう

けれど、細かいところに注意を払います。それで、昨日壁を調べて壁には何もないと確か

めておきました。だから指紋はゆうべつけたものですね」

「だって、どうやってつけます」

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