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踊り人形(5)

时间: 2024-02-15    进入日语论坛
核心提示:「おやおや、ホームズさん、犯行は今朝の三時に行なわれたばかりですよ。それをロンドンでお聞きになって、私と同時に現場にお着
(单词翻译:双击或拖选)

「おやおや、ホームズさん、犯行は今朝の三時に行なわれたばかりですよ。それをロンド

ンでお聞きになって、私と同時に現場にお着きになるとは、驚き入りました」

「予期していたもんですからね。未然に防止するつもりでやって来たんですが」

「それじゃ、さだめしわれわれが知らない重要な証拠をお持ちなんでしょうね。なにし

ろ、あの夫婦はめっぽう仲が良かったそうですからな」

「持って来た証拠品は踊り人形だけです。詳しいことは後ほどお話しいたします。それま

では、もうこの悲劇は防止することができないわけですから、正邪を明らかにするため

に、私の知っているだけのことを、せいぜいお役に立てようと思っているところです。あ

なたの調査に参加させて頂けますか、それとも私のほうはそちらと別にいたしますか?」

「ホームズさん、あなたとご一緒に働くのは光栄の至りです」警部は真剣に言った。

「そうですか、では余計なことでぐずぐずしていないで、さっそく証人調べや邸内の捜査

にかかりましょう」

 マーティン警部は物わかりの良い男で、ホームズに自分流に仕事をさせておき、自分は

その結果を念入りにノートするだけで満足していた。

 ちょうどそこへ、土地の外科医という白髪の老人が、エルシー夫人の部屋から下りてき

て、夫人の傷は重いが生命に別条はあるまいと報告した。弾は前額部を貫通しており、意

識を回復するにはかなり時間がかかるだろうということである。誰かに射たれたのか、そ

れとも自分で射ったのかという問いには、はっきりした返事ができないと言った。弾がご

く近くで発射されたことだけは確かだった。現場にピストルは一挺しか落ちておらず、薬

やっきょう は二発分だけ空になっていた。キュービット氏のほうは、心臓を打ち抜かれてい

た。彼が夫人を射って、それから自分を射ったのか、それとも夫人が手を下したのか、ど

ちらの考えも成り立つわけだった。ピストルは、倒れたふたりの中間に落ちていたのであ

る。

「キュービット氏も動かしましたか?」

「いや、動かしたのは夫人だけです。息のある怪我人を床の上に放っておくわけにはゆき

ませんからね」

「何時ごろおいでになりましたか」

「四時でしたね」

「ほかにどなたか来ておいでですか」

「ええ、警察からひとり」

「何にも手をつけてはいらっしゃらないですね」

「ええ」

「いや、よく慎重にやって下さいました。ところで、お迎えに上がったのは誰でした

か?」

「女中さんの、ソーンダズという人です」

「その女中さんが急を知らせたんですか?」

「女中さんとコックのキング夫人だそうです」

「今どこにいるんでしょうね」

「台所でしょう、たしか」

「じゃ、さっそくその人たちの話を聞きましょう」

 槲 かしわ の腰板を張った、窓の高い旧式な玄関の広間が審問室というわけだった。ホームズ

は大きな昔風の椅子に腰をおろして、その面 おも やつれした顔に仮借 かしゃく のない眼をきらめか

せた。それを見て、私は彼が、死なせてしまった依頼人の仇をとるまで、この事件と命が

けで取り組む肚 はら をきめているのがわかった。

 彼のほかは、小粋 こいき なマーティン警部、胡麻塩 ごましお の頬髯 ほおひげ を生やした田舎医師、私、

それにもっさりとした村の巡査という奇妙なとりあわせだった。

 ふたりの女は至極 しごく はっきりと話して聞かせた。ふたりとも眠っていたが、銃声で目が

さめた。一分ばかりしてまた一発聞こえた。ふたりの部屋は隣り合わせになって、キング

夫人のほうがソーンダズの部屋にかけこんだ。二人して階段をおりた。書斎のドアは開い

ていて、テーブルにローソクがともっていた。主人のキュービット氏は部屋の真ん中にう

つぶせに転がっていた。息はなかった。窓際に夫人がうずくまって、頭を壁にもたせてい

た。ひどい傷で、顔が半面血だらけだった。苦しく息づいていたが、口はきけなかった。

 書斎にも廊下にも煙がたちこめて、硝煙 しょうえん の臭いがしていた。窓はたしかに閉まって

内側から鍵がかかっていた。女中もコックもその点は絶対に自信があるようだった。ふた

りは直ちに医者と警官を呼びに行った。それから馬丁と厩番 うまやばん に手伝わせて傷ついた夫

人を寝室に移した。主人のベッドも夫人のベッドも寝た跡があった。夫人は普段の着物を

着ていたが、主人は寝巻の上に化粧着をはおっていた。書斎の中は何も動かさなかった。

二人の知っている限りでは、主人夫妻が喧嘩したことは一度もなかった。二人とも常々、

たいそうむつまじい夫婦だと思っていた。

 女中とコックの証言の要点は、あらまし以上の通りである。なおマーティン警部の質問

に答えて、たしかに入口はみな内側から鍵がかかっていたから、誰かが家の中から逃げ出

したことは考えられないと言った。またホームズに問われて、硝煙の臭いは、ふたりとも

自分たちの部屋をとび出したときから気がついていたと答えた。

「この事実によく気をつけて考慮において下さい」ホームズは本職警部に向かって言っ

た。「それではこれから書斎を詳細に調べてみることにしましょう」

 書斎は小さな部屋だった。三方の壁際に本棚があって、庭を見下すありきたりの窓に向

かって書き物机があった。まず目についたのは不運な地主の遺骸 なきがら だった。彼の大きな身

体は部屋の中ほどに長くのびていた。乱雑に着込んだ化粧着を見ると、彼があわてて目を

さましたのがよくわかった。弾は彼の前面から射たれたもので、心臓を貫いたまま体内に

残っていた。きっと即死で、苦痛はなかったに違いなかった。化粧着にも火薬のガスのあ

とはついていなかった。土地の外科医の話では、夫人のほうは、手にはないが顔にそのあ

とがあったという。

「手についていないのは何の証拠にもなりません。ついていればたいへんな証拠ですが。

薬莢 やっきょう の具合が悪くてガスが後ろに吹き出さない限り、何発射ってもあとが残らないん

ですよ。ところで、キュービット氏の死体はもう片づけていいでしょう。先生、夫人を傷

つけた弾はまだ摘出していらっしゃいませんね」

「それには大手術が必要でしてな。しかしピストルにはまだ四発残っていますよ。すると

発射したのが二発ですが、傷も二か所だから、どっちも説明がついてるじゃないですか」

「そうお思いになるかも知れませんがね。しかし先生は、窓の縁にあんなにはっきり命中

している弾の説明はおつけになれないでしょう」

 ホームズは不意に向きなおって、細長い指で、窓枠 まどわく の下から一インチばかりのところ

を射ち抜いた穴を示した。

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