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スリー・クォーターの失踪(5)_ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:「それじゃこの受領証を説明して下さいませんか。先月ゴドフリー・スターントン君からケンブリッジのレズリー・アームストロング
(单词翻译:双击或拖选)

「それじゃこの受領証を説明して下さいませんか。先月ゴドフリー・スターントン君から

ケンブリッジのレズリー・アームストロング博士に十三ギニー払ったという、これはあな

たの受領証です。ゴドフリー君の机の上の書類にあったんですがね」

 博士は怒りに満面朱 しゅ を注いだ。

「そんなことまであなたに説明しなければならぬ理由があるとは思えません。ホームズさ

ん」

 ホームズは受領証を再び手帳の間にしまいこんだ。

「公の場所で説明されたいというなら、いずれそのときがくるでしょう。先ほども申しま

したように、ほかの人なら公表せざるを得ないことでも、私は隠すことができるのです。

私に全幅の信頼をよせていただいたほうが賢明かと存じますが」

「私は何も知らんのだ」

「じゃ、ロンドンからスターントン君が何か言ってきましたか」

「そんなことも、もちろんない」

「おや、おや! するともういちど電報局へ逆戻りかな!」ホームズはげっそりしたよう

に溜息 ためいき をついた。

「昨日の夕方六時十五分にゴドフリー・スターントン君は、ロンドンからあなたあてに至

急電報を打っているのですがねえ。この電報と彼の失踪は明らかに関連があるのだが、あ

なたは受け取っておらんとおっしゃる。これはけしからん話だ。私はここの局へ行って説

明を求めてきます」

 レズリー・アームストロング博士は机の向こうにすっくと立ち上がった。顔は怒りで真

赤だった。

「この家から、どうかお引き取りいただきたい」彼は言った。「あなたを雇われたマウン

ト・ジェイムズ卿にこう言って下さい。私は卿とも、その代理人ともいっさい用はない、

とね。いや、もう何も言わなくて結構だ」彼はぐいとベルを鳴らした。

「ジョン、この方たちをお送りしなさい」

 高慢ちきな執事が厳 いか めしくわれわれを玄関へと導びいた。通りに出るとホームズは大

声で笑い出した。

「レズリー・アームストロング博士というのはたしかに精力的で、傑物 けつぶつ だよ。彼がその

方面をやる気にさえなりゃあ、有名なモリアーティ博士の亡きあとのギャップを埋めるに

はふさわしい人物だ。ところでワトスン君、知人もいないこんな不愛想な町におっぽり出

されちゃったけど、捜査をやめて引き上げるわけにもいかんし、困ったな。アームストロ

ング博士のお邸 やしき のちょうど前に小さな宿屋があるというのは都合がいいじゃないか。

君、通りに面した部屋をとって、今夜必要なものを揃 そ ろ えておいてくれないか。僕は

ちょっと出かけて、二、三あたって来るよ」

 二、三あたってみるなどと出かけたものの、思いのほか時間がかかって、九時近くまで

ホームズは帰って来なかった。帰って来た彼は青い顔をして、埃 ほこり だらけで、空腹と疲れ

でしょんぼりしていた。テーブルに用意された冷たい食事で食欲を満たすと、ホームズは

パイプに火をつけ、仕事の思うようにゆかぬときの常で、なかばおどけたような、それで

いてまったくあきらめきった顔つきになった。

 表で馬車のきしる音がして、彼は立ち上がって窓からのぞいた。葦毛 あしげ の馬を二頭つけ

た四輪馬車が博士の家の前にガス燈の光を受けてとまっていた。

「三時間以上かかっているね。出かけたのが六時半だというのに、やっと今帰って来たん

だ。十マイルか十二マイル先まで行っているはずだね。一日に一回、ときには二回もああ

やって出掛けているようだ」ホームズは言った。

「開業医なら当然のことじゃないかね」

「いや、アームストロングは開業医じゃないんだよ。彼は大学の講師と諮問 しもん 医師をやっ

ているが、実際の診察はやっていない。診察なんかやると勉強する暇がなくなるというわ

けらしい。だというのに、なぜあんなに時間をかけて最も嫌いなはずの往診なんかやるの

かねえ。いったい誰のところへ行っているんだろう?」

「馭者 ぎょしゃ に聞いてみれば……」

「ワトスン君、僕がそれを第一にやらなかったと思うかね? ところがねえ、生まれつき

乱暴なのか、主人に言いつけられたのか知らないが、馭者の奴、僕に犬をけしかけるん

だ。まあ僕のステッキを見て馭者も犬もそれ以上どうということなく、ことはおさまった

が、にらみ合いでね、質問どころじゃなかったよ。僕はこの宿屋の庭で働いている土地の

男にみんな聞いたんだけどね、博士の日常生活や例の往診のこともみな教えてくれたよ。

その最中に彼の言葉どおりに迎えの馬車がやって来たんだ」

「あとをつけなかったのかい」

「それそれ、ワトスン君、今晩はばかに頭が働くな。僕もすぐそう思ってね、この宿屋の

隣りに自転車屋があるだろう。大急ぎで駆け込んで一台借りて、馬車を見失わないうちに

追いかけることができた。すぐ追いついたので慎重に百ヤードばかり距離をおいて、馬車

の灯 ひ をつけていったが、郊外に出てしまった。だいぶん行ってから田舎道で困ったことが

起きてしまった。というのは、馬車がとまって、博士がおりて、やはりとまっている僕の

ところへやって来るんだ。博士の奴、皮肉な調子で言うのさ。

 《どうも道が狭くて、お急ぎの様子のあなたの自転車を私の馬車が邪魔しているようで

申し訳ない》とね。まったくうまい言い方で感心したよ。仕方がないから僕は馬車を追い

越して本通りを二、三マイル行って適当な場所で馬車のやって来るのを待った。ところが

待てど暮らせどやって来ない。途中いくつかあった道のどれかに曲がり込んだらしいの

だ。僕も引っかえしてみたが、どこへ行ったかわからない。結局、僕よりおそく、今ごろ

帰って来ているんだ。

 もちろん最初は博士のお出かけが、ゴドフリー・スターントンの失踪と関係があると考

える理由はなかった。ただアームストロング博士の動きに興味があるから、身のまわりを

調べてやろうと思ったわけだ。しかし博士が出かけるに際して、尾行するものがいないか

とあんなに神経をとがらしているのを見ると、事はもっと重大だよ。万事つきとめなきゃ

承知できないね」

「明日もういちど尾行できないもんかね」

「できると思うかい? 君が思うほど簡単じゃないぜ。君、このケンブリッジ地方の地勢

をよく知らないだろう? かくれるところなんか全然ないんだぜ。今夜僕が通ったあたり

も掌 てのひら みたいに平らだし、追いかける相手は今夜もわかった通り相当な奴だからね。一方

僕はオーヴァートンに電報を打って、ロンドンで何か新しい進展があったら知らせるよう

にいってやったんだが、返電があるまではアームストロング博士に注意を集中しているほ

かない。ロンドンの電報局で女局員が見せてくれたスターントンの頼信紙はたしかアーム

ストロング博士宛だったんだからね。博士は……誓っていうが、ゴドフリーの居所を知っ

ているに違いない。彼が知っていて、僕らが知り得ないのは僕らの力が足りないからだ。

今のところ、先方のほうが役者が一枚上手 うわて みたいだがね、ワトスン君、決してこのまま

にはさせておかないさ」

 しかし翌日になっても謎はいっこう解けそうになかった。朝食の後、一通の手紙が届け

られた。ホームズが笑いながら私に渡した。

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