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ラヴレター 06

时间: 2025-05-08    进入日语论坛
核心提示:6 ふたりは大友にお礼を言って別れた。それからタクシーを拾った。目指すはあの手紙の家である。「銭函二丁目二四番地っちゅう
(单词翻译:双击或拖选)
 ふたりは大友にお礼を言って別れた。それからタクシーを拾った。目指すはあの手紙の家である。
「銭函二丁目二四番地っちゅうとこ、お願いします」 秋葉が運転手に言った。
「お客さんたち大阪ですか?」
「いや、神戸ですわ」
「そうですか。大阪と神戸じゃ言葉は違うんですか?」「そうやねぇ」
 秋葉が運転手と世間話をしている間、博子は窓の外の景色を眺めていた。神戸に少し似ている気がするのは、坂の多いせいだろうか? そんなことを考えながら博子は内心ひどく緊張していた。あの子に会うといっても心の準備がまだ全然できていなかった。
「ねえ」
「ん?」
「会ってなんて言えばいいの?」
「そやな。なんて言えばいいかなぁ?」
 秋葉は至ってのんきである。そうこうするうち、あっという間に目的地付近に着いてしまった。
「この辺ですか?」と運転手。
「え? この辺ですか?」と秋葉が訊き返した。
 ふたりはその辺でタクシーを降りた。そのあたりは家が少なく、一番近い家から回ってみようということで訪ねた一軒目がそうだった。まぎれもなく表札に藤井と書いてある。
北海道らしい古くて可愛らしい洋館だった。
「ほんとにあったで」
「どうしよう?」
 博子はいよいよ動揺を抑え切れなくなった。
「俺たちは旅行者やで。旅の恥はかき捨ていうやんか」 そう言って秋葉はさっと家の門を潜り抜けた。
「すみませーん!」
 庭からひとりの老人が出てきた。秋葉は頭を深々と下げて老人に挨あい拶さつした。博子もとっさに小さくお辞儀をしたが、その場所から相手は見えなかった。
「あの、こちら、藤井樹さんのお宅ですか?」
「そうですが」
「あの、樹さんおられますか?」
「いませんが」
「あ、そうですか」
「お友達ですか?」
「いえ、あの……まあそんなもんですが」
「もうじき帰ってくるとは思いますが」
「どこに行かれたんですか?」
 不意に老人の表情が変わった。
「さあね。わたしには何にも言わないからね。ここの家のもんたちは」「……あ、そうですか」
「勝手に好きなとこに行けばいいんだ。俺はずっとここにいてやる」「は?」
 老人にはもう秋葉が見えていないようであった。そのまま庭に去って行こうとするのを、秋葉は引き留めた。
「あの!」
「?」
 老人がふりかえった。
「こちらはもうずっとここに住まわれてるんですか?」「そうだよ」
「何時いつ頃から……」
「もうずっと前からだよ」
「十年以上前くらいですか?」
「もっとずっと前だ。昭和のはじめ頃かな」
「そんなに前から!」
「どうして?」
「いや、立派なお家やから」
「あんた誰だい?」
「え?」
 老人は不意に警戒心をむき出しにした。
「不動産屋か?」
「いえ。そんなんじゃないんですが」
「阿部粕の仲間か?」
「アベカス? 何ですかそれは?」
「……違うのか?」
「…………」
 老人はこわい顔でしばらく秋葉をにらみつけていたが、そのうちブツブツ言いながら庭のほうに消えていった。秋葉はホッとため息をついた。
「なんや、あのジジイ」
 そう言って秋葉は博子の許に引き返してきた。
「藤井樹いう女の子やっぱりホンマにおるみたいやな」「聞いてた」
「そうか。本人じき帰ってくる言うとったけど、どうする? その辺で待とうか?」 しかし博子はまだ会う勇気を固めていなかった。しかしここまで来といて引き返す理由もなかった。
 ふたりはしばらく門のそばで本人の帰りを待った。博子はその間に手紙を書いた。自分の気持ちを整理するためもあった。そしてもしその手紙を書き終えてまだ本人が帰って来なかったら、それを郵便受けに入れて帰ろうと思っていた。
 拝啓、藤井樹様。
 あなたに会うために、そしてお詫わびを言うために小樽に来ました。
 今この手紙をあなたの家の前で書いてます。
 私の知っている藤井樹はどうやらあなたではなかったようです。
 今日ここに来てようやくすべてがはっきりしました。
 私の藤井樹は男性です。そして昔私の恋人だった人です。
 最近、偶然彼の古い住所を見つけて、
 届かないのを承知で書いた手紙があの最初の手紙でした。
 彼は二年前……
 博子は一度ペンを止めると今書いた「彼は二年前」という部分に線を何度も引いて消してしまった。消した文の後から博子は手紙を続けた。
 彼は今はもうどこで何をやっているのか私は知りません。
 ただ今でも時々思い出すことがあるんです。
 どこかで元気にやってるかなって思うんです。
 そんなつもりで書いた手紙でした。
 本当はどこにも届かなくてよかったんです。
 それがまさか同姓同名のあなたのもとに届くとは思ってもみませんでした。
 ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。
 決して悪気はなかったのです。
 あなたにお会いしたかったけど、あなたに会うまでの勇気がでませんでした。
 手紙だけの間柄でした。
 手紙だけで失礼させていただきます。
渡辺博子 
 顔を上げると秋葉がのぞきこんでいた。
 博子は照れ臭そうに隠しながら便箋を折り畳み、封筒に入れた。
 あたりを見回したが、本人が帰ってくる気配はなかった。
「行こうか」
 博子が言った。
「待たへんの?」
「うん」
 そう言って博子は手紙を郵便受けに落とした。その時遠くからバイクの音が聞こえた。
ふりかえると郵便屋だった。郵便屋はニコニコ笑いながら近づいてきた。
 博子はわけもなく会釈した。
「はい、郵便!」
「あ……」
 郵便屋は博子に郵便物を直接手渡した。そしてふりかえると秋葉のことを訝いぶかしげににらんだ。
 そしてバイクにまたがると何か思い出したように、あっと叫んでふりかえった。
「あのさ!」
 郵便屋は博子に向かって呼びかけた。
「はい?」
「……いや、また今度でいいや」
 そう言って郵便屋は走り去った。
「誰かと間違えたのかな?」
 秋葉が言った。
「さあ……」
「なんか妙やな。小樽人ちゅうのは」
 帰り道、タクシーが一台上って来るのが見えた。しかし誰か客を乗せていた。
「ま、ちっさい街や。すぐに繁華街に出るて」
 しかたなくふたりは歩き出した。
「なあ」
 秋葉が言った。
「さっき書いてた手紙……」
「え?」
「……なんで噓うそ書いたん?」
「え?」
「あいつが死んだこと」
「…………」
「書かなかったやろ」
「…………」
「なんで?」
「どうしてかな。……物騒な話だし」
「物騒な話か。……そうかもな」
 後ろからクラクションを鳴らされてふたりはドキリとした。ふりかえるとタクシーが停まっていた。見た顔の運転手が顔をのぞかせていた。行きに乗せてもらったタクシーだった。
「おっ、こりゃラッキーやで」
 ふたりはタクシーに乗った。運転手もその偶然が嬉うれしい様子で、「そこの上り坂でお客さんたちが手ェあげてたでしょ? 今客降ろしてあわててUターンして来たのよ」
「そうですか。そりゃ嬉しいわ」
「どちらまで」
「え? あ、どうしようかな」
 博子はふとミラーごしの運転手の視線に気づいた。
「?」
 博子が見返してるのに気づいた運転手は照れながら言った。
「あ、なんかお客さん今さっき乗っけてた子によく似てるなぁ」「え? 俺?」
 秋葉がとぼけて言った。
「違いますよ。隣のお嬢さん」
「彼女?」
「いや、よく似てるわ。ご姉きよう妹だいなんかじゃないですか?」 博子は手を横に振った。
「いえまさか。小樽初めてですから」
「あ、そうっスか。じゃあ他人の空似か」
 そう言いながら運転手はミラーごしに博子を何度も見返した。博子は窮して苦笑した。
そして窓の外に視線を移した博子は、不意に高い声をあげた。
「あ、ちょっと停めてください!」
 タクシーはある学校の前で停まった。
「どうしたの?」
「この中学校……」
 ふたりはそこでタクシーを降りた。
 校門には小樽市立色内中学校と書かれていた。彼のアルバムで見た中学校がそこにあった。
 グラウンドには誰もいなかった。
「今頃は春休みかな?」
「そうね」
 ふたりはそれから学校の中を探検した。はじめての中学校だったが、校舎の造りというのはどこでもそんなに変わるものではない。ふたりはそれぞれの記憶の地図を頼りに学校の中を歩き回った。
「見つかったら叱しかられるで」
 そういいながら二人は校舎の中に潜入した。職員室に誰かいる気配があった。ふたりはその横を忍び足で通り過ぎた。博子は彼の教室を目指していた。アルバムにあったのは確か三年二組だった。
 三階の奥から二番目にその教室はあった。
 ふたりは教室に入ってみた。
「ここで勉強してたのね」
「勉強? どうせ教科書に落書きでもしとったんやないの?」「そうかもね」
 そう返事をしながら博子はどこか上の空だった。なにか不思議な気分が博子を包んでいた。
「彼の席って何処どこだったのかな?」
 そう言いながら博子が座ったのは教室の窓際の席だった。
「この辺かな?」
 博子は教室をぐるりと見回し、窓の外を眺めた。
「ここはあたしの知らない場所だわ」
 博子は言った。
「こういう場所がきっとたくさんあるのよね」
「そやな」
 秋葉は真ん中の席に座った。
「あのおんなじ名前の子、あいつの同級生やったりしてな」「え?」
「せまい街や。そんな偶然もないとも限らんやろ」「……そうね」
「!」
 秋葉が突然手をたたいた。
「そうやで! あ、きっとそうなんや」
「なに?」
「あー。これで全ての謎は解決や」
「なによ」
「え? わからへんか?」
「……また謎解きゲーム?」
「なに言うとんのや、博子ちゃんがトロいさかい、俺が考えてやっとるんやないの」「あら。あたしがトロいの?」
「トロいやん。そのトロさがこの事件の鍵かぎやったんやな」「どういうこと?」
「アルバムや」
「アルバム?」
「アルバムん中から見つけたんやろ? あの住所」「うん」
「あの子の住所がそこに書いてあったわけやろ?」「…………」
「ということはあの子、あいつとおんなじここの卒業生いうことにならへんか?」「…………」
「きっと同じ名前やったから、博子ちゃんうっかり書き間違えたんやないの?」 もしふたりが同じ卒業生だとしたら、あのアルバムに彼女の住所も載っていることになる。だとすれば、それを彼の住所だと勘違いした可能性は確かにあった。
「そうなの?」
「間違いないて」
「じゃあ、みんなあたしの勘違いってこと?」
 博子はちょっと気まずかった。
「そういうことになってしまうな」
 秋葉はニヤニヤ笑いながら黒板の前に行き、そしてちいさな落書きをした。相あい合あい傘がさの落書きだった。傘の下にはふたつの藤井樹の名前を書いた。
「でもおんなじ学校におんなじ名前のやつがおったわけかいな」「それも男と女で」
「珍しい話やけど、ありえんことやないよな」
「そうねぇ」
「ひょっとしてその子、藤井の初恋の子やったりしてな」「え?」
 一瞬博子は何かを思い出しかけた。博子は記憶をたどろうとしたが、邪魔者の登場でそれどころではなくなった。
「なんだい? 君たち」
 入り口に宿直の教師が立っていた。ふたりはあわてて反対の扉から逃げ出した。そして廊下を走り、階段を駆け降り、校舎を飛び出した。
 グラウンドを走りながら秋葉が言った。
「小樽くんだりで何やっとんのやろ、俺たち?」
 校門を出るとさっきのタクシーのおじさんがニコニコしながら待っていた。
    *
 病院から帰ってきたあたしは郵便受けの中から自分宛あての手紙を発見した。その手紙には消印も切手もなく、封には糊付けもされていなかった。それなのに裏にはちゃんと渡辺博子の署名があった。あたしはその場で中を開けた。
 拝啓、藤井樹様。
 あなたに会うために、そしてお詫びを言うために小樽に来ました。
 今この手紙をあなたの家の前で書いてます。
 あたしはギョッとした。心臓がショックのあまり潰つぶれてしまったかとさえ思った。
そして思わずあたりを見回した。怪しい人影はどこにもなかった。
「樹」
 祖父が庭から声をかけてきた。
「友達が来たゾ」
「どんなやつ?」
「男と……」
「男?」
「いや、あと女の人も一緒にいたようだが」
「どんな女?」
「よく見なかったな」
「…………」
 その女が渡辺博子なのだろうか? 男は共犯者か? やはり複数犯説が正しかったのだろうか?
「さっきまで表で待ってたんだけどな。しびれ切らせて帰ったのかな?」 あたしは二階の部屋に上がって手紙の残りを読んだ。
 私の知っている藤井樹はどうやらあなたではなかったようです。
 今日ここに来てようやくすべてがはっきりしました。
 私の藤井樹は男性です。そして昔私の恋人だった人です。
 最近、偶然彼の古い住所を見つけて、
 届かないのを承知で書いた手紙があの最初の手紙でした。
 読みすすむうちにあたしはこの数週間、つまり最初の手紙が届いてから今までの間の思いッきり突っ張っていた緊張感が見る見る緩んでいくのを感じた。
 ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。
 決して悪気はなかったのです。
 あなたにお会いしたかったけど、あなたに会うまでの勇気がでませんでした。
 手紙だけの間柄でした。
 手紙だけで失礼させていただきます。
(なんだ。そういうことか)
 結局あたしの病人説も〝主?の多重人格説も余計な誇大妄想に終わってしまったようである。
 それにしても彼女があたしと間違えた同姓同名の藤井樹というのは何者なんだろう。
 そんな疑問が頭をもたげた瞬間、ある少年の顔が浮かんでいた。さっき病院の待合室で不意に思い出したあの少年の顔だった。彼はあたしの中学時代の同級生で、あたしの知る唯ただひとりの同姓同名の人物だった。同姓同名のしかも男子。博子の手紙にはこう書いてある。
 最近、偶然彼の古い住所を見つけて、
 届かないのを承知で書いた手紙があの最初の手紙でした。
 あたしはこの一文に注目した。あたしの記憶によれば彼は確か中三の時にどこかに転校して行ったはずだった。
「あいつのことかな?」
 しかし確証はどこにもなかった。あたしは手紙を状差しにさした。この短期間に来た彼女の手紙は全部で六通。そこにはもうひとりの藤井樹という人物に対する渡辺博子の想いの深さがあった。
 もちろん筆跡の違う二通の手紙が秋葉という人物によるものであることはあたしには知る由もなかったが、たとえ知ったとしてもそれはどうでもいいことであった。
 考えてみれば渡辺博子のことも、もうひとりの同姓同名の彼のことも、あたしには関係のないことであった。こんな関係もないことにつきあわされて、おかげで風邪までこじらせたのか。そう思うとなんかバカバカしくもあったが不思議と悪い気分ではなかった。
 三年二組に残された相合傘の落書きは春休みが終わるまで黒板に残っていた。
 
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