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第5章 復ふく讐しゆうの天使たち(3)

时间: 2023-10-31    进入日语论坛
核心提示: なんということだ。あの剛健な老人が、数時間前にここで別れたばかりの老人が、いまは死んで土に埋められているとは。こんな味
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 なんということだ。あの剛健な老人が、数時間前にここで別れたばかりの老人が、いまは死んで土に埋められているとは。こんな味もそっけもない文字が墓碑銘だとは。もしや、どこかにもうひとつ墓が? ホープは気もふれんばかりになって周囲を探しまわったが、それらしきものは見あたらなかった。ルーシーはきっと、あの残虐な追跡者たちに連れ戻されたのだ。長老の息子のハーレムで囚とらわれの身となる運命に、もはや逆らうことはできないのか。ホープはルーシーを待ち受ける不幸を嘆き、おのれの無力さを恨んだ。いっそのこと老農場主が静かに眠るこの墓で自分も息絶えてしまいたかった。

 だが、生来の行動力がまたしても無力感をはねのけ、絶望から這はいあがった。フェリア父娘のためにはもうなにもしてやれないが、残りの人生を復ふく讐しゆうに捧ささげることならできる。決して後へ引かない粘り強さと忍耐力をそなえたホープは、おそらく先住民のそばで暮らしてきたせいだろう、復讐心を絶やさないだけの執念も宿していた。消えかかった焚き火のそばにたたずんで、彼は思った。この手で敵を倒し、報復を遂げないかぎり、悲しみが癒いえることはないだろう。おのれの強固な意志と無尽の精力を残らずその目的に注ぎこもう。そう心に誓った若者は青ざめたすごみのある顔つきで、さっき放りだした獲物を拾い集め、くすぶっている火を再び燃えあがらせて肉を焼き、数日分の食料を用意した。それを手早く包むと、疲れ果てているのもかまわず、〝復讐の天使〟たちの足跡をたどって山道を引き返した。

 くたびれた身体で、痛む足をひきずりながら、来るときは馬の背に揺られて進んだ道のりを谷から谷へ五日間歩き続けた。夜は岩の隙間に倒れこんで眠りをむさぼったが、夜明け前には起きて再び歩を進めた。そうして六日目、ようやくイーグル谷に着いた。不運な脱出行の出発点となった場所だ。そこからは〝聖徒たちの国〟を一望のもとに見渡せた。憔しよう悴すいしきったホープは、ライフル銃にすがって立ち、眼前に黙して横たわる町に向かって瘦やせ衰おとろえた腕を振りあげた。しばらく眺めているうちに、あちこちの主要な通りで旗が掲げられているのに気づいた。ほかにも祝い事を示す飾りがいくつか出ている。いったいなんの祝いだろう、と考えているところへ蹄ひづめの音が響き、馬に乗った男が一人、こちらへやって来るのが見えた。顔がわかる距離まで近づくと、以前困っているところを何度か助けてやったことがあるクーパーという名のモルモン教徒だった。そこで、ルーシー・フェリアのことを尋ねようと、すれちがいぎわに呼び止めた。

「ジェファースン・ホープだ。覚えているだろう?」

 そのモルモン教徒は、驚きの表情をありありと浮かべてホープを見つめた。無理もないだろう。目の前にいるのは破れた服をまとい、げっそりとして死人のように青ざめ、目だけがらんらんと光るみすぼらしい放浪者。この男がかつての颯さつ爽そうとした若い猟師と同一人物だとは、誰もにわかには信じられまい。だが、本人に相違ないとわかった瞬間、今度は驚きが狼ろう狽ばいに変わった。

「おい、正気か? なぜ舞い戻ってきた?」詰め寄る口調で言った。「こんなふうに話しているところを見られたら、こっちの命まで危ない。いいか、あんたにはな、フェリアの逃亡を手引きしたかどで長老会議から逮捕状が出てるんだぞ!」

「長老会議だろうが逮捕状だろうが、ちっとも怖くはないね」ホープは息巻いた。「それよりクーパー、今度のことはあんたもなにか聞いているだろう? 知りたいことがある。友人のよしみで教えてくれ。頼む」

「なにが知りたいんだ?」モルモン教徒は不安げに尋ねた。「急いでくれ。岩に耳あり、木に目あり、だからな」

「ルーシー・フェリアはどうなった?」

「昨日、ドレッバーさんの息子と結婚したよ。おい、どうした、しっかりしろ。顔色が悪いぞ」

「いいんだ、ほっといてくれ」ホープは息も絶え絶えに言うと、唇まで血の気が失うせて、もたれかかっていた岩にぐったりと身体を預けた。「結婚した、と言ったな?」

「ああ、昨日。それで教会堂に旗が揚がってるんだ。ドレッバーさんの息子とスタンガスンさんの息子が、どっちが彼女をもらうかでだいぶもめてたよ。二人ともフェリア父娘の追跡隊に加わってたが、父親を射殺したのはスタンガスンだから、最初は彼のほうに分がありそうだった。ところが評議会へ持ちこまれると、ドレッバー側がはるかに優勢でね。結局、預言者さまはドレッバーに娘をやるとお決めになった。とはいえ、あの娘はもう長くないだろう。昨日見かけたら、はっきりと死相が表われてたよ。もう半分幽霊みたいだったな。おや、行くのか?」

「ああ、行くよ」ジェファースン・ホープはすでに立ちあがっていた。大理石の彫像のように顔がこわばり、目だけが不気味にぎらついていた。

「どこへ行くんだ?」

「さあな」ホープは突っぱねるように言って銃を肩にかけると、大おお股またで谷を下っていき、野獣どものうろつく山奥へと姿を消した。だが、いまのホープほど獰どう猛もうで危険な獣は山のどこを探してもいないだろう。

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