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プライアリ学院(8)_ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:「僕は覚えているよ。たしかにそうだったよ。暇があったら、もう一度行って確かめてもいい。あそこで結論が引き出せなかったなん
(单词翻译:双击或拖选)

「僕は覚えているよ。たしかにそうだったよ。暇があったら、もう一度行って確かめても

いい。あそこで結論が引き出せなかったなんて、何という間抜けだ!」

「どんな結論だい?」

「並足で歩いたり、早足になったり、疾駆 ギャロップ したりできるのは珍しい牛だということだ

けさ。おいおい、田舎の宿のおやじの頭では、こんなごまかしはできっこないよ。いま

ちょうどいい。鍛冶場には小僧だけしかいないようだ。抜け出して、できるだけ調べてみ

よう」

 荒れ果てた馬小屋には、毛の粗い、手入れの悪い馬が二頭いた。その一頭の後脚を持ち

上げてみて、ホームズが声高に笑った。

「なるほど、古い蹄鉄 ていてつ を新しく打ちかえたんだな。古い蹄鉄に新しい釘か! これでこ

の事件も傑作の部に入るぞ。あっちへ行って、鍛冶場を見てみよう」

 小僧は、われわれには無関心といったふうに仕事を続けていた。ホームズの眼は床の上

に散らかっている鉄材や木材の上をすばやく動きまわった。と、そのとき、背後で足音が

した……おやじである。太い眉 まゆ と野蛮な眼玉をくっつけるようにして、われわれをにら

んだ。浅黒い顔は怒りにひきつっている。

 頭に金具をつけた短い杖 つえ を手にして、おやじがものすごい剣幕 けんまく で迫ってきたので、

ポケットのピストルを上から押えてみて、やっと大丈大だと思ったくらいである。

「このこそ泥め! おめえたち、何してるんだっ!」

「おやおや、ルーベンヘイズさん」ホームズは落ち着き払っていた。「なにか悪いこと

をさぐられて怒ってるみたいだよ」

 おやじはぐっとこらえ、気味の悪い口もとをゆるめて作り笑いをしたが、その顔のほう

が、しかめっ面より怖いくらいだった。

「いや、まあ、おらの鍛冶場を見たけりゃ、いくらでも見るがええ。だがね旦那がた、俺

あ、断りもしねえでひとの家の中をかきまわすご仁 じん はあんまり好きでねえよ。だから、

勘定をすませたら、なるべく早く出ていってもらったほうが、嬉しいだがね」

「いいよ、ヘイズさん。なにも悪気でやったわけじゃないんだ」ホームズが答えた。

「ちょっと馬を見せてもらっただけだ。でも僕たち、やっぱり歩いてゆくよ。それほど遠

くもなさそうだからね……」

「屋敷の入口まで二マイルたらずで、あっちの左側の道よ」

 彼はわれわれが庭を出ていくまで、不機嫌な目つきでじっと見つめていた。

 街道へ出ていくらも歩かなかった。角を曲がって、おやじから見えなくなると、すぐ

ホームズが立ち止った。

「子供の遊びじゃないが、宿に着いたとき、僕らは《近い、近い》だったが、こうして歩

いてくるにつれて、一歩ずつ《遠い、遠い》になるんだよ。どっこい、こいつぁ去るに及

ばずだ」とホームズ。

「あのルーベンヘイズというおやじが、何もかも知ってると思うよ。見るからに悪党

だ」

「うん、君もそう感じたかね、ええ? 馬あって、鍛冶場ありさ。そうだ、たしかにあの

《闘鶏館》は面白いところだよ。見つからんように、もう一度行ってみよう」

 背後には、ゆるい傾斜の丘が続き、灰色の石灰岩が点々と見える。街道を曲がると、二

人は丘へ道をとった。ふと、ホールダネス屋敷のほうを見ると、自転車が一台街道を疾走

してくる。

「ワトスン、しゃがむんだッ!」

 ホームズはぐいと私の肩を抑えつけた。隠れたと思うまもなく、男を乗せた自転車は目

の前を走りすぎた。捲 きおこる砂煙の中に、青白い、興奮した男の顔を見た。口をあけ、

物々しげに前方を見すえて、顔一面すべて恐怖という表情である。何だか昨夜会ったばか

りの粋 いき なジェイムズワイルダーの漫画みたいに思えたが……。

「公爵の秘書だ。さあ、ワトスン君、何をやるのか見に行こう」

 岩づたいに四、五分、虫みたいに這 ってゆくと、宿屋の戸口が見えてきた。ワイルダー

の自転車が戸口の脇に立てかけてある。家のまわりりには人の動く気配はなく、窓にも人

の姿がない。陽 はホールダネス屋敷の高い塔のうしろに浮かび、たそがれが静かに迫って

きた。その薄闇のなか、宿屋の馬小屋の引き窓に馬車の側燈が二つついた。するとやがて

ひづめの音がして、馬車は街道に引き出された。それはそのままチェスタフィールド目ざ

してものすごい速さで疾走していった。

「あれ、何だと思う?」ホームズがささやいた。

「追われてるみたいだね」

「馬車には男がひとりのようだが、ワイルダーじゃないね、ほら、ご当人は戸口に立って

るよ」

 戸口から闇の中に四角の黄色い光が流れ出た。その中に秘書の黒い影が立っている。顔

を突き出して闇のなかをうかがっているのは、誰かを待っている様子だ。果たして足音が

聞こえ、第二の人影が現われたが、ちらっと光を浴びただけで、ドアは閉まった。ふたた

び外は暗闇になった。ものの五分もすると、二階の一室に灯がついた。

「《闘鶏館》には少々、不似合いの客らしいが……」とホームズ。

「飲むだけだったら、酒場は反対側だものね」

「そうだよ。あの連中はいわゆる特別客というやつだろうね。ところであのワイルダー、

こんな時間にあの宿で何をしてるんだろう? 彼に会いに来た男はいったい誰か? さ

あ、ワトスン君、危険をおかしてでも、もっとよく調べてみる必要があるよ」

 われわれはともに街道へおりて、宿屋の戸口まで這っていった。自転車はまだ壁に立て

かけられたままである。ホームズはマッチをすってうしろの車輪をてらしていたが、綴り

のあるダンロップだったので、嬉しそうに、くすくす笑った。頭の上には灯のついた窓が

ある。

「のぞいて見なけりゃならんがね。ワトスン君、ひとつ、壁につかまって馬になってくれ

ないかなあ、あとは僕がうまくやるよ」

 ホームズは私の肩にのったかと思うと、すぐ降りた。

「さあ、早く! 今日は朝からずいぶん働いたことだし、集められる限り集めたと思う

よ。学校までだいぶ遠いから、急いだほうがいいね」

 荒地を通って帰る途中、ホームズはほとんど口をきかなかった。学校に着いても門を入

らず、電報を二、三通打ってくるといって、マックルトン駅のほうへ歩いていった。

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