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ブラック・ピーター殺し(2)

时间: 2024-02-15    进入日语论坛
核心提示:「これに控えてありますから、殺されたピーター・ケアリ船長の経歴を説明します。一八四五年生まれですから今年五十五歳ですね。
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「これに控えてありますから、殺されたピーターケアリ船長の経歴を説明します。一八

四五年生まれですから……今年五十五歳ですね。なかなか勇敢な、しかも成功した、アザ

ラシおよび捕鯨の船乗りです。一八八三年、ダンディー港の《海の一角獣 シーユニコン 》という

アザラシ船の船長になっています。それから相次いでの航海で成績をあげ、翌八四年、隠

退しました。隠退してからは、数年間旅行を続け、最初にサセックス州のフォレスト

ウに近いウッドマンズリーという小さい土地を買って住まっていました。ここで六年

間、一週間前に死ぬまで暮らしていました。

 この男の性格には、まったく奇怪といってよいようなところがありました。ふだんは口

数の少ない陰気な性質の厳格なピューリタンでした。家族は妻と二十歳になる娘と女中が

二人で、この女中はしょっちゅう変わっているんです。陽気だなんていえる家庭ではな

し、ときとしてまったく我慢できないことがあったそうです。時々、大酒を飲んで、発作

ほっさ 的に悪魔さながらの乱行に及んだといいます。そうなると、真夜中に女房や娘を家から

叩き出し、庭じゅう追いまわしては鞭 むち でうつので、屋敷の外の村人は、みんなその悲鳴

に目を覚ましたということです。

 一度、土地の老牧師に暴行を加えたかどで召喚されています。牧師は彼の行ないに忠告

を与えに行ったんですが。まあ要するに、めったにいない危険な人物だと言えます。しか

も船長時代から、そうだったという話です。同業者の間では黒 ブラック ピーターという名で知ら

れていますが、その名は、彼の顔や顎鬚 あごひげ が黒いというばかりでなく、まわりの者から怖

れられていたその気質にもよるのです。近所の誰からも嫌われ、敬遠されていたことはい

うまでもありませんが、今度の惨事に際して、悔 くや みをのべる者ひとりない始末です。

 ホームズさん、あなたはあの男の《船室》についての検死官の所見をお読みになったで

しょうが、こちらの方はまだご存じないんでしょう? 彼は自分で母屋から二、三百ヤー

ド離れた所に、離れ家を木造で建て、毎晩ここで寝泊りしていました。彼はいつもここを

《船室 キャビン 》と呼んでいましたが……これは奥行き十六フィート、幅十フィートの小屋で

す、鍵はいつもポケットに入れ、寝台も自分で整えるし、掃除もやるし、誰にもこの小屋

の敷居をまたぐことを許さなかったのです。小屋の両側にひとつずつ窓がありますが、

カーテンを閉めたきりで、ついぞ開けたことがありません。その窓のひとつが街道のほう

に向いていて、夜になってそこに灯 あかり がつくと、村人たちはその窓をさして、黒 ブラック ピー

ターはあの中で何してるんだろうと噂 うわさ したものです。この窓ですよ、ホームズさん、審

問のとき数少ない確証のひとつを与えてくれたものは。

 覚えていられるでしょうが、事件の二日前、石工 いしく のスレイターという男が、フォレス

ロウからの帰り道、午前一時頃ここを通りかかり、木々の間に、窓から四角い明かり

がもれているのを見て、ふと立ち止ったのです。カーテンの上にはっきりと男の横顔が

映っていたが、それはよく知っているピーターケアリの影ではなかったと断言していま

す。その形にも顎鬚 あごひげ はあったが、船長のやつとは全然違って、短く、前方に突き出たも

のだと言っています。しかし、この石工は、その前に二時間も酒場にいた上、窓から街路

までの距離もだいぶあります。またこれは月曜のことで、事件が起こったのは水曜なんで

すから。

 火曜日、ピーターケアリはまたもや険悪で、泥酔し、まるで野獣のように荒れまわっ

ていたようです。家の周りをうろつき、家の者はその声を聞いて逃げていました。夜おそ

く彼は小屋へ帰って行きましたが、二時頃になって、窓を開けてやすんでいた娘が小屋の

方向で怖 おそ ろしいうめき声がするのを聞いたと言います。でも、酒を飲んだとき、どなっ

たり、わめいたりするのは珍しいことではなし、気にもかけなかったようです。朝の七時

に起きた女中のひとりが、小屋のドアが開けっ放しになっているのに気づきましたが、何

しろ怖ろしい男なので、昼頃まで誰も見に行かなかったのです。でもやっと思いきって、

その開いてる扉からのぞきこむと、あのありさまです。顔を真っ青にして、村へ知らせに

来ました。一時間たらずで現場に到着して調査にのり出しました。

 ホームズさん、僕も神経は図太いほうでしょう。それが今度ばかりは、この小屋に頭を

突っ込んで、ぞっとしましたよ。金蝿 きんばえ 、青蝿 あおばえ がわんわんいて、まるでオルガンの音

みたいです。床も壁も、まるで屠殺場同然。ケアリはこれを船室と呼んでいましたが、な

るほどそうです。そこに入ると、まるで船室にいるような気になります。一方には寝棚が

ある、船員用の大箱、地図、海図、シーユニコン号の絵。棚の上には航海日誌がひとな

らびしていて、船長室にありそうなものなら、なんでも揃 そろ えてあるんです。その中央に

船長自身が、永遠に地獄に堕ちて責め苦にあう人のように、顔をねじ曲げ、長い斑 ぶち の顎

鬚を苦悶にうち立てて死んでるんです。その幅ひろい胸のまん中を鋼鉄の銛 もり が貫いて、

なんと、うしろの羽目板に深く突きささっているではありませんか。まるでカードの上に

ピンで留められた甲虫 かぶとむし みたいです。もちろん死んでいました。断末魔の悲鳴ととも

に、壁に刺し留められたままだったんです。

 僕はあなたの方法を覚えこんで、実行してみました。まずいっさいのものに手をつける

ことを許さず、屋外から始めて床まで入念に調べましたが、足跡が残ってないんです」

「一つも目につかなかったということだね」

「そうなんです。ほんとに一つもありませんでした」

「ホプキンズ君、僕も犯罪を数多く見てきたが、足のない犯人なんて、お目にかかったこ

とはないよ。犯人がちゃんと二本足で立ってた以上、科学的な調査をすれば、どこか凹 へこ

んだ所とか、かすれた所とか、物の置き場所がちょっと違っているとか、何かわかるはず

だがね。その血だらけの部屋に、捜査の手掛りになる痕跡がひとつもないなんて、とても

信じられないね。でも書類を見てみても、君が見落さなかったものもいくつかあったよう

だね」

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