8.成功を測る物差し
成功とは何だろう。
巨万の富を獲得すること。高い地位を得ること。普通は考えられている。
しかし、広辞苑を引いてみると、成功とはまず第一に「目的を達成すること。事業などを成し遂げること」とあり、次に、それが転じて、「地位や富を得ること」とある。
つまり、「地位や富を得ること」は「目的を達成したり」、「事業を成し遂げたり」した結果、もたらされる二次的な報酬なのである。
にもかかわらず、現在では、「地位や富を得ること」自体が目的化され、成功を測る物差しになってしまっている。
近年、成功者の代表と見なされてきた政治家や官僚、企業のトッポなどが不正な金銭の授受を行ったと言う廉で次々に逮捕され、犯罪者のリストに目を列ねている。
もう政治家を成功者とみなすものは殆どいない。かつてあこがれの職業とみなされていた医師や弁護士も、今では、尊敬の対象ではなくなってしまった。
成功することが、多くの人にとって、生きていく上での大切な価値であると言うことは今でも変わりがない。しかし、「地位や富を得ること」を成功を測る唯一の物差しにする時代は終わってしまったと言ったよいだろう。
成功にしろ、幸せにしろ、それらに実質的な内容を与えるのは、一人一人の人間の心に他ならない。
これからは、つつましい成功者と言うものも、いていいではないか。