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第4章 決死の脱出(6)

时间: 2023-10-31    进入日语论坛
核心提示: 街道へ出てからは、どんどん距離を稼いだ。人影に出で会くわしたのは一度きりで、とっさに畑に隠れて危うく難を逃れた。まもな
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 街道へ出てからは、どんどん距離を稼いだ。人影に出で会くわしたのは一度きりで、とっさに畑に隠れて危うく難を逃れた。まもなく市街地に入るというところで、ホープは山へ続く狭いでこぼこ道へ二人を誘導した。頭上の暗闇から、とがった黒い二つの峰がぬっと顔を出した。そのあいだにある峡谷が、馬とラバを待たせてあるイーグル谷だ。ジェファースン・ホープは持ち前の鋭敏な勘で道を的確に選び、巨岩のあいだをすいすいと抜け、干上がった川床をたどっていった。やがて、忠実な動物たちをつないである目立たない岩陰にたどり着くと、ルーシーはラバに、フェリアは金の入った袋とともに馬に乗った。ホープは残る一頭の馬にまたがって、崖がけの上の険しい道を先頭に立って進み始めた。

 荒々しい姿をむきだしにした大自然を目の当たりにする経験が乏しい者にとっては、途方に暮れるしかない悪路だった。道の片側には高さ千フィートを超える巨大な絶壁が黒々と威圧的にそびえ立ち、その柱状をなして連なる玄武岩の岩肌は、化石となった怪物の肋ろつ骨こつのようにごつごつと突きだしている。反対側には丸石や割れた石の断片が積み重なって、足を踏み入れることすらできない。三人が先を急いでいるのはそんな崖沿いの獣道のごとき隘あい路ろで、一列にならないと通れないほど狭い箇所があちこちにあった。おまけに足場がかなり悪いため、馬の扱いによほど長たけた者でなければとうてい進むことはできなかった。しかし、このような危険と隣り合わせの状況でも、逃亡者たちの心は軽やかだった。一歩進むごとに、あの恐ろしい独裁集団との距離は広がっていくのだから。

 ところがそれからまもなく、まだモルモン教徒の支配地を脱していなかったのだと思い知らされた。道が荒れ放題になった一段と寂しい場所にさしかかったとき、ルーシーが不意に驚きの声をあげ、頭上を指差したのだ。道を見下ろす岩の上に、黒い人影がひとつ、空を背景にくっきりと浮かびあがっていた。見張りの男だ。向こうもすぐさま三人の姿を認め、「誰だ?」と軍隊式の誰すい何かの声が静寂に包まれた峡谷に響き渡った。

「ネヴァダへ行く旅の者です」そう答えながら、ジェファースン・ホープは鞍くらにつるしたライフル銃に手をかけた。

 その返事に不満だったらしく、たった一人の張り番は銃を構えて三人のいるほうをのぞきこんだ。

「誰の許可を得た?」

「長老会議だ!」今度はフェリアが答える。モルモン教徒として暮らしてきた経験から、長老会議の名前を持ちだすのが一番威力があると心得ていた。

「九から七!」見張りの男が叫ぶ。

「七から五!」庭の垣根越しに聞いた合言葉を思い出し、ジェファースン・ホープがすかさず返す。

「よし、通れ。神のご加護を!」頭上から声が降った。その地点から先は道幅が広がり、馬を速歩で走らせることができた。しばらくして振り返ると、独りぼっちの見張り役は銃にもたれて休んでいた。フェリア父娘もホープも、これでようやく〝選ばれし民〟の土地の境界線を越え、行く手には無限の自由が広がっているのだと確信した。

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