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シルヴァー・ブレイズ(6)_シャーロック・ホームズの回想(回忆录)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: ホームズが取りだしかけた半クラウン銀貨をポケットに戻したとき、おっかない顔つきをした年配の男が、狩猟用の鞭むちを振りま
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 ホームズが取りだしかけた半クラウン銀貨をポケットに戻したとき、おっかない顔つき
をした年配の男が、狩猟用の鞭むちを振りまわして門から大おお股またで出てきた。
「なにやってる、ドースン!」男は怒鳴った。「無駄口きいとらんで、さっさと仕事に戻
らんか! それから、あんた方はなんだ? なにしに来た?」
「あなたと十分ほど話がしたいんですよ、親方」ホームズは猫なで声で言った。
「ふらふらほっつき歩いてるやつらと話す暇なんぞない。部外者は立入禁止だ。さあ、出
ていけ。犬をけしかけられたいか?」
 ホームズは身をかがめて、調教師のブラウンになにやら耳打ちした。ブラウンは烈火の
ごとく怒りだした。
「噓だ! とんでもない言いがかりだ!」とわめきたてた。
「ああ、そうかい! だったら、この場で大声で議論したっていいんだよ。あんたの居間
とどっちがいい?」
「ふん、わかったよ。中へ入りな」
 ホームズはにやりと笑った。「ワトスン、二、三分で済むからここで待っていてくれ」
そのあと調教師に向き直った。「ではブラウンさん、ご希望に添うとしましょう」
 たっぷり二十分が経過し、夕焼けに染まっていた空が暗い灰色にのみこまれた頃、ホー
ムズと調教師が戻ってきた。サイラス・ブラウンはさっきとは別人のようだった。顔は青
ざめ、額にはぎらぎらと汗が噴きだし、手が震えているせいで、持っている狩猟用の鞭が
風に吹かれた小枝のように揺れている。あの威張りくさった横柄な態度はどこへやら、
ホームズのかたわらで飼い主に叱られた犬のようにしゅんとなっている。
「言いつけどおりにします。必ずそのように手配しますので」ブラウンは言った。
「まちがいは許されないから、そのつもりで」ホームズは相手をにらみつけて念を押し
た。その目に威嚇の色を読み取って、ブラウンは縮みあがった。
「わかってますとも、抜かりのないよう取りはからいます。ちゃんと向こうへ連れていき
ます。で、あれはその前に変えておいたほうがいいでしょうか?」
 ホームズは少し考えてから、大笑いした。「いや、変えなくていいよ。その件について
は追って手紙で指示する。とにかく下手な小細工はしないことだ。さもないと──」
「めっそうもない、小細工なんかするもんですか。本当です、信じてください!」
「当日は自分のものだと思って大切に世話をしてやれよ」
「はいはい、それはもう、任せてください」
「いいだろう、では任せた。明日の連絡を待つように」ホームズはブラウンが差しだす震
える手を無視して、さっと踵きびすを返した。私たちはキングス・パイランドへの道を戻
り始めた。
「あのサイラス・ブラウンほど傲ごう慢まんで臆おく病びようで卑屈なやつはいないね」
荒れ地を並んで歩きながら、ホームズが言った。
「じゃあ、シルヴァー・ブレイズはあの男のところに?」
「最初は怒鳴り散らして認めようとしなかったが、こっちがあいつのあの朝の行動を逐一
挙げていくと、目撃されたと思ったようだ。きみも気づいただろうが、地面の足跡の中に
爪先が妙な具合に角張ったのが混じっていただろう? あれがブラウンの履いていた深靴
とぴったり同じだったんだ。そもそも、いつも親方の顔色をうかがってるような馬丁たち
に、こんな大それたまねができるはずない。そこで、ブラウンの前でこう言ってやった。
いつもの習慣でおまえが早朝に起きだすと、荒野を見慣れない馬がさまよっていた。そば
へ行ってみたら、なんとあのシルヴァー・ブレイズだった。額に名前の由来である白い模
様が入っているからまちがいない。今度のレースでおまえはデズバラに大金を賭かけてい
るが、それに勝てるのはシルヴァー・ブレイズだけだ。それが向こうから転がりこんでき
たではないか。おまえはいったんはキングス・パイランドへ返しにいこうとしたが、最後
は悪魔のささやきに負け、レースが終わるまで隠しておこうと、回れ右してケイプルトン
へ連れ帰った。とまあ、こんな具合にそのときの模様を細かく言い当てたものだから、ブ
ラウンはとうとう降参したよ。あとは自分の身を守ることで精一杯というわけさ」
「しかし、ケイプルトン廏舎も捜索を受けたはずだが」
「ああいう古狸は、ごまかし方をいくらでも知っているからね」
「そんな男に馬を預けておいてだいじょうぶかい? 傷をつけたくてうずうずしているん
じゃないか?」
「心配ないよ、ワトスン。宝物のように大事にするはずだ。寛大な処置を施してもらいた
かったら、あの馬を無事に返すしかないことは百も承知だろうからね」
「ロス大佐はなにがあろうと寛大な処置は取りそうにないけどなあ」
「これはロス大佐の一存では決まらないよ。僕はこのまま自分なりの方法で進めて、大佐
には最小限のことしか明かさないつもりだ。なあ、ワトスン、大佐の僕に対する態度はい
ささか礼儀に欠けると思わないか? お返しに一泡吹かせてやりたくなってね。馬のこと
は大佐には黙っていてくれ」
「きみがいいと言うまでは口をつぐんでいるよ」
「もっとも、こんなことはジョン・ストレイカー殺しの謎に比べればちっぽけな問題だが
ね」
「いよいよそっちに本腰を入れるんだね?」
「いいや。僕らは今夜の汽車でロンドンへ帰るのさ」
 それを聞いて、私は啞あ然ぜんとした。デヴォンシャーに来てからまだ数時間しか経っ
ていない。しかも、きわめて順調に進んでいる捜査を途中で投げだすとは、いったいどう
いうことだろう。だがそれ以上の説明は聞けないまま、ストレイカーの家に着いた。ロス
大佐とグレゴリー警部は居間でお待ちかねだった。
「ワトスンと僕は深夜の急行でロンドンへ戻ります」ホームズは二人に告げた。「おかげ
さまで、ダートムアの新鮮な空気をたっぷり味わえましたよ」
 警部は目を丸くし、大佐は冷笑を浮かべた。
「ということは、ストレイカー殺しの犯人捜しは断念なさるわけですな」大佐が言った。
 ホームズは肩をすくめた。「いろいろと困難な問題が立ちはだかっていましてね。しか
し、あなたの馬は火曜日のレースに必ず出走しますので、騎手に十全の準備をさせておい
てください。ところで、ストレイカー氏の写真を一枚お借りできませんか?」
 警部はポケットの封筒から抜きだし、ホームズに渡した。
「警部、あなたは本当に手回しのいい方だ。このまま少しお待ちください。メイドにひと
つ確認したいことがありますので」
「ロンドンの探偵さんには、がっかりさせられたよ」ホームズが部屋からいなくなると、
ロス大佐はぶっきらぼうに言った。「来てもらっても、捜査は一歩も前進しなかったな」
「あなたの馬がレースに出られることは請け合いましたよ」私は言った。
「まあ、そうだが」大佐は肩をすくめた。「それよりも、馬を取り戻してほしかったんだ
がね」
 私が友人をかばおうと口を開きかけたとき、ホームズが部屋へ戻ってきた。
「お待たせしました、皆さん」ホームズは言った。「ではタヴィストックへ戻るとしま
しょうか」
 私たちが馬車に乗りこむ際、馬丁の一人が扉を押さえてくれていた。ホームズは突然な
にか思いついたらしく、身を乗りだして馬丁に話しかけた。
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