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金縁の鼻眼鏡(1)

时间: 2024-02-20    进入日语论坛
核心提示:金縁 きんぶち の鼻眼鏡 一八九四年という年にわれわれがやった仕事を記録してある三冊の厖大 ぼうだい な書類に目を通してみる
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金縁 きんぶち の鼻眼鏡

 一八九四年という年にわれわれがやった仕事を記録してある三冊の厖大 ぼうだい な書類に目を

通してみると、このたくさんな材料から、いったいどの事件を選べば最も興味があるか、

また私の友の世に知られたあの特異な才能を示すことができるか、私は少なからず困惑を

覚えるのである。ページをめくるにつれて、いやらしい赤蛭 あかひる 事件や、クロスビーという

銀行家の惨死事件の記録が出てくる。さらにアドルトンの悲劇やイギリス古代の塚 つか にま

つわる奇妙な事件。有名なスミス・モーティマーの相続事件もこの年だし、ブールヴァー

ルの暗殺者ユレーを追ってつかまえたのもそうだった。……この事件ではホームズはフラ

ンス大統領自筆の感謝状をもらい、レジオン・ド・ヌールを受ける名誉を得ている。これ

らの事件のどれでも充分に一篇の物語になるだろう。しかし、私はヨックスリーの古荘の

話ほど奇怪で興味のあるものは他にあるまいと思う。

 この事件では、若きウィロビー・スミスが哀れな死を遂げたばかりか、犯罪の原因に奇

妙な光を注ぎかける進展が相次いで起こったからである。

 十一月も終ろうとしている、あるひどい嵐の夜のことだった。ホームズと私はその夕

方、黙りこくったまま坐っていた。彼は度の強いレンズで、羊皮紙の薄れた元の字を判読

しようと一生懸命だし、私は最近の外科手術についての論文を読みふけっていた。戸外で

はベイカー街を風が吹きまくり、雨ははげしく窓に降りそそいでいる。この十マイル四方

もある人間のつくった街の真ん中にいながら、大自然の鉄のごとき掌握を感じ、巨大な自

然の力にかかっては大ロンドン市ももぐら塚 づか 同然で、大地のちょっとした点にしかすぎ

ない、などと私たちが今さら思うのは奇妙なことだった。

 私は窓に歩みよって荒涼たる街を眺めた。ときおり、ひどくぬかった道や、雨にぬれて

輝やく舗道をランプの光が照らしていた。馬車が一台、オックスフォード街のはずれから

水しぶきをあげて来た。

「ねえ、ワトスン君、今夜は出かけなくてよかったじゃないか」ホームズはレンズをわき

に置き、羊皮紙を巻きながら言った。

「じっと坐っているにしては、ちょっとした仕事をしたよ。でも目が疲れるね。しかし僕

の発見した限りでは、十五世紀後半から書かれているお寺の記録ほど面白いものはない

な。あれ! あれ! あれ! ありゃなんだい?」

 たけり狂う風の中から馬の蹄 ひづめ のパカパカという音と、ふち石にきしる馬車の音が聞こ

えてきた。私が先刻みた馬車がわれわれの家の前で止った。

「何しに来たんだろう?」一人の男が降りるのを見て、私は大声で言った。

「用事さ、僕らに用があるんだ。そしてワトスン君、僕らのほうも外套 がいとう だの襟巻きだの

雨靴だの、それに天候と戦うために人間が発明したいろんなものに用ができたんだよ。

おっと待った。馬車が帰って行ったぞ! まだ望みはあるぞ。もし僕らを連れて行く気な

ら、とめておくはずだからな。君、すまないがちょっと階下へ行って玄関をあけてやって

くれないか。善良な人間ならもうとっくに寝ているはずだからね」

 広間のランプの光が深夜の客におちると、私は彼が誰であるかすぐわかった。それは将

来を嘱目 しょくもく されているスタンリー・ホプキンズ探偵で、ホームズはこれまで何度かにわ

たって彼に助力してやっていた。

「ホームズさん、いますか」彼はせっかちに言った。

「まあ上がれよ、君」上からホームズの声がした。「こんなひどい晩にはあまり面倒をか

けないでほしいもんだね」

 探偵は階段をのぼった。ランプの光が彼のぬれた防水具に光った。私がそれに手をかし

て脱がせている間に、ホームズは炉の火をかきたてた。

「さてと、ホプキンズ君、近寄って爪先を暖めたまえ」彼は言った。

「葉巻もここにあるし、先生がレモン入りの熱いやつを作ってくれるよ。こんな晩にはよ

く効く楽だ。ところでこんなひどい晩にやって来たっていうには重大事でもあるんだろう

ね」

「もちろんですよ、ホームズさん。今日の午後はまったく忙しかったですよ。夕刊の最終

版でヨックスリー事件のことを何かお読みになりましたか」

「いや、今日は十五世紀以降のことは何も見てないんだ」

「いやね、ちっぽけな記事で、しかも間違いだらけなんだから見る必要もありませんが

ね。もっとも私は足が地につかぬほどでしたよ。ケント州の南でチャタムから七マイル、

鉄道から三マイルばかり引っ込んだところです。三時十五分に電報で呼ばれてヨックス

リーの古荘についたのが五時、一応捜査を済まして終列車でチャリング・クロス駅に帰っ

て来て、馬車でまっすぐ伺ったというわけです」

「というと、その事件は君には手におえないというわけかね」

「全然、頭もシッポもつかめないんですよ。私の感じじゃあ、今まで扱った事件の中では

難物ですね。ところが一見したところは間違えようもないくらい単純なんです。でもね、

ホームズさん、動機がないんですよ。それがいちばん頭痛の種なんですが……動機が全然

わからない。ひとりの男が死んでいる……それは疑いもない事実です……しかし私の調べ

た限りでは、彼に敵意を持つやつは一人もいないんです」

 ホームズは葉巻をくわえて椅子にもたれた。

「まあ、内容をきかせてくれたまえ」彼は言った。

「事実はかなりはっきりわかりました」ホプキンズは言った。

「私が今知りたいのは、その事実がいったい何を意味しているか、なんです。私の調べた

範囲では、話というのはこうなんです。何年か昔にこの田舎屋敷、ヨックスリー古荘に

コーラム教授という老人が住みつきました。彼は病弱で一日の半分は床にふしており、あ

とはステッキをついて家のまわりをぶらぶらするか、車椅子を庭男に押させて庭を散歩す

るくらいです。近所の人で彼を訪ねた人は少ないのですが、みな彼によい感じを持ってい

ますし、あのあたりじゃ、彼は学識のある人だということで聞こえています。家事をきり

もりしているのは、年寄りの家政婦マーカー夫人と女中のスーザン・タールトン。この二

人は教授が住みついて以来います。ともになかなか良い気質の女です。

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