11.孤独が開く愛の扉
人が一番わからないこと、それは自分の心だと、とこがの賢者がいっている。まさしくそうだ。
ちょっと自分の心の中を覗いてみてぼしい。
自分の素直な気持ちの周囲に何重ものバリアを張ってはいないだろうか。中には、自分の気持ちすら見えなくなっている者もいる。
人は自分から好き好んで心にバリアを張るわけではない。世の中に順応しようと一生懸命生きているうちに、知らず知らず農地にバリアを張ってしまうのだ。そして、気が付くと、厚いバリアに囲まれて孤独に喘いでいる自分がいる。
「いや、人間は孤独ではない。すべての命は一つなのだ」と言う甘い言葉が行きかっている。しかし、そのような言葉に飛びついても、孤独は決して癒されない。
「昔、人間真ん丸い形をし、手足が四本ずつあった。ところ、あまりにも人間が強すぎたため、神様が嫉妬し、人間を二つに分けてしまった。それ以来、人間は自分の半身を求め、焦がれるようになった。」
男女の恋愛の始まりをほのめかすプラトンの逸話だ。この逸話にしたがえば、人間は自分の一部を失った故に、愛に目覚めたことになる。
孤独な人間は大切な何かが自分に欠けていると感じている。だからこそ、愛を渇望するのだ。愛の渇望の強さは孤独の深さに比例する。
甚だ矛盾しているようだが、愛に囲まれて生きている人間は満たされている故に、本当の愛のありがたさにきずけないと言うことがよくある。
逆に、孤独の辛酸をなめた人は、それだけ愛や思いやりの大切さに敏感である。
だから、この世には、出会いだけではなく、分れが用意されているのかもしれない。
愛の達人になりたければ、分れの巧者になる必要がありそうだ。