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第6章 ジョン・H・ワトスン博士の回想録(続き)(3)

时间: 2023-10-31    进入日语论坛
核心提示: やつらには金があったが、こっちは素寒貧だったから、追いかける苦労は並大抵のもんじゃなかった。ロンドンに着いたときは無一
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 やつらには金があったが、こっちは素寒貧だったから、追いかける苦労は並大抵のもんじゃなかった。ロンドンに着いたときは無一文の状態で、食い扶ぶ持ちを稼ぐためすぐに職にありつかなきゃなりませんでした。馬車と馬の扱いなら歩くのと同じくらい慣れてますから、さっそく馬車屋へ行くと、すんなり雇ってもらえました。毎週なにがしかの金額を親方に納めれば、稼いだ分は全部自分の懐に入るんです。たいした儲もうけにはなりませんが、どうにかこうにか食っていけました。一番苦労したのは道を覚えることです。このロンドンって街は迷路かと思うくらい複雑に入り組んでますからね。それでも地図を頼りに必死で頭に入れました。大きなホテルや駅を目印にしたら、だいぶ進歩しましたよ。

 二人の居場所を突きとめるまでけっこう時間がかかりましたが、あちこち尋ねまわってようやく捜しあてました。川向こうのカンバーウェル地区にある下宿屋にいました。居所さえつかめれば、もうこっちのもんです。おれは顎あご鬚ひげを生やしてましたから、顔を見ても誰だかすぐにはわからないでしょう。やつらを辛抱強く追跡して、時機到来を待てばいい。二度と逃がすものかと心に固く誓いました。

 ところが、またしても逃げられそうになったんです。おれはやつらがロンドンのどこへ行こうと必ずあとをつけました。自分の馬車を使うときもあれば、足で追うこともありましたが、やっぱり速度で勝る馬車のほうが確実です。そんなわけで、客を乗せる仕事は早朝か夜遅い時間だけしかできず、実入りがすっかり減って、親方に納める金にも困る始末でした。まあ、さして気にはしませんでしたがね。おれとしては標的の二人を取り逃がしさえしなけりゃいいんですから。

 とはいえ、相手はずる賢い悪党どもです。ひょっとしたら尾行されてるかもしれないと警戒したんでしょう、単独では絶対に行動しないし、夜の帳とばりがおりてからは決して出歩こうとしません。二週間、一日も欠かさずつけまわしましたが、二人が別々に行動することはとうとう一度もありませんでしたよ。ドレッバーはたいがい酔っぱらってましたが、スタンガスンのほうはいっときも油断しません。朝から晩まで追いかけても、つけいる隙がまったくないんです。それでも落胆はしませんでした。機は熟したという予感めいたものがありましたんでね。ただひとつ気がかりだったのは、胸のなかで暴れてるこいつが、本懐を遂げる前に破裂するんじゃないかということでした。

 そんなある日の晩、二人が下宿してるトーキー・テラスの通りで馬車を行ったり来たりさせてたら、一台の辻つじ馬車がその下宿の前に乗りつけたんです。まもなく家から荷物が運びだされ、すぐあとにドレッバーとスタンガスンも乗りこんで、馬車は走り去りました。おれも馬に鞭をくれて、見失わないよう追跡しましたが、もしや宿を変えるつもりだろうかと心配で、気もそぞろでしたよ。ユーストン駅でやつらが馬車を降りたんで、おれもそばにいた小僧に馬車を預けると、プラットホームまで追いかけました。二人がリヴァプール行きの汽車について尋ねる声が聞こえ、車掌はたったいま出たばかりだから当分ないと答えてました。スタンガスンはがっかりした様子でしたが、ドレッバーのほうはむしろ嬉うれしそうでしたね。おれは人込みにまぎれて、二人のやりとりが耳に入る距離まで近寄りました。ドレッバーが、個人的な用事でちょっとそこまで行ってくる、すぐに戻るからここで待っていてくれと言うと、スタンガスンは反対して、つねに行動をともにすると決めたはずだろうと諭しました。しかしドレッバーは、これは扱いの難しい微妙な問題だから、どうしても一人で行くと言って譲りません。スタンガスンがどう答えたかは聞き取れませんでしたが、ドレッバーは相手にいきなり罵ば声せいを浴びせ、おまえは使用人の分際で主人に指図するつもりかと激しい口調でまくしたてました。秘書はこれでは手に負えんとあきらめたのか、じゃあもし終列車に間に合わなかったら、〈ハリデイ・プライベート・ホテル〉で落ち合おうと言って折れました。ドレッバーは、いや、十一時までには必ずプラットホームに戻ると言い残し、駅を出ていきました。

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