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第5章 復ふく讐しゆうの天使たち(2)

时间: 2023-10-31    进入日语论坛
核心提示: せっかく仕留めた獲物だが、重すぎて丸ごと持ち帰るのは無理なため、片方の腿ももと脇腹の肉だけ切り取った。すでに夕闇が忍び
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 せっかく仕留めた獲物だが、重すぎて丸ごと持ち帰るのは無理なため、片方の腿ももと脇腹の肉だけ切り取った。すでに夕闇が忍び寄っている。戦利品を肩に担ぐと、さっそく来た道を引き返し始めた。ところが、出発してまもなく困った事態に陥った。獲物を探して夢中で歩きまわっているうちに、知らない谷へ入りこんでしまったらしく、戻る道がなかなか見つからないのだ。その谷はさらにいくつもの峡谷に分かれ、おまけにどれも似通っているので、まるきり区別がつかなかった。たぶんこれだろうと見当をつけて進んでみたが、一マイルほど行くと全然見覚えのない渓流にぶつかり、道をまちがえたのだとわかった。それで別の峡谷をたどってみると、今度もまた見覚えのない場所へ出てしまう。ようやくなじみのある谷へ戻ったときには、あたりは闇に包まれようとしていた。勝手知ったる道とはいえ、月はまだ昇っていないし、左右を高い断崖にふさがれているため暗くて見通しが悪い。肩の荷はずっしりと重く、歩き疲れてくたくただったが、一歩ごとにルーシーに近づいているのだと自分に言い聞かせながら、よろよろと進み続けた。少しでも早く獲物を持ち帰って、これで食料の心配をせずに旅を続けられるよと二人を励ましたい一心だった。

 ようやく、フェリア父娘を残してきた谷の入口が見えてきた。その谷を取り囲む絶壁の輪郭は、暗がりでも自信を持って見分けられた。出かけてから、もう五時間近く経っている。二人ともさぞかし待ちわびていることだろう。嬉しさに胸を躍らせながら、戻ったことを早く知らせようと両手を口にあてがい、四方の谷間に反響する声で「おーい」と叫んだ。立ち止まって耳を澄まし、返事が来るのを待つ。ところが聞こえてくるのは、不気味なほど静まりかえった谷に雑音のように鳴り渡る無数のこだまだけ。もう一度、さっきより大きな声で呼んでみたが、数時間前まで一緒にいた父娘の声はささやきさえも返ってこない。漠とした言い知れぬ不安にとらわれたホープは、動揺のあまり大事な食料をその場に放りだして、憑つかれたように走りだした。

 岩の角を曲がると、焚き火のあった場所がひと目で見渡せた。まだ燠おき火びが赤く残っていたが、ホープがそこを離れたあとに薪まきを新たにくべた形跡はなかった。あたりはひっそりと静まり、重苦しい空気が垂れこめている。不安は残らず恐ろしい確信に変わり、彼の歩調はさらに速まった。燃え残った焚き火の周囲には生き物の姿はまったくなかった。馬も娘も老人も、あとかたなく消えている。ホープのいないあいだに突然の悲劇に見舞われたことは打ち消しようがなかった──あっという間にすべてをのみこみ、しかもなんの痕跡も残さない悲劇が。

 強烈なショックで、ジェファースン・ホープは放心状態になった。めまいに襲われ、いまにもくずおれそうになるのを、ライフル銃にすがってかろうじてもちこたえた。しかし彼は本来、行動力に満ちた男である。茫ぼう然ぜん自じ失しつの状態をすぐさま脱し、くすぶっている焚き火から燃えさしの木ぎれを一本拾いあげると、息を吹きかけて火を大きく燃えあがらせ、その明かりで小さな野営地を注意深く調べた。地面が馬の蹄てい鉄てつの跡で踏みにじられているということは、騎馬の大集団が逃亡者の父娘に襲いかかったらしい。足跡の向きを見れば、その一団がソルトレイク・シティへ引き返したことは明白だった。フェリア老人とルーシーは二人とも連れ去られたのだろうか。そうにちがいない、と思いかけた瞬間、あるものが目に留まり、恐ろしさで総毛立った。野営地から少し離れたところに、赤っぽい土を盛った小さな山ができている。昼間ここを離れるときにはなかったものだ。しかも、どこをどう見てもできたばかりの墓ではないか。近づくと、盛り土の真ん中に棒が突き刺してあり、先端の割れ目に紙片がはさまっていた。そこに記された碑文は、短いがすべてを物語っていた。

 ジョン・フェリア

 もとソルトレイク・シティ市民

 一八六〇年八月四日没

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