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第1章 アルカリ土壌の大平原(7)

时间: 2023-10-31    进入日语论坛
核心提示:「そんな名前の天使は聞いたことがない」とフェリア。「まあしかし、ずいぶんと大勢の民をお選びになったんだな」「神聖なものを
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「そんな名前の天使は聞いたことがない」とフェリア。「まあしかし、ずいぶんと大勢の民をお選びになったんだな」

「神聖なものを冷やかすのはやめていただきたい」別の若者がきつくとがめた。「聖ジョゼフ・スミスはニューヨーク州パルマイラで、エジプト文字が記された金版を授かりました。われわれはその聖なる碑文を信仰する者なのです。イリノイ州のノーヴーに教会を建て、そこで暮らしていましたが、神を信じない凶暴な者たちに迫害されたため、安住の地を求めてこうして砂漠の真ん中まで旅してきたのです」

 ノーヴーという地名に、ジョン・フェリアは思い当たるふしがあったようだ。「なるほど、わかったぞ。あんた方はモルモン教徒だったのか」

「そうです、モルモン教徒です」男たちは異口同音に答えた。

「で、どこへ向かっているんだね?」

「わかりません。神の御手がわれわれの預言者を介してお導きくださるままに進みます。では、これから預言者さまのところへ行ってもらわなければなりません。あなたたちをどうするかは預言者さまがお決めになります」

 すでに岩山を下りて地上にたどり着いていた。たちまち巡礼者の一行がまわりに集まってきた。青白くておとなしそうな女たち、元気でにぎやかな子供たち、さも心配げなまなざしの男たち。行き倒れになりかけていたのが憔しよう悴すいしきった男と年端の行かぬ子供だとわかると、皆、口々に驚きと同情の言葉を発した。それでも救助隊は立ち止まることなく進み続け、群集がそのあとについていった。やがて、ひときわ目を引く派手で大きな幌馬車の前まで来た。ほかの馬車は二頭立てか、せいぜい四頭立てなのに、その立派な馬車だけは六頭もつないである。御者の隣に男が一人腰かけていた。まだ三十歳そこそこに見えるが、頭ががっしりと大きく、指導者に似つかわしい決然とした表情をたたえている。彼は茶色の表紙の書物を読んでいたが、信者たちが近づいてくると書物を脇に置き、斥候たちの報告にじっと耳を傾けた。そのあと、二人の放浪者を振り向いて言った。

「われわれと同じ教義を信じなければ、同行させるわけにはいかない」威厳のこもった口調だった。「羊の群れに狼を入れることはできないのだ。果物はどこか一箇所にでも傷があると、いずれ全体が腐ってしまう。あなた方が傷であるならば、この荒野で白骨と化してもらうしかない。どうだ、条件をのめるか?」

「ああ、のめるとも。どんな条件だろうが片っ端からのんで、一緒について行こう」ジョン・フェリアの気負いこんだ返事に、しかつめらしい態度の長老たちがふっと頰をゆるめた。だが指導者だけは威厳に満ちた険しい表情をみじんたりとも崩さなかった。

「では長老スタンガスンよ」指導者は教徒の一人に命じた。「この者に食べ物と飲み水を与えるように。子供にもな。それから、われわれの聖なる教義をこの者に教えるのもおまえの務めだ。さて、だいぶ時間を食ってしまった。ただちに出発だ! いざ、神の都シオンへ!」

「いざ、シオンへ! いざ、シオンへ!」周囲に集まった教徒たちが一斉に声を張りあげると、その言葉は後方に向かって人から人へ波紋のごとく伝わっていき、はるか遠くでくぐもったさざめきとなって消えた。ぴしっと鞭むちが鳴り、車輪が甲高くきしんで、大型の馬車が重たげに動き始める。まもなく隊列全体がうねりながらゆっくりと行進を再開した。放浪者の世話を言いつかった長老は二人を自分の馬車へ案内した。そこにはすでに食事が用意されていた。

「当分のあいだ、ここで休養なさるといい」長老は言った。「二、三日もすれば体力を取り戻せるでしょう。ところで、これだけは肝に銘じてください。あなた方はこれから一生、われわれの信徒です。ブリガム・ヤングさまがそうおっしゃったのですからな。神の声であるジョゼフ・スミスさまの思おぼし召しを代弁なさったのです」 

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