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アビ農場の屋敷(4)

时间: 2024-02-20    进入日语论坛
核心提示: ホームズはフランス式の窓のほうへ歩いて行って、開け放った。「ここには何の足跡もない。地面は鉄みたいに固いのだから、証拠
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 ホームズはフランス式の窓のほうへ歩いて行って、開け放った。「ここには何の足跡も

ない。地面は鉄みたいに固いのだから、証拠の残りようがないわけだね。マントルピース

の上のこのローソクは点 とも っていたのでしょうね」

「そうです。泥棒はその明かりと夫人の寝室のローソクをたよりに、忍び寄ってきたので

す」

「何を取っていったのですか」

「たいしたことはないのです。戸棚から銀皿を五、六枚取って行っただけです。夫人の考

えるところでは、本当は連中は掠奪 りゃくだつ するつもりだったのだけど、サー・ユースタスを

殺してしまったので、おおいにあわてたと言うのです」

「それはそうでしょうね。でもワインを飲んで行ったということでしたね」

「気持を鎮 しず めたんでしょう」

「なるほどね。戸棚の上の三つのグラスは、誰も手を触れてないでしょうね」

「そうです。壜 びん もそのままです」

「それを見てみましょう。おやおや、これは何かな」

 三つのグラスはひとまとめに集まっており、三つとも酒でよごれていたが、そのうちの

ひとつにはワインの《おり》が残っていた。壜はその側にあって三分の二ほど入ってお

り、深いしみのついた長いコルクもころがっていた。壜の外見や、埃 ほこり のつき具合などか

ら推して、泥棒たちが味わったのは特別に上等なワインであることを示していた。

 ホームズの態度は変わってきた。無関心なふうの表情は去って、ふたたび彼の鋭い窪 くぼ

んだ目に、用心深い光を読み取ったのである。彼はコルクを取り上げ、しばらくしらべて

いたが、「どうやって取ったのかな?」

 ホプキンズは開きかかった抽出しを指し示した。その中に亜麻布のテーブルかけと、大

きなコルク抜きがあった。

「夫人はコルク抜きを使ったと言いましたか?」

「いいえ、壜を開くときは、夫人は意識がなかったと言ってましたが」

「そうでしたね。実のところは、あのコルク抜きは使われなかったのですよ。これはポ

ケット栓抜きの、おそらくナイフと一緒になっている、一インチ半くらいの短い奴で抜い

たんですよ。コルクの頭をご覧になればわかりますよ、抜き取る前に二度も所を変えて打

ち込まれていますよ。突き通せなかったんです。この長いコルク抜きなら、突き通って簡

単にひょいと抜けたんでしょうがね。犯人を捕えたら、きっと組み合わせになったナイフ

を持ってますよ」

「さすがですね」ホプキンズは言った。

「しかしこのグラスは謎ですよ。三人が飲んでいるところを、夫人は実際に見たと言って

ましたね」

「それは、はっきり言っています」

「そう言われれば、それまでです。これ以上、何も申し上げることもありません。しかし

ですね、この三つのグラスは、きわめて注目すべきですよ。おや、何でもないと見てらっ

しゃるのですかな。まあ、それはそうとして置きましょう。僕みたいに特殊な知識や能力

をもつと、簡単な問題にも複雑な説明を求めようとするものですね。このグラスのことで

も、ほんの偶然なのかもしれません。ではホプキンズさん、これで失礼します。僕がいて

も役にたてそうもないし、それに君はちゃんと解決できるものを持っておいでのようです

からね。ランドールを捕まえたり、何か事件が発展するようでしたら知らせて下さい。首

尾よく解決できますことを信じています。さあ、ワトスン君、行こう。そのほうがもっと

有益に仕事に携われるというものですよ」

 帰りの汽車の中で、ホームズは見て来たことについて、何か思い悩む様子であった。と

きおり、漠然とした観念を、パッとはらいのけるように問題が解決できたのだといった調

子で話し出すが、またまた疑念が胸におきて、眉をひそめ、目はポーッとなって、思いは

いつしか深夜の惨劇の行なわれたアビ農場の大食堂へ帰って行くのであった。そのうち

に、汽車がどたんという衝動に続いて、ある町はずれの駅を出た瞬間に、彼はにわかにプ

ラットホームへ飛び降りて、私まで引きずり降ろしてしまった。

「失礼だったね」カーブをまわって消えて行く汽車の後尾を見送りながらホームズは言っ

た。「ちょっとした気まぐれに君までも犠牲にするのはすまないが、ただ僕はこの事件を

このままにしておくことは、どうしてもできないんだよ。あらゆる本能がそれに反対して

叫び出すんだ。間違いがある。みな間違っているんだ。僕はそれを保証する。しかし夫人

の話は完璧なものだし女中の確証もそろっている。こまかい点もみな符合している。それ

を僕がなぜ反対しなければならないのか。あの三つのグラス、それだけなんだ。

 僕があの説明をそのまま受け取りさえしなかったなら……あらかじめ用意された話にご

まかされることがなく、万事今までやってきたような注意深さで調べていたならば、何か

確定的な拠 よ り所が発見できただろうか。できたと思うよ。まあ、ワトスン君、チズルハー

スト行の汽車が到着するまで、このベンチに腰を下ろしていたまえ。君の前に証拠を並べ

たてよう。それには第一に、女主人や女中が語ったことが真実だときめてかかる態度はや

めていただきたいとお願いする。夫人の魅力的な人品にわれわれの判断を歪 ゆが ませてはい

けないと思うよ。

 冷静に聞けば、夫人の話の中には疑うべき点がいくつかあった。二週間前に、この泥棒

たちはシドナムで相当派手なことをやった。その記事や人相は新聞に出たから、架空の泥

棒を使って芝居をうとうとする場合、誰でも思いつきそうなものだよ。実際、泥棒がえら

いもうけをしたなら、喜びのあまり、当分あぶない仕事にはのり出さないで、おとなしく

そのもうけを楽しむものだよ。それに割と早い時間にひと仕事するっていうのも普通じゃ

ないし、女に声をたてさせないために殴りつけるというのも普通じゃない。そんなことを

すれば、かえって声をたてると思うね。それに数の上で男一人を始末できるくらいのこと

はわかっているのに、殺してしまうっていうのも普通じゃない。また手近な所にいくらも

いいものがあるのに、あんなわずかなものを盗 と って満足していることも普通じゃない。最

後にあんな連中が、酒を半分しか飲まなかったということも普通じゃないと考えられる。

こうしたことを、君はどう思う?」

「そう重ねて言われてみると、相当なものだと思うがね。しかしどれもがありそうなこと

だよ。ただ僕が不思議だと思うのは、夫人が椅子に縛りつけられていたということだよ」

「僕はそうは思わないよ。ワトスン君。というのは、泥棒が夫人を殺さないとしたなら、

逃げたあとに夫人がすぐに警察に知らせることができないようにしておかなければならな

いのだからね。しかし、ともかく夫人の話の中には、どうもありそうにもない要素がある

んだ。その最大のものはあのグラスの件だ」

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